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不憫な男
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アネットの危機だと聞いて、駆け込んだグレイ・ハルトは、ああまたこの役回りかとため息をついた。倒れ込んだアネットをうまく抱きしめて衝撃から救ったのは別の男だったからだ。
アネットは恥ずかしそうにごめん、と笑っているけれど、若い騎士はちょっと焦っているように見えた。アネットは脳筋でガサツな筋肉女であるが、伯爵令嬢の身分の通り、令嬢の仮面も持っている。ニコルも公爵令嬢ではあるが、あれは嫌味の応酬とか普段の彼女に変わりなく、意外性などはない。
それがアネットの場合、所謂ギャップ萌えというのか、彼女の魅力の一つとして機能している。
か弱いアピールではなく、ちゃんと可愛いので、普段の彼女を知っている者であればあるほど脳への衝撃は大きくなる。
自分達が新人だった時の教育係、フランク・リスキーも、アネットの可愛さに気づいている一人だ。
同年代の男には負けん気の強さを全面に出していた彼女が、歳の離れた彼には最初から素直だったことも、グレイにはハンデ見たいなものだった。
自分がフランクに勝てるものなど何もない。若いことぐらいか、とは思うけれど肝心のアネットが年齢を気にしないなら意味がない。寧ろ年上が好きだと聞いたことがあるので、若さはプラスにはならないのだと思い知る。
これ以上、アネット狙いの男を増やさないように若い芽を摘んでおこう。と、思ったら、意外や意外、変なところから横槍を入れられている?
グレイは、いつも涼しげな顔のフランクの焦るような顔を見られて、少し溜飲が下がるのと同時に、新たな敵を察知し、静かにキレていた。
リオンとサリナのチームが、連れて来た騎士の男は、自身の妹を探すつもりでこの作戦に参加していたが、アネットを見るなり、跪き、結婚を申し込んだのだった。
「美しい方、どうか私と結婚してください。」
初めてみる騎士に、アネットなら塩対応かと思いきや、真っ赤な顔で、「え?何?」と焦っている。
「これ、意外と刺さってる、感じ?」
ニコルの反応の通り、いつもの「はいはい」というあしらい感がない。
これは二番煎じでも隣に並んで相伴すべきか、グレイが考えあぐねていると、若い騎士が、「話は後にしてくれ。」と、アネットを抱き上げた。身長はアネットより低いが、アネットを軽々持ち上げる腕力は、流石騎士。
アネットに触れた時に、少し震えていたのが気になったらしい。
「それぐらいで体調が悪いなんてよく気づけたな。」
「だって、あの人、怖いもの、なさそうじゃないですか。」
グレイは自分のことばかりで彼女の体調まで頭が回らなかったが、彼は違うらしい。グレイは若手にも負けたような気になって、アネットを諦めるべきか迷っていた。
アネットの体調は一日眠れば治ったようで、元気になったアネットは、いつもと変わらない塩対応のアネットだった。
「昨日の騎士は?」
「一旦帰ったわ。どこまで本気かわからないけれど、ずっと潜入していたみたいだし、目が眩んだんでしょ。」
「その割にはドキドキしていたみたいだけど。」
「仕方ないでしょう?あまり慣れてないのよ。本当に貴方ぐらいよ。初対面で口説いてこなかったの。他は、女性を見るとすぐに口説くからね。貴方みたいな人は女騎士の希望なのよ。皆が皆口説かれたいかと思うのは大間違いなんだから。」
グレイは自分の性格を今初めて有難く思った。
「もしかして、これ諦めなくていいやつ?」
こうしてアネットは、グレイのフラグをバキバキに折りながら立てるという鬼畜技を習得していった。
アネットは恥ずかしそうにごめん、と笑っているけれど、若い騎士はちょっと焦っているように見えた。アネットは脳筋でガサツな筋肉女であるが、伯爵令嬢の身分の通り、令嬢の仮面も持っている。ニコルも公爵令嬢ではあるが、あれは嫌味の応酬とか普段の彼女に変わりなく、意外性などはない。
それがアネットの場合、所謂ギャップ萌えというのか、彼女の魅力の一つとして機能している。
か弱いアピールではなく、ちゃんと可愛いので、普段の彼女を知っている者であればあるほど脳への衝撃は大きくなる。
自分達が新人だった時の教育係、フランク・リスキーも、アネットの可愛さに気づいている一人だ。
同年代の男には負けん気の強さを全面に出していた彼女が、歳の離れた彼には最初から素直だったことも、グレイにはハンデ見たいなものだった。
自分がフランクに勝てるものなど何もない。若いことぐらいか、とは思うけれど肝心のアネットが年齢を気にしないなら意味がない。寧ろ年上が好きだと聞いたことがあるので、若さはプラスにはならないのだと思い知る。
これ以上、アネット狙いの男を増やさないように若い芽を摘んでおこう。と、思ったら、意外や意外、変なところから横槍を入れられている?
グレイは、いつも涼しげな顔のフランクの焦るような顔を見られて、少し溜飲が下がるのと同時に、新たな敵を察知し、静かにキレていた。
リオンとサリナのチームが、連れて来た騎士の男は、自身の妹を探すつもりでこの作戦に参加していたが、アネットを見るなり、跪き、結婚を申し込んだのだった。
「美しい方、どうか私と結婚してください。」
初めてみる騎士に、アネットなら塩対応かと思いきや、真っ赤な顔で、「え?何?」と焦っている。
「これ、意外と刺さってる、感じ?」
ニコルの反応の通り、いつもの「はいはい」というあしらい感がない。
これは二番煎じでも隣に並んで相伴すべきか、グレイが考えあぐねていると、若い騎士が、「話は後にしてくれ。」と、アネットを抱き上げた。身長はアネットより低いが、アネットを軽々持ち上げる腕力は、流石騎士。
アネットに触れた時に、少し震えていたのが気になったらしい。
「それぐらいで体調が悪いなんてよく気づけたな。」
「だって、あの人、怖いもの、なさそうじゃないですか。」
グレイは自分のことばかりで彼女の体調まで頭が回らなかったが、彼は違うらしい。グレイは若手にも負けたような気になって、アネットを諦めるべきか迷っていた。
アネットの体調は一日眠れば治ったようで、元気になったアネットは、いつもと変わらない塩対応のアネットだった。
「昨日の騎士は?」
「一旦帰ったわ。どこまで本気かわからないけれど、ずっと潜入していたみたいだし、目が眩んだんでしょ。」
「その割にはドキドキしていたみたいだけど。」
「仕方ないでしょう?あまり慣れてないのよ。本当に貴方ぐらいよ。初対面で口説いてこなかったの。他は、女性を見るとすぐに口説くからね。貴方みたいな人は女騎士の希望なのよ。皆が皆口説かれたいかと思うのは大間違いなんだから。」
グレイは自分の性格を今初めて有難く思った。
「もしかして、これ諦めなくていいやつ?」
こうしてアネットは、グレイのフラグをバキバキに折りながら立てるという鬼畜技を習得していった。
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