それは私の仕事ではありません

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フラグは折れるだけ

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北の辺境伯領では、一行を待ち望んでいる者がいた。騎士団長マイク・ロクセルの婚約者であるジェシカ・フーバードと、迎えに行くと言って出て行ったきり、帰ってこないグレイらを心配する者達。グレイを心配する中には、彼がアネットと仲良くなってしまったのではないかと心配している何人かがいた。

グレイは若手の女騎士の中で密かに人気だった。本人に好きな女性が既にいた為に他の騎士に対して真摯だっただけだが、中には本気でグレイを好む女性もいたのである。

アネット以外に好意を寄せられたところで気づかない辺り、グレイもアネットのことを鈍感とは言えない。

「もうかたはついたのに、まだ来ないのか。」

ジェシカの困惑した視線の中、ルーナ・カリスタは、機嫌の悪い上司をいつもなら真っ先に宥めるグレイの不在を嘆いていた。

「もうすぐ着くと、先触れがあったのでしょう?もうすぐ着きますよ。」

愛しの婚約者が、手紙をくれるだけマシじゃないか。単に早く会いたくてしょうがない、ずっとお利口に我慢していただけに歯止めがきかなくなっている可愛い上司に少しイラつくのは、多分ルーナのせいではない。

着いた早々、盛大な惚気を見せつけられるのがわかっている。今回、アネット率いる新人の世話にルーナは駆り出されている。ルーナとて、新人を任されるのは初めてのことだが、敬愛するグレイの愛する人をこの目に焼き付けたく、立候補したのだった。

ルーナは自身の、グレイに対する恋慕をうまく隠しているつもりだが、そのあからさまな態度によって周りにはバレていた。自分以外に興味のない女上司にもバレているから相当あからさまなのだが、グレイに伝わっていないことから、ルーナもバレていることに気が付いていなかった。

ルーナはアネットと会うのは二回目だ。一回目は合同演習の時に会った。その時は、まだグレイの魅力に気づいておらず、アネットを純粋に、女騎士として格好の良い人だと思ったぐらいだ。

でもその時の印象がもの凄く良かったせいで、グレイが彼女を思う気持ちがよくわかり、わかりすぎてしまった。

ルーナはだからこそグレイの帰りを待つと共にアネットと再会出来ることを喜んでいた。共に剣を交えることも考えて、試合を申し込みたい気持ちでいっぱいだった。

「疲れてるでしょうから先ずは温泉とかに誘導すれば宜しいのでは?」

ルーナが黙り込んでしまったから助け船を出すのはこちらも、グレイとフランクを待ち侘びる騎士の一人、クレスト。彼は迎えに行くと言って放置された彼らの書類を一手に任されていた。彼らが帰って来たら先ずはこれらを返して、大好きなアネットとやらの時間を奪ってやろうと思っていた。

クレストは困った上司を逆に困らせてやろうと言う恨みつらみしかない。新婚なのに、ずっと帰れなくて辛かったのは、ポンコツなグレイとフランク達上司のせいだったからだ。
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