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第一章 聖女イリス
謁見
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地獄のような馬車の旅だった。だってエルアリンドと二人旅だ。
両親とディマはわたしと一緒に乗り込むつもりだったけど、エルアリンドの部下がそれを阻む。また不穏な空気になるのは嫌だった。だから一人で大丈夫だと言って、別々の馬車に乗ったのだ。屋根付きの広い馬車。豪華な馬車だけど、少しも嬉しくなかった。
「わたしは聖女じゃないわ」隣に座るエルアリンドに向かって言った。
「わたしを聖女に仕立て上げたら、いつか罪が暴かれたとき、あなただって首を切られる」
「そうはならん」ふ、とエルアリンドは笑った。「聖女の心臓が君に触れ光っただろう。君も見たはずだ」
「本物のはずがない」
「いいや、本物さ」
「本物の聖女はアリアよ」
「言っただろう、そんな娘はいなかった」
押し問答は、何度も繰り返される。
いるはずよ。アリア・ルトゥムはどこかにいる。絶対にどこかにいるはずよ。だって彼女こそ、この世界の主人公なんだから。
小さな宿に泊まり、誰とも会話がなく過ごす。
家族は別の馬車で来るとエルアリンドは言っていたけど、宿屋に彼らの姿はない。
「家族に手を出したら、あなたをどうにかするわよ」
何度もエルアリンドにそう言った。
わたしの脅しが効いているのか、わたしに嫌気が差したのか、翌日の馬車からエルアリンドの姿はなかった。
◇◆◇
出発したのが深夜だったから、わたしが帝都に着いたのは、五日目の朝だった。
――ローザリア帝国首都。
ずっと閉め切っていた窓のカーテンを開いたとき、街のあまりの質量に、わたしは言葉を失った。
アレンの領地とは全く異なるおびただしい量の建物、入り組んだ狭い路地。整備された道路。区画された街並み。狭い空。
森や川なんてどこにも見えない。レンガ造りの建物が、どこまでも続いている。早朝の仕事に取りかかる人々が既に起き出していて、伯爵家の馬車が通り過ぎるのを、好奇心丸出しで眺めている。
街並みに、一際高い建築物を見つけた。
「あの塔――」
塔だ。てっぺんには鐘楼があり、時間ごとに鳴らされるのだろう。
その塔を見た瞬間、震えが止まらなくなった。
あの塔なら知っている。国家に背く反逆者が、閉じ込められている塔だ。
イリスが死の直前まで、暮らしていた、冷たい牢だ。そのすぐ横の広場で、イリスは首を切られて死んだ。味方なんて誰もいなくて、それでも自分の誇りを失わないために、自分を守るために、イリスはそうするしかなかった。
自分の体を抱きしめる。誰も見てはいないけど、怯えていることを、誰にも悟られたくなかった。
反対側の窓も、カーテンを開ける。
城が目に入った。姫が住んでいそうな、いわゆる美しいお城ではなかった。質実剛健で、堅牢な、灰色の城だ。城下から伸びる橋で、街と繋がっていた。
ローザリア帝国皇帝にして、小説のヒーロー、オーランドの住む城だ。
年はイリスの三つ上、だから十二歳か、もしかすると十三歳。本当の恋が分かるかどうか怪しい年に、彼はイリスと婚約を結ぶ。
そうして結局、最後まで二人の間に恋愛関係は生まれなかった。けれど彼は誠実だった。イリスが偽者の聖女と分かっても、彼女がそうと認めたなら、許し、命を奪おうとはしなかった。
いつかディマが言った言葉を思い出した。
生き残る方法なんていくらでもある。人生なんてどうとでもなる。
口の中で唱えると、不思議と勇気が沸いてくる。アリアが今、見つからなかったとしても、いつか見つかったその時、自分が偽者だったと引き下がればいいんだ。
「だから、大丈夫よ。大丈夫、イリス」
未だ震える自分の体を抱きしめながら、何度もそうやって呟いた。
城に着いた瞬間から、わたしは慌ただしく侍女達に飾り付けられた。その様子をじっとエルアリンドが見て、あれこれ指示を飛ばすものだから、気持ち悪くて仕方がない。
「美しい娘だな、ミランダに生き写しだ」
鏡を見ると、なるほど確かに、お母様によく似た、美しい少女の姿があった。
だけど今は、イリスの美貌に見とれている場合じゃない。
「家族はどこにいるの?」もはや敵意を隠さずにエルアリンドに尋ねると、彼はため息をつく。わたしの問いにはうんざりのようだ。
「君の仕事が終わったら会わせてやろう」
そう言って、わたしに向けて、手を差し伸べる。けれど掴むつもりはなかった。
「エスコートならいらないわ、紳士さん」
エルアリンドの横を通り抜けると、彼は行き場のなくなった手を、空中で遊ばせていた。
わたしの仕事、言われなくても分かっていたけど、エルアリンドはその部屋に入る前に、ああしろこうしろと事細かく命令してくる。
「お前のことは既にお伝えしている。重ねて言うが、陛下に決して生意気な態度を取るなよ。彼はこの国、皆の主なのだから」
わたしは沈黙を答えの代わりにする。
諦めたエルアリンドが使用人に指示をする。
そうして扉が開かれた。
高い天井には、宗教画が描かれている。大きな窓からは、光が差し込む。
誰がいるのかは分かっていた。
部屋の奥の玉座に、ローザリア皇帝、オーランドは座っていた。周囲に、たくさんの護衛達を侍らせて。
わたしはスカートの端を持ち上げて、彼に深々と頭を下げた。
「陛下、イリス・テミスと申します。お会いできて、光栄ですわ」
そうして再び頭を上げたとき、――ああ、小説通りだ。そう思った。
金色の髪の毛は柔らかそうに光っている。青い目は、澄み渡る空のようだ。甘い顔立ち。美しい人。
これがもう一人の主人公と言っても過言ではない、ヒーロー、オーランド。誰もが傅き、生まれながらにして、何もかも手に入れている、帝国首長だ。
だけど、彼から傲慢さは感じなかった。
きっと誰もが、彼を見たら愛さずにはいられない。鋭い空気を纏うディマとはまた異なる、柔和な雰囲気を持つ少年だった。
「イリス」優しい声でわたしの名前を呼ぶ。
彼は微笑むと、わたしに向かって手を伸ばした。
「イリス、こちらにおいで。怖がらなくていい」
エルアリンドがわたしの背を押し、ようやくオーランドに向かって歩き出す。彼の座る場所は数段高くなっている。段差の手前で立ち止まると、オーランドは息を漏らし、目を細めた。
「なんという美しさだろう。聖女イリス、どうか私の隣まで、来てくれないだろうか」
慈愛の籠もった眼差しに、わずかたじろぐ。けれど段差を上ることなく、下から彼を見上げて言った。
「陛下、おそれながら申し上げます。わたしは聖女ではありません」
ずっと、言おうと決めていたことだ。
「何を言い出す!」
エルアリンドが怒鳴り、わたしの腕を掴んだ。しかしそれを、オーランドが制する。
「よせエルアリンド。イリス、どういう意味か言ってごらん?」
彼が浮かべるのは温かな笑みだ。本音か建て前なのかは、判断が難しい。
「わたし、本当に違うんです。エルアリンド様が持っていた聖女の心臓は、きっと間違えてしまったのだと思います。わたし、自分が聖女でないと知っています。だって、自分のことですから」
「そんなことはないよ。私も聖女の心臓を持っている。それに触れて確かめればいい」
笑みを崩さず、オーランドが側にいる金髪の男性に命じた。命じられた彼は、わたしをジロリと見た後で、一瞬奥へと引っ込んで、すぐに布に包まれた何かを持って戻ってくる。
開かれた中には、当然の如く水晶結晶があった。
皇帝が持つものだ。本物に決まっている。
これが光らなければ、家に帰れる。エルアリンドの顔なんて、もう二度と見なくていい。光らないはずだ。だって、イリスは偽聖女だから。
だけど、わたしがそれに手を触れたとき、昼間の温かな光に混じり、玉座の間は赤く輝いた。
オーランドの側近達が、歓喜の声を上げる。
まるで先日の再現のようだ。
光るはずがない。光るはずがないのに。
すぐに手を離した。
「なにかの、間違い……」
「間違いなものか! なんと奥ゆかしく清純な少女だろうか。聖女が君のような娘で、良かった」
オーランドは感激を声に表しながら、彼の方から段を降り、わたしの前までやってくる。それからにこりと笑うと、わたしの手を取ってキスをした。
「このオーランドの元に現れてくださり、なんと光栄なことでしょうか。あなたに私の人生の全てを捧げます。あなただけを愛し、あなただけに愛されるために、私の命はあるのです。私と結婚してください、聖女様」
わたしだけを残して、世界が加速しているみたいだ。
聖女じゃない。わたしは違う。イリスは聖女じゃない。手を握られたまま、呆然とわたしは言う。
「ち、違うんです。イリスは偽者で、聖女は、アリア――」
言いかけた瞬間、エルアリンドが口を挟む。
「このイリスは、陛下にお会いするのを、そして聖女として国に尽くすのを楽しみにしていたのですよ。ですが陛下、この子は長旅で疲れてしまっているようです。何せ初めての旅ですから。晩餐はご一緒に。一度下がらせてもよろしいでしょうか」
この場所に、わたしの意思など必存在しない。オーランドの許可を待って、エルアリンドはわたしの腕を引っ張り、場を後にした。
両親とディマはわたしと一緒に乗り込むつもりだったけど、エルアリンドの部下がそれを阻む。また不穏な空気になるのは嫌だった。だから一人で大丈夫だと言って、別々の馬車に乗ったのだ。屋根付きの広い馬車。豪華な馬車だけど、少しも嬉しくなかった。
「わたしは聖女じゃないわ」隣に座るエルアリンドに向かって言った。
「わたしを聖女に仕立て上げたら、いつか罪が暴かれたとき、あなただって首を切られる」
「そうはならん」ふ、とエルアリンドは笑った。「聖女の心臓が君に触れ光っただろう。君も見たはずだ」
「本物のはずがない」
「いいや、本物さ」
「本物の聖女はアリアよ」
「言っただろう、そんな娘はいなかった」
押し問答は、何度も繰り返される。
いるはずよ。アリア・ルトゥムはどこかにいる。絶対にどこかにいるはずよ。だって彼女こそ、この世界の主人公なんだから。
小さな宿に泊まり、誰とも会話がなく過ごす。
家族は別の馬車で来るとエルアリンドは言っていたけど、宿屋に彼らの姿はない。
「家族に手を出したら、あなたをどうにかするわよ」
何度もエルアリンドにそう言った。
わたしの脅しが効いているのか、わたしに嫌気が差したのか、翌日の馬車からエルアリンドの姿はなかった。
◇◆◇
出発したのが深夜だったから、わたしが帝都に着いたのは、五日目の朝だった。
――ローザリア帝国首都。
ずっと閉め切っていた窓のカーテンを開いたとき、街のあまりの質量に、わたしは言葉を失った。
アレンの領地とは全く異なるおびただしい量の建物、入り組んだ狭い路地。整備された道路。区画された街並み。狭い空。
森や川なんてどこにも見えない。レンガ造りの建物が、どこまでも続いている。早朝の仕事に取りかかる人々が既に起き出していて、伯爵家の馬車が通り過ぎるのを、好奇心丸出しで眺めている。
街並みに、一際高い建築物を見つけた。
「あの塔――」
塔だ。てっぺんには鐘楼があり、時間ごとに鳴らされるのだろう。
その塔を見た瞬間、震えが止まらなくなった。
あの塔なら知っている。国家に背く反逆者が、閉じ込められている塔だ。
イリスが死の直前まで、暮らしていた、冷たい牢だ。そのすぐ横の広場で、イリスは首を切られて死んだ。味方なんて誰もいなくて、それでも自分の誇りを失わないために、自分を守るために、イリスはそうするしかなかった。
自分の体を抱きしめる。誰も見てはいないけど、怯えていることを、誰にも悟られたくなかった。
反対側の窓も、カーテンを開ける。
城が目に入った。姫が住んでいそうな、いわゆる美しいお城ではなかった。質実剛健で、堅牢な、灰色の城だ。城下から伸びる橋で、街と繋がっていた。
ローザリア帝国皇帝にして、小説のヒーロー、オーランドの住む城だ。
年はイリスの三つ上、だから十二歳か、もしかすると十三歳。本当の恋が分かるかどうか怪しい年に、彼はイリスと婚約を結ぶ。
そうして結局、最後まで二人の間に恋愛関係は生まれなかった。けれど彼は誠実だった。イリスが偽者の聖女と分かっても、彼女がそうと認めたなら、許し、命を奪おうとはしなかった。
いつかディマが言った言葉を思い出した。
生き残る方法なんていくらでもある。人生なんてどうとでもなる。
口の中で唱えると、不思議と勇気が沸いてくる。アリアが今、見つからなかったとしても、いつか見つかったその時、自分が偽者だったと引き下がればいいんだ。
「だから、大丈夫よ。大丈夫、イリス」
未だ震える自分の体を抱きしめながら、何度もそうやって呟いた。
城に着いた瞬間から、わたしは慌ただしく侍女達に飾り付けられた。その様子をじっとエルアリンドが見て、あれこれ指示を飛ばすものだから、気持ち悪くて仕方がない。
「美しい娘だな、ミランダに生き写しだ」
鏡を見ると、なるほど確かに、お母様によく似た、美しい少女の姿があった。
だけど今は、イリスの美貌に見とれている場合じゃない。
「家族はどこにいるの?」もはや敵意を隠さずにエルアリンドに尋ねると、彼はため息をつく。わたしの問いにはうんざりのようだ。
「君の仕事が終わったら会わせてやろう」
そう言って、わたしに向けて、手を差し伸べる。けれど掴むつもりはなかった。
「エスコートならいらないわ、紳士さん」
エルアリンドの横を通り抜けると、彼は行き場のなくなった手を、空中で遊ばせていた。
わたしの仕事、言われなくても分かっていたけど、エルアリンドはその部屋に入る前に、ああしろこうしろと事細かく命令してくる。
「お前のことは既にお伝えしている。重ねて言うが、陛下に決して生意気な態度を取るなよ。彼はこの国、皆の主なのだから」
わたしは沈黙を答えの代わりにする。
諦めたエルアリンドが使用人に指示をする。
そうして扉が開かれた。
高い天井には、宗教画が描かれている。大きな窓からは、光が差し込む。
誰がいるのかは分かっていた。
部屋の奥の玉座に、ローザリア皇帝、オーランドは座っていた。周囲に、たくさんの護衛達を侍らせて。
わたしはスカートの端を持ち上げて、彼に深々と頭を下げた。
「陛下、イリス・テミスと申します。お会いできて、光栄ですわ」
そうして再び頭を上げたとき、――ああ、小説通りだ。そう思った。
金色の髪の毛は柔らかそうに光っている。青い目は、澄み渡る空のようだ。甘い顔立ち。美しい人。
これがもう一人の主人公と言っても過言ではない、ヒーロー、オーランド。誰もが傅き、生まれながらにして、何もかも手に入れている、帝国首長だ。
だけど、彼から傲慢さは感じなかった。
きっと誰もが、彼を見たら愛さずにはいられない。鋭い空気を纏うディマとはまた異なる、柔和な雰囲気を持つ少年だった。
「イリス」優しい声でわたしの名前を呼ぶ。
彼は微笑むと、わたしに向かって手を伸ばした。
「イリス、こちらにおいで。怖がらなくていい」
エルアリンドがわたしの背を押し、ようやくオーランドに向かって歩き出す。彼の座る場所は数段高くなっている。段差の手前で立ち止まると、オーランドは息を漏らし、目を細めた。
「なんという美しさだろう。聖女イリス、どうか私の隣まで、来てくれないだろうか」
慈愛の籠もった眼差しに、わずかたじろぐ。けれど段差を上ることなく、下から彼を見上げて言った。
「陛下、おそれながら申し上げます。わたしは聖女ではありません」
ずっと、言おうと決めていたことだ。
「何を言い出す!」
エルアリンドが怒鳴り、わたしの腕を掴んだ。しかしそれを、オーランドが制する。
「よせエルアリンド。イリス、どういう意味か言ってごらん?」
彼が浮かべるのは温かな笑みだ。本音か建て前なのかは、判断が難しい。
「わたし、本当に違うんです。エルアリンド様が持っていた聖女の心臓は、きっと間違えてしまったのだと思います。わたし、自分が聖女でないと知っています。だって、自分のことですから」
「そんなことはないよ。私も聖女の心臓を持っている。それに触れて確かめればいい」
笑みを崩さず、オーランドが側にいる金髪の男性に命じた。命じられた彼は、わたしをジロリと見た後で、一瞬奥へと引っ込んで、すぐに布に包まれた何かを持って戻ってくる。
開かれた中には、当然の如く水晶結晶があった。
皇帝が持つものだ。本物に決まっている。
これが光らなければ、家に帰れる。エルアリンドの顔なんて、もう二度と見なくていい。光らないはずだ。だって、イリスは偽聖女だから。
だけど、わたしがそれに手を触れたとき、昼間の温かな光に混じり、玉座の間は赤く輝いた。
オーランドの側近達が、歓喜の声を上げる。
まるで先日の再現のようだ。
光るはずがない。光るはずがないのに。
すぐに手を離した。
「なにかの、間違い……」
「間違いなものか! なんと奥ゆかしく清純な少女だろうか。聖女が君のような娘で、良かった」
オーランドは感激を声に表しながら、彼の方から段を降り、わたしの前までやってくる。それからにこりと笑うと、わたしの手を取ってキスをした。
「このオーランドの元に現れてくださり、なんと光栄なことでしょうか。あなたに私の人生の全てを捧げます。あなただけを愛し、あなただけに愛されるために、私の命はあるのです。私と結婚してください、聖女様」
わたしだけを残して、世界が加速しているみたいだ。
聖女じゃない。わたしは違う。イリスは聖女じゃない。手を握られたまま、呆然とわたしは言う。
「ち、違うんです。イリスは偽者で、聖女は、アリア――」
言いかけた瞬間、エルアリンドが口を挟む。
「このイリスは、陛下にお会いするのを、そして聖女として国に尽くすのを楽しみにしていたのですよ。ですが陛下、この子は長旅で疲れてしまっているようです。何せ初めての旅ですから。晩餐はご一緒に。一度下がらせてもよろしいでしょうか」
この場所に、わたしの意思など必存在しない。オーランドの許可を待って、エルアリンドはわたしの腕を引っ張り、場を後にした。
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