36 / 44
ルーナの正体
ルーナは新しく来た女に辟易した。私は何も知りません、と言う顔でズカズカと勝手に踏み入る無神経さに。辺境伯夫人が気遣ってくれるのは、戦力にならないと判断した者だけ。彼女自身がその評価を覆せなかったことはもう理解して、諦めていたのに。彼女が来てまた自分の未熟さを思い知らされるなんて。
エミリアという彼女は少々問題のあるタイプの子で、あのアネットとかいう騎士をも怒らせたことがあるらしい。
あんなにのんびりとした穏やかそうな人を怒らせるなんて一体何をしたのだろう。
ルーナはアネットを特に嫌いではない。寧ろ羨ましいと思う。自分が決して見られなかったグレイの表情をいとも簡単に引き出せる彼女が。
そのままの自分でグレイと並ぶことができる彼女は勝ち組で、負けてばかりの自分とは正反対。
ルーナは久しぶりに自分の気持ちと向き合うことができた。グレイをいいな、と思ったのはとても単純なことだ。小柄な自分を区別することがなかったからだ。他のことが何も出来ない自分は、騎士を諦められなかった。女騎士がいるとはいえ、自分では力任せに戦うことはできなくて、狡いとされる技を磨くしかなかった。
戦い方が独特でも、騎士にはなれた。だけど、それだけだ。
エミリアのような女に嫌悪感が湧くのは、少し前の自分にとても似ているから。彼女との違いは、ルーナがあの頃に戻りたいとは思っていないことぐらい。
か弱さを武器に世渡りをしようと思うなら、この場所にはいられない。
ルーナは通常業務を開始する。明日からはトーナメント戦という名の苦行が始まるのだから、できる予防線は張り巡らせておく。自分より出来ない人はいる筈だ。王都の新人は皆どれも自分よりは弱そうだったが、念の為保険をかけておきたかった。
ニコルという公爵令嬢はルーナより小さくて、細くて可愛かった。なのに、副団長。普通なら罠とか餌とか囮だと思うのだが、この時のルーナは焦っていた。可愛いだけの女が公爵家にいるはずもないのに、下位貴族のルーナには分からなかったのである。ルーナはその時思い出すべきだった。エミリアが何の躊躇いもなく、ルーナに話しかけたことを。
「ニコル様にするのですか?」
「本当に?」
「やめといた方が良いですよ。倍返しでやり返されますよ?」
部下だと思っていた声は、別人のものだった。
そこには、アネット、グレイ、フランクの三人がいて、漸くこれは見られていたのだとわかったのだった。
ルーナの不正及び悪事を、三人は知っていた。
「いやあ、まさかルーナさんが最後の一人だとは思ってもいませんでした。助けに来るのが遅れて申し訳ありません。」
その一言は、まるでルーナが加害者ではなく、被害者であるかのように感じて全身がむず痒くなった。
エミリアという彼女は少々問題のあるタイプの子で、あのアネットとかいう騎士をも怒らせたことがあるらしい。
あんなにのんびりとした穏やかそうな人を怒らせるなんて一体何をしたのだろう。
ルーナはアネットを特に嫌いではない。寧ろ羨ましいと思う。自分が決して見られなかったグレイの表情をいとも簡単に引き出せる彼女が。
そのままの自分でグレイと並ぶことができる彼女は勝ち組で、負けてばかりの自分とは正反対。
ルーナは久しぶりに自分の気持ちと向き合うことができた。グレイをいいな、と思ったのはとても単純なことだ。小柄な自分を区別することがなかったからだ。他のことが何も出来ない自分は、騎士を諦められなかった。女騎士がいるとはいえ、自分では力任せに戦うことはできなくて、狡いとされる技を磨くしかなかった。
戦い方が独特でも、騎士にはなれた。だけど、それだけだ。
エミリアのような女に嫌悪感が湧くのは、少し前の自分にとても似ているから。彼女との違いは、ルーナがあの頃に戻りたいとは思っていないことぐらい。
か弱さを武器に世渡りをしようと思うなら、この場所にはいられない。
ルーナは通常業務を開始する。明日からはトーナメント戦という名の苦行が始まるのだから、できる予防線は張り巡らせておく。自分より出来ない人はいる筈だ。王都の新人は皆どれも自分よりは弱そうだったが、念の為保険をかけておきたかった。
ニコルという公爵令嬢はルーナより小さくて、細くて可愛かった。なのに、副団長。普通なら罠とか餌とか囮だと思うのだが、この時のルーナは焦っていた。可愛いだけの女が公爵家にいるはずもないのに、下位貴族のルーナには分からなかったのである。ルーナはその時思い出すべきだった。エミリアが何の躊躇いもなく、ルーナに話しかけたことを。
「ニコル様にするのですか?」
「本当に?」
「やめといた方が良いですよ。倍返しでやり返されますよ?」
部下だと思っていた声は、別人のものだった。
そこには、アネット、グレイ、フランクの三人がいて、漸くこれは見られていたのだとわかったのだった。
ルーナの不正及び悪事を、三人は知っていた。
「いやあ、まさかルーナさんが最後の一人だとは思ってもいませんでした。助けに来るのが遅れて申し訳ありません。」
その一言は、まるでルーナが加害者ではなく、被害者であるかのように感じて全身がむず痒くなった。
あなたにおすすめの小説
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら
赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。
問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。
もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。
待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。
そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。