それは私の仕事ではありません

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ニコルの楽しみ

ご令嬢に扮した騎士二人は、マリアとニコルによって綺麗に飾られ、何処からどう見ても立派な貴族令嬢にしか見られないほどに美しくなった。特にリオン・フルーゲに至っては、今後の人生が心配になるほどに美しくなり、男性であることがうっかり忘れそうになるぐらい、可愛くなった。グリドも、筋肉は全て隠してカツラを被せると、元が良いのか女騎士が自信を失う程の美少女に生まれ変わった。

彼らの護衛騎士に扮したのは女騎士の二人。ご令嬢に護衛がつかないのは、貧しい下位貴族ではよくあることだが、状況によってはエミリアを連れて出ることも考えて潜入する人数を増やした。

「新人の良い練習になるんじゃない?被害者がいる以上、練習というのもおかしな話だけど。実践が一番、騎士として成長できるからね。私達は様子を見てサポートして行きましょう。」

新人に委ねたことで、気合いの入り過ぎていたアネットを気遣うニコルに感謝する。ふう、と息を吐くと、北の辺境伯領からの手紙が届いた。

「え?ニコル、グレイと先生が来てくれるって。さっき少し遅れますって短い手紙を送ったの。そうしたら迎えに来るって来たわ。」


「グレイはともかく、先生まで来てくれるなんて、アネットは愛されているわね。って、未だに先生って呼んでるの?もう生徒じゃないんだから、名前で呼んだら良いのに。ご本人からもそう言われたんでしょう?」

「まあ、それはそうだけど……先生はいつまで経っても先生、というか。リスキー卿ならまだしも、フ、フ、フランクなんて呼べないわ。」

アネットの同期のグレイ・ハルトの気持ちを知っているニコルとしては、全く脈のないアネットの態度に、あまりに気の毒でため息が出てしまう。アネットに限らず、好きな人がいるとどうしてもその人以外の好意には鈍感になるのは仕方ないことである。

アネットは恋愛方面においては鈍い方だとは思っていたが、相手によるのだ。彼女の関心は昔から変わらない。初恋から失恋を経て、憧れの騎士になってからの再会からずっと、アネットの気持ちは再燃し続けている。十歳程の歳の差は貴族の婚姻だと珍しくはない。

なのに、良い歳をしてどちらも遠慮して中々本音を言えないでいる。アネットと同じく臆病なフランク・リスキー侯爵は、見ていて「早く押し倒せば良いのに。」とヤキモキする存在で、親友であるニコルは密かに二人の恋を応援していた。

本人達がのんびりしている分、アネットを巡る諦めの悪い男達が振り回されているのも、気の毒でならない。とは言いつつも、いつ彼らが我慢なくなるのか、それが楽しみでニコルは自分の悪い癖を抑えきれていない。

アネットはニコルの親友で、だからこそ一番幸せになってほしい。今のところ、彼女が幸せになれる相手は一人だけなのだから。

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