それは私の仕事ではありません

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隠された犠牲者

お見合い斡旋を騙った人身売買の一件は王都から来た王立騎士団の面々によって摘発された。他国からのお客様、騎士を嫌っていた紹介役のご婦人、運び役の異国人、となって、最後のピースが嵌まらなかったのである。それは国内の協力者。

一見、南部の人間が単独で起こしたように見える、この事件は単独では絶対に起こし得ない規模のものだった。

ニコルが騎士団にいるのは、色々な訳があるが、副団長になったのは、貴族社会で顔が利くことが一番の理由だ。

南北の辺境伯は、その特性から比較されやすく、最近では北を持て囃し、南を冷遇する風潮にあった。

人身売買の被害者は皆、他国へ流出したのか調べていくうちに何人かは他国ではなく、国内に引き取られていることが分かった。そして、そのうちの殆どが既に亡くなっていることも。

最初は行き場のない女性を引き取り、教育を施して独り立ちさせることで罪悪感を消そうとしたのだと、そう思っていたが、ルーナを見てそれは違うとニコルは判断した。

行き場のない女性を助けた、と思わせただけのこと。彼女の行き場を無理矢理無くし、強制的に駒として働かせて、洗脳する。被害者は被害者であり続け、挙句にもしかして、自分は加害者ではないのかと罪悪感まで植え付ける。

彼女は母親がすごすぎた為に強制的に自身も騎士にならなくてはならなかった。だけど、それはそう思い込んだだけで強制ではない。

自分が過去にされたからと言って、それを言い訳にして悪事を行うのは、人のせいにしてばかりの子供と同じだ。

北の辺境伯夫人は、ルーナという生き証人と共に捕らえられた。ニコルからの問い合わせに対して「好きになさい。」スエード卿の手紙には「任せるわ。」と言った彼女。ニコルからの手紙には、南部の辺境伯領内の貴族家が主体となった人身売買の件を、相談するもの。スエード卿の手紙には、新しい人材の置きどころを相談するもの。

その両方に無関心で乗り気だった為に、関与が決定的になったのだった。エミリアは、スエード卿の手紙の細工に気が付かなかったのかと、訝しんだ。スエード卿の手紙には、スエード卿の名前が書いてあり、彼がこの件に関わっていないとわかっているなら、そこで罠だと気付くはずなのだが、そうはならなかった。エミリアの受けた印象は、彼女は何にも関心がないのだということ。誰が関わっていようとこれが罠であろうとなかろうと、この辺境伯領がどうなろうと、自分がどうなろうと、何も関心がない。

「あの夫人が代表な訳がない。だって中身がないんですよ。」
エミリアの言葉に反応したのはニコルだ。
「多分、彼女の意思なんて必要ないのよ。彼女は協力者ではあるけれど、黒幕ではないのよ。多分ね。だから、何にも無関心でもやっていけるのよ。辺境伯夫人で元女騎士の肩書きさえあれば、立派な傀儡が出来上がる。女騎士が有名になると、誰が得をすると思う?食えないたぬきはまだいるわ。」

だけど、彼は今回の件に関わりはないだろう。ルーナにも特に関わってはいないだろうし。

「残念だけど、ここで一旦落とし所を設けた方がいいわね。」
ニコルはそう言った。




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