それは私の仕事ではありません

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必要or不要

「クビですか?待ってください。そんな、たった一度で。」

「まあ、試用期間だったわけだから。騎士としての適性がなかったということで。書類仕事も、やる気はなくて、責任感はない。誰かに仕事を押し付けて、ズル休みばかりしていただろう。わかっているんだよ。大体、忌引がそんな頻繁にある訳ないだろう。」

その時は何も言わなかったくせに、今になって蒸し返してくる男達に、エミリアは腹が立った。

「君はまだ若い。騎士など危険な職業でなくとも、やり直せるよ。」

「私は騎士になります。」

「そうか。なら、頑張って。私達からいえることは以上だ。」

二人の目からは、全く本気にしていないことがありありとわかった。やる気があるなら、ちゃんとやれば良かった。足を引っ張ることばかり考えずに、自ら取り組めば良かった。

「何よ。可愛いから大丈夫だって、言ったじゃない。」

「失敗などを恐れるより飛び込んで騎士に必要な物を少しずつ身につけていけば良い。女騎士なら頼もしい先輩方がいるからな。まあ、君は可愛いから大丈夫だろう。」

初めて挨拶したときのスエード卿の言葉を鵜呑みにしただけ。それなのに。


エミリアは、実家に帰ると、騎士団で虐められたと吹聴した。エミリアの両親は、娘が周りに馴染めなかったのだと理解しており、虐めのことはあってもなくてもどちらにしても良かった。元々、娘が騎士になりたいと言っても反対していたのだから、令嬢に戻ってくれて有り難かった。




エミリアが騎士団を辞めたことは、早くに知れ渡った。同じ騎士科を卒業した令息、令嬢は勿論、騎士科に恋人や婚約者がいた令嬢達もその噂を面白おかしい脚色込みで広めていった。

エミリアは地方の男爵家。王都には別邸を持たない。それに女性には随分と嫌われていたからたまに茶会などがあっても、誰からも誘われることはなかった。

前騎士団副団長の叔父も、折角紹介した面目を潰されて、ノコノコと頼れない。自分で稼いだお金で散財する楽しさを知った後では、貯金もない、職もない身で外出することも出来ずにいた。

エミリアの母は、茶会で、娘が起こした騒ぎを聞いて顔色を無くしていた。試用期間とはいえ、解雇された後、辞めてそれで終わりではなく、ちょっとした手続きがあったのだが、それも娘は碌にしていないことが判明したのだ。

茶会であったブラウザー伯爵令嬢は、娘が言うような嫌味な女性ではなく、とても優しくしっかりとした淑女だった。



「騎士として身を立てるのは女性では中々難しいですが、ご本人のやる気さえあれば、このような就職先もあります。上司が、騎士には向かないから別の職を薦めたのですが、ご本人は騎士になりたい、ということでしたので、念のためお渡ししておきますね。」

女騎士の目線でよく調べられている資料を受け取って、男爵夫人は茶会を後にした。

とはいえ、夫人はこの資料を娘に渡すかは迷っていた。騎士になりたい、と娘が願ったのは、騎士に憧れを抱いたからだが、それは自分がそうなりたい、ではなく、騎士のような男性と恋をしたい、という邪な感情が原因だと思うのだ。

女騎士の使命など何もわからない娘が、耐えられる職場がある訳がない。折角よくできた資料ではあるが、読まれない可能性も考慮して、申し訳なく思った。

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