それは私の仕事ではありません

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余計なこと

新人騎士の鍛錬は、早く終わる。アネットが指導するより、自分達で考えて動くことの方が重要だったりするからだ。基礎的なものは学園で身につけているし、どれだけ自分を追い込めるかは人による。

グリド・ビースは、生意気で目上の者に、敬語すら使えない問題児ではあるが、鍛錬だけは毎日欠かしたことは無かったし、アネットの目から見ても、新人にしてはそこそこ戦えそうだった。とはいえ、それはあくまで王都限定の話。

今度行く北の辺境地に行けば、アネットですら役立たずになるのだ。エミリアの遠い親戚であることが判明した真面目枠のリオン・フルーゲは、真面目すぎて型にハマった剣術をしがちだ。だから、一通り習ったことのある人間からすれば、次の手がわかりやすい。

破落戸の中には、騎士崩れのような者もいる。そういう者に負けるのはリオンみたいな真面目な騎士だ。

「集団の中では真面目な人が重宝されるんだけど、生き残るのは大概我儘だったり反抗したりするような奴なんだよね。」

「あいつは真面目というよりは融通が効かないタイプかもな。あまり自分を主張しないし。だからといって、自分に足りないものを補う気もないらしい。あのままだと、騎士として大成する前に死ぬぞ。」

男性騎士達の中には、男性の力の強さだけを全面に押し出して、無茶をする者が毎年いる。女騎士に負けたくないという気持ちはわかるが、それは自分の命も周りの命も危なくするということをわかっていない。


剣術に関して言えば、グリドの方がよっぽど周りをよく見て動けている。褒めたくない、という葛藤と戦いながら、アネットはグリドの戦い方に魅入っていた。

彼は確かに失格が多い問題児だが、それで騎士を辞めさせるには勿体無い才能がある。それは団長も思うところがあるのか、彼が騎士らしくない態度を取る度に、葛藤している場面をよく見ている。


騎士団に属している者は皆似たり寄ったりの性質をしている。脳筋に偏ることはないが、強い奴を見ると血が騒いだりするようで、新人騎士の鍛錬を見ている騎士は増えていく。

新人騎士の配属は、早い者勝ちだ。北の辺境伯領での研修を終えたら、いよいよ正規の職場に配置される。

最初の頃は、リオンや女の子達が人気かと思われていたが、ここに来て生意気だが鍛えがいがあるとグリドの人気が鰻登りだ。

アネットの懸念など些細なこと。彼らは拳でわかり合おうとする筋肉の塊なのだから。

「ところで、トーナメントで優勝したら、何が貰えるの?」
ニコルは余計なところに気がつくタイプ。
「アネットからのほっぺにチューでいいけどな。」
シノーも悪ふざけで乗っかる。
「私がそれをやったら、セクハラで捕まりませんか?」

「……じゃあ、団長からほっぺにチューにしましょう。」

この場にいない団長が悪いのだ。どちらかというと罰ゲームのような副賞を用意した。

「女性が勝ったらマリアからのハグにしましょう。」

ニコルは下心満載の副賞を考える天才だ。

それ、マリアが勝った場合、やり返されると思うんだけど。

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