それは私の仕事ではありません

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ルーナの正体

ルーナは新しく来た女に辟易した。私は何も知りません、と言う顔でズカズカと勝手に踏み入る無神経さに。辺境伯夫人が気遣ってくれるのは、戦力にならないと判断した者だけ。彼女自身がその評価を覆せなかったことはもう理解して、諦めていたのに。彼女が来てまた自分の未熟さを思い知らされるなんて。

エミリアという彼女は少々問題のあるタイプの子で、あのアネットとかいう騎士をも怒らせたことがあるらしい。

あんなにのんびりとした穏やかそうな人を怒らせるなんて一体何をしたのだろう。

ルーナはアネットを特に嫌いではない。寧ろ羨ましいと思う。自分が決して見られなかったグレイの表情をいとも簡単に引き出せる彼女が。

そのままの自分でグレイと並ぶことができる彼女は勝ち組で、負けてばかりの自分とは正反対。

ルーナは久しぶりに自分の気持ちと向き合うことができた。グレイをいいな、と思ったのはとても単純なことだ。小柄な自分を区別することがなかったからだ。他のことが何も出来ない自分は、騎士を諦められなかった。女騎士がいるとはいえ、自分では力任せに戦うことはできなくて、狡いとされる技を磨くしかなかった。

戦い方が独特でも、騎士にはなれた。だけど、それだけだ。

エミリアのような女に嫌悪感が湧くのは、少し前の自分にとても似ているから。彼女との違いは、ルーナがあの頃に戻りたいとは思っていないことぐらい。

か弱さを武器に世渡りをしようと思うなら、この場所にはいられない。

ルーナは通常業務を開始する。明日からはトーナメント戦という名の苦行が始まるのだから、できる予防線は張り巡らせておく。自分より出来ない人はいる筈だ。王都の新人は皆どれも自分よりは弱そうだったが、念の為保険をかけておきたかった。

ニコルという公爵令嬢はルーナより小さくて、細くて可愛かった。なのに、副団長。普通なら罠とか餌とか囮だと思うのだが、この時のルーナは焦っていた。可愛いだけの女が公爵家にいるはずもないのに、下位貴族のルーナには分からなかったのである。ルーナはその時思い出すべきだった。エミリアが何の躊躇いもなく、ルーナに話しかけたことを。

「ニコル様にするのですか?」
「本当に?」
「やめといた方が良いですよ。倍返しでやり返されますよ?」
部下だと思っていた声は、別人のものだった。

そこには、アネット、グレイ、フランクの三人がいて、漸くこれは見られていたのだとわかったのだった。

ルーナの不正及び悪事を、三人は知っていた。

「いやあ、まさかルーナさんが最後の一人だとは思ってもいませんでした。助けに来るのが遅れて申し訳ありません。」

その一言は、まるでルーナが加害者ではなく、被害者であるかのように感じて全身がむず痒くなった。



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