8 / 8
最終話 五年後
しおりを挟む
私、マグリナ・フィッツジェラルドは十七歳になった。今はお姉様が通ったのと同じ学園で学んでいる。
学園は楽しい。お友達もたくさんできた。
お姉様は卒業後、ハリルと結婚した。今は泣くこともなく毎日幸せそうに笑っているよう。時折届く恐ろしいほどの量の手紙に幸せな日々が綴られている。あのハリルの歪んだ愛に最初は心配だったけど、結婚してからカカア天下になったらしい。今ハリルはお姉様の尻に敷かれてる。どうであれ、お姉様が幸せならそれでいいのよ。
あの、十二歳の頃、お姉様を助けるべく奮闘したのは今ではいい思い出になった。
そして当時側にいたクロフォード王太子殿下。生意気にも小さかった私は彼に偉そうな態度を取っていた。あれで良く怒られなかったものだ。何度も手紙を書こうと思ったけど、恥ずかしくて書けないまま。
今はあの頃の彼と同じ歳になった。ちょっとは私も大人になったってことよ。
最近の変化といえば、結婚の申し込みが後を絶たなくなったことかしら。あいも変わらず、男たちは我が家の財産を狙っている。まったくもう。全部断るのも大変だ。
今日も結婚の申し込みがあったらしく、早く家に帰ってこいとお父様に言われていた。めんどくさいわ。
でも、結婚したお姉様はすごく幸せそうで、本音を言うとちょっぴり羨ましい。だから、今日に限ってはちゃんと向き合ってみようかなという気分だった。
私に起こった別の変化としては、横に広がっていた体が縦に伸びたということ。痩せて人並みになったかな。前はお菓子をばくばく食べてたけど、あれは成長期の食欲だったみたい。
*
学園の庭を颯爽と横切り門へと真っ直ぐ歩くマグリナを見て、男子生徒たちは色めき立った。
「見ろよ、マグリナ嬢だ」
「今日もかわいいなあ。なんとかお近づきになれないものか」
「お前じゃ無理だよ。あれほどの美人だぜ。結婚の申し込みもすべて断ってるって話だ」
「ああオレも断られた」
「お前もか、実はオレも」
「はあ。一体彼女のお眼鏡にかなう男は現れるのか……」
その会話を聞いていた別の男子生徒も話に加わる。
「しかし、ついにあの男が参戦したって話だぜ。昔、居候してたって噂のあの隣国の……」
*
お見合いの会場は我が家の庭だった。
まあ別に場所はどこだっていいのよ。
でも、なんだか今日はそわそわする。いつもと違うような気がする。なんでだろう? 何かが起こりそうな、そんな予感がするのだ。
空は青いし、雲は白いし、風は爽やかだ。なにもかも好調。
私は持ってる中で一番いいドレスを着て、かわいい髪型にした。いつもはしないお化粧も、ほんの少しだけした。
そして庭に出る。
相手はもう待っていた。
芝生の上に設置されているテーブルには山のようなクッキーがあり、その前には金髪の男性がこちらに背を向けて座っていた。
私が近づいていくと、足音に気がついたのか彼が振り返る。
……ねえ、それが誰だったと思う?
あえては言わないことにする。
言ったらつまらないし、だいたい皆が想像しているとおりの人よ。
まったく、素直じゃないのはどっちなんだか?
私は嬉しくて、とてつもなく幸せで、せっかく着飾ったドレスも、かわいくした髪型も気にせずにその人に走って飛びついた。勢いよく椅子から転落して、芝生の上に二人で転んだ。
その人は愉快そうに大声で笑いながら私の頭をぐしゃしゃに撫でた後、思い切り抱き締め返してくれたのだ。
これで、私の物語はおしまい。
語ることは語り終えたもの。
それから二人はどうなったかって?
お話の締めくくりはたいていの場合こうでしょう。
そして二人は……ううん、みんなは、いつまでも幸せに暮らしましたとさ!
-おしまい-
学園は楽しい。お友達もたくさんできた。
お姉様は卒業後、ハリルと結婚した。今は泣くこともなく毎日幸せそうに笑っているよう。時折届く恐ろしいほどの量の手紙に幸せな日々が綴られている。あのハリルの歪んだ愛に最初は心配だったけど、結婚してからカカア天下になったらしい。今ハリルはお姉様の尻に敷かれてる。どうであれ、お姉様が幸せならそれでいいのよ。
あの、十二歳の頃、お姉様を助けるべく奮闘したのは今ではいい思い出になった。
そして当時側にいたクロフォード王太子殿下。生意気にも小さかった私は彼に偉そうな態度を取っていた。あれで良く怒られなかったものだ。何度も手紙を書こうと思ったけど、恥ずかしくて書けないまま。
今はあの頃の彼と同じ歳になった。ちょっとは私も大人になったってことよ。
最近の変化といえば、結婚の申し込みが後を絶たなくなったことかしら。あいも変わらず、男たちは我が家の財産を狙っている。まったくもう。全部断るのも大変だ。
今日も結婚の申し込みがあったらしく、早く家に帰ってこいとお父様に言われていた。めんどくさいわ。
でも、結婚したお姉様はすごく幸せそうで、本音を言うとちょっぴり羨ましい。だから、今日に限ってはちゃんと向き合ってみようかなという気分だった。
私に起こった別の変化としては、横に広がっていた体が縦に伸びたということ。痩せて人並みになったかな。前はお菓子をばくばく食べてたけど、あれは成長期の食欲だったみたい。
*
学園の庭を颯爽と横切り門へと真っ直ぐ歩くマグリナを見て、男子生徒たちは色めき立った。
「見ろよ、マグリナ嬢だ」
「今日もかわいいなあ。なんとかお近づきになれないものか」
「お前じゃ無理だよ。あれほどの美人だぜ。結婚の申し込みもすべて断ってるって話だ」
「ああオレも断られた」
「お前もか、実はオレも」
「はあ。一体彼女のお眼鏡にかなう男は現れるのか……」
その会話を聞いていた別の男子生徒も話に加わる。
「しかし、ついにあの男が参戦したって話だぜ。昔、居候してたって噂のあの隣国の……」
*
お見合いの会場は我が家の庭だった。
まあ別に場所はどこだっていいのよ。
でも、なんだか今日はそわそわする。いつもと違うような気がする。なんでだろう? 何かが起こりそうな、そんな予感がするのだ。
空は青いし、雲は白いし、風は爽やかだ。なにもかも好調。
私は持ってる中で一番いいドレスを着て、かわいい髪型にした。いつもはしないお化粧も、ほんの少しだけした。
そして庭に出る。
相手はもう待っていた。
芝生の上に設置されているテーブルには山のようなクッキーがあり、その前には金髪の男性がこちらに背を向けて座っていた。
私が近づいていくと、足音に気がついたのか彼が振り返る。
……ねえ、それが誰だったと思う?
あえては言わないことにする。
言ったらつまらないし、だいたい皆が想像しているとおりの人よ。
まったく、素直じゃないのはどっちなんだか?
私は嬉しくて、とてつもなく幸せで、せっかく着飾ったドレスも、かわいくした髪型も気にせずにその人に走って飛びついた。勢いよく椅子から転落して、芝生の上に二人で転んだ。
その人は愉快そうに大声で笑いながら私の頭をぐしゃしゃに撫でた後、思い切り抱き締め返してくれたのだ。
これで、私の物語はおしまい。
語ることは語り終えたもの。
それから二人はどうなったかって?
お話の締めくくりはたいていの場合こうでしょう。
そして二人は……ううん、みんなは、いつまでも幸せに暮らしましたとさ!
-おしまい-
92
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
邪魔者な私なもので
あんど もあ
ファンタジー
婚約者のウィレル様が、私の妹を食事に誘ったと報告をしてきました。なんて親切な方なのでしょう。でも、シェフが家にいるのになぜレストランに行くのですか?
天然な人の良いお嬢さまが、意図せずざまぁをする話。
ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!
satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。
私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。
私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。
お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。
眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!
姉の引き立て役の私は
ぴぴみ
恋愛
アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。
「どうしたら、お姉様のようになれるの?」
「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」
姉は優しい。でもあるとき気づいて─
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!
青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。
図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです?
全5話。ゆるふわ。
【完結】魔力の見えない公爵令嬢は、王国最強の魔術師でした
er
恋愛
「魔力がない」と婚約破棄された公爵令嬢リーナ。だが真実は逆だった――純粋魔力を持つ規格外の天才魔術師! 王立試験で元婚約者を圧倒し首席合格、宮廷魔術師団長すら降参させる。王宮を救う活躍で副団長に昇進、イケメン公爵様からの求愛も!? 一方、元婚約者は没落し後悔の日々……。見る目のなかった男たちへの完全勝利と、新たな恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
うわー! これ好き!!
こういう語り口調の物語いいですよね。
嬉しー!
作者も好きな雰囲気のお話です!
かわいい!
とってもかわいいお話ですね♡
登場人物みんなかわいい♡
読後感も半端なく良いです*´꒳`*
素敵なお話ありがとうございました!
わーい!感想ありがとうございます!
お読みいただきとっても嬉しいです。
終わり方は色々想像してもらえるといいかなと思って、ぼかしてみました。
楽しんでいただけてよかったです^_^