5 / 44
必要or不要
「クビですか?待ってください。そんな、たった一度で。」
「まあ、試用期間だったわけだから。騎士としての適性がなかったということで。書類仕事も、やる気はなくて、責任感はない。誰かに仕事を押し付けて、ズル休みばかりしていただろう。わかっているんだよ。大体、忌引がそんな頻繁にある訳ないだろう。」
その時は何も言わなかったくせに、今になって蒸し返してくる男達に、エミリアは腹が立った。
「君はまだ若い。騎士など危険な職業でなくとも、やり直せるよ。」
「私は騎士になります。」
「そうか。なら、頑張って。私達からいえることは以上だ。」
二人の目からは、全く本気にしていないことがありありとわかった。やる気があるなら、ちゃんとやれば良かった。足を引っ張ることばかり考えずに、自ら取り組めば良かった。
「何よ。可愛いから大丈夫だって、言ったじゃない。」
「失敗などを恐れるより飛び込んで騎士に必要な物を少しずつ身につけていけば良い。女騎士なら頼もしい先輩方がいるからな。まあ、君は可愛いから大丈夫だろう。」
初めて挨拶したときのスエード卿の言葉を鵜呑みにしただけ。それなのに。
エミリアは、実家に帰ると、騎士団で虐められたと吹聴した。エミリアの両親は、娘が周りに馴染めなかったのだと理解しており、虐めのことはあってもなくてもどちらにしても良かった。元々、娘が騎士になりたいと言っても反対していたのだから、令嬢に戻ってくれて有り難かった。
エミリアが騎士団を辞めたことは、早くに知れ渡った。同じ騎士科を卒業した令息、令嬢は勿論、騎士科に恋人や婚約者がいた令嬢達もその噂を面白おかしい脚色込みで広めていった。
エミリアは地方の男爵家。王都には別邸を持たない。それに女性には随分と嫌われていたからたまに茶会などがあっても、誰からも誘われることはなかった。
前騎士団副団長の叔父も、折角紹介した面目を潰されて、ノコノコと頼れない。自分で稼いだお金で散財する楽しさを知った後では、貯金もない、職もない身で外出することも出来ずにいた。
エミリアの母は、茶会で、娘が起こした騒ぎを聞いて顔色を無くしていた。試用期間とはいえ、解雇された後、辞めてそれで終わりではなく、ちょっとした手続きがあったのだが、それも娘は碌にしていないことが判明したのだ。
茶会であったブラウザー伯爵令嬢は、娘が言うような嫌味な女性ではなく、とても優しくしっかりとした淑女だった。
「騎士として身を立てるのは女性では中々難しいですが、ご本人のやる気さえあれば、このような就職先もあります。上司が、騎士には向かないから別の職を薦めたのですが、ご本人は騎士になりたい、ということでしたので、念のためお渡ししておきますね。」
女騎士の目線でよく調べられている資料を受け取って、男爵夫人は茶会を後にした。
とはいえ、夫人はこの資料を娘に渡すかは迷っていた。騎士になりたい、と娘が願ったのは、騎士に憧れを抱いたからだが、それは自分がそうなりたい、ではなく、騎士のような男性と恋をしたい、という邪な感情が原因だと思うのだ。
女騎士の使命など何もわからない娘が、耐えられる職場がある訳がない。折角よくできた資料ではあるが、読まれない可能性も考慮して、申し訳なく思った。
「まあ、試用期間だったわけだから。騎士としての適性がなかったということで。書類仕事も、やる気はなくて、責任感はない。誰かに仕事を押し付けて、ズル休みばかりしていただろう。わかっているんだよ。大体、忌引がそんな頻繁にある訳ないだろう。」
その時は何も言わなかったくせに、今になって蒸し返してくる男達に、エミリアは腹が立った。
「君はまだ若い。騎士など危険な職業でなくとも、やり直せるよ。」
「私は騎士になります。」
「そうか。なら、頑張って。私達からいえることは以上だ。」
二人の目からは、全く本気にしていないことがありありとわかった。やる気があるなら、ちゃんとやれば良かった。足を引っ張ることばかり考えずに、自ら取り組めば良かった。
「何よ。可愛いから大丈夫だって、言ったじゃない。」
「失敗などを恐れるより飛び込んで騎士に必要な物を少しずつ身につけていけば良い。女騎士なら頼もしい先輩方がいるからな。まあ、君は可愛いから大丈夫だろう。」
初めて挨拶したときのスエード卿の言葉を鵜呑みにしただけ。それなのに。
エミリアは、実家に帰ると、騎士団で虐められたと吹聴した。エミリアの両親は、娘が周りに馴染めなかったのだと理解しており、虐めのことはあってもなくてもどちらにしても良かった。元々、娘が騎士になりたいと言っても反対していたのだから、令嬢に戻ってくれて有り難かった。
エミリアが騎士団を辞めたことは、早くに知れ渡った。同じ騎士科を卒業した令息、令嬢は勿論、騎士科に恋人や婚約者がいた令嬢達もその噂を面白おかしい脚色込みで広めていった。
エミリアは地方の男爵家。王都には別邸を持たない。それに女性には随分と嫌われていたからたまに茶会などがあっても、誰からも誘われることはなかった。
前騎士団副団長の叔父も、折角紹介した面目を潰されて、ノコノコと頼れない。自分で稼いだお金で散財する楽しさを知った後では、貯金もない、職もない身で外出することも出来ずにいた。
エミリアの母は、茶会で、娘が起こした騒ぎを聞いて顔色を無くしていた。試用期間とはいえ、解雇された後、辞めてそれで終わりではなく、ちょっとした手続きがあったのだが、それも娘は碌にしていないことが判明したのだ。
茶会であったブラウザー伯爵令嬢は、娘が言うような嫌味な女性ではなく、とても優しくしっかりとした淑女だった。
「騎士として身を立てるのは女性では中々難しいですが、ご本人のやる気さえあれば、このような就職先もあります。上司が、騎士には向かないから別の職を薦めたのですが、ご本人は騎士になりたい、ということでしたので、念のためお渡ししておきますね。」
女騎士の目線でよく調べられている資料を受け取って、男爵夫人は茶会を後にした。
とはいえ、夫人はこの資料を娘に渡すかは迷っていた。騎士になりたい、と娘が願ったのは、騎士に憧れを抱いたからだが、それは自分がそうなりたい、ではなく、騎士のような男性と恋をしたい、という邪な感情が原因だと思うのだ。
女騎士の使命など何もわからない娘が、耐えられる職場がある訳がない。折角よくできた資料ではあるが、読まれない可能性も考慮して、申し訳なく思った。
あなたにおすすめの小説
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら
赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。
問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。
もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。
待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。
そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。