それは私の仕事ではありません

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困惑

「エミリア、良くやったわ。」
捕らえられた客の聴取や被害者の救助がまだ続いている中で、改めて声をかけられる。

「アネット先輩に初めて褒められた気がする。嬉しいです。」
「調子がいいのは相変わらずね。本当に逞しくなって。」
「元騎士ですからね。」
これは嫌味ではなく、事実だ。先輩もそれを受け止めている。

「騎士の時はか弱いアピールばかりしていたのに、やめてから、逞しいアピールってどういうつもりよ。」
言われてみれば、おかしな話。

「今ならか弱いアピールしても大丈夫ってことですね。」
可愛い子ぶって、話しかけると、呆れた顔で笑って言った。

「何でも良いわよ。ああ、今日もエミリアは元気だな、って思うだけだから。」

やめてからの方が気を抜いて話すことができている。それがエミリアには意外だった。

「お前ら、仲良いじゃん、心配して損したわ。」
グリドも生意気は変わらない。

アネットを攫おうとしていた客は、どうにかして逃げようとしていたが、それは叶わなかった。祖国でも厄介者だった彼は、国を通して此方から問い合わせがあった際に、此方で裁いてもらう、という提案を向こうからされて、観念したようだ。

労働力はありがたいが、戸籍を持たない者が増えるのは、困るということなのだろう。それに国としての力はどうやってもうちの方が上。怒らせて戦争に発展しては打撃を受けるのは彼方。

「国はまともなようで良かった。」
「……切り捨てられたんだわ。多分ね。」
「そうなんですか?」
「だって、彼が言ってたのよ。男性騎士だと国に取られてしまうって。彼のやってることを黙認して、甘い汁だけ吸って、捨てた、ってとこじゃないかしら。」

そう考えると、あの狂った客も可哀想なような……

「でも、くれるって言うなら貰うのもありよね。彼を切り捨てたのは彼方なんだから、やり返しても文句はないでしょ。」 

何だか物騒な話になっていく。戸惑って、一番まともそうな先輩を見つめると、首を竦めて、「いつものことだ。」と言っていた。

「私、もっと先輩達と話してみたかったです。そうしたら。」
「利用なんかしなかったのに?」
「ニコル、揚げ足取らないの。」

「お互いに大人になったからこうして話せるってことでいいんじゃない。」  
「そうね。あんたが今更、かわい子ぶっても、か弱いアピール乙って言えるぐらいには曝け出しているものね。」
「先輩、それ死語って奴ですよ。」

公爵令嬢であるニコル先輩は、口が悪い。マリア先輩は飄々としていて我関せず。アネット先輩はニコル先輩のツッコミ役。

一度離れてみてみると、こんなに面白い人達だったんだ。

「私、人生損してましたね。」
「急にこわいんだけど、何?」
「だって、先輩方を便利に使うだけではもったいなかったですよ。」
「便利……全く反省してねぇな。」

急に入ってきたのは、シノー先輩。騎士の頃は彼にも甘え倒して迷惑をかけていた。

「盛り上がっているところ、悪いけどお前まだ騎士団の所属になったままだから。男爵夫人には言ったけど、お前最後の手続きそのままになってるんだよな。だから、ちょうどいいから、お前はこのまま騎士団員として働いて貰うらしい。スエード卿の下で、偶には騎士として、ってことで。」

「そうよ。今度は私達があんたを便利に使う番よ。覚悟してなさい。」

「え。嫌です。」
エミリアの拒否は当然受け入れられなかった。

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