おそうじの女神さま♡

ヒムネ

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女神の条件

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 それからボクは母の手伝いを積極的にするようになった。それは“おそうじをすればメガミがあいにくる”と確信したから。
「メガミッ、あいにきてくれたの?」
 それは本当で女神は頻繁に会いに来てくれた。
「エヘヘッ、イエーイッ」
 女神といると楽しい、色々な不思議な世界を行って、たくさん遊んでくれて、ずっと一緒に遊べると思っていた。しかしボクが6才の時、別の小学校に通う都合上、母の実家で暮らすことになってしまった。それをベランダで二人で座って伝えることにした。
「メガミ、ボクここにいられなくなっちゃった」
「……別のお家で小学校に通うんですね」
「うん……」
 女神の屈託のない笑顔を見ると離れることが悲しくなる。
「そんな悲しい顔をしないの」
「だって、だってせっかくメガミとともだちになれたのに……どうしてメガミはそんなにえがおなの? かなしくないの?」
 ボクが悲しくて今にも泣き出しそうになっていても女神は笑顔を崩さずに立ち上がり空を見上げた。
「少し、ワタシのお話をしましょうか」
「メガミのはなし……うん」
「ワタシは、女神のなかでも“そよ風の女神”」
 だから女神といると何時も優しいそよ風が吹いていたんだ。
「気まぐれに出歩き、そよ風のとおりやすい道を気まぐれに歩いてきました。春の季節も夏の季節も、秋や冬も、その時その年のそよ風に揺られて」
 女神が目を閉じると、それはまるで今のそよ風を感じているように見えて子どものボクも目を閉じてそよ風を感じてみた。気持ちいい、この感覚をずっと味わっていたくなる。
「だからね。お掃除をしているお家にはそよ風が通ってるから、お家を歩くときもあるの」
「だからメガミはボクにあいにきてくれるんだね」
「うん、でも実はこんなに人と遊ぶのは初めてだったの」
「はじめてなんだ」
「最初は、そよ風に導かれるままヒカルくん家を訪ねた」
 そう、最初に女神と会ったのは母が入院している時にボクが元気になってほしくてお掃除をした日だ。
「最初は泣いていたヒカルくん、あの時も最後だと思ってたんです。でもヒカルくんがお掃除をしてくれたから、そよ風がまた導いてくれました」
「メガミにあいたかったからね」
「フフッ、それからは楽しかった。人と話すのも悪くないって思えました」
「でも、もう……」
「ワタシはねヒカルくん」
 女神は太陽を掴もうとしたのかジャンプして何度も握ろうとしていた。
「そんなことしたって、おひさまはとれないよ」
「悲しい気持ちも半分くらいはあるけれど、もう半分はこれからのヒカルくんが楽しみな気持ちもあるんです」
「ボク?」
「うん、きっとヒカルくんは自分でお掃除をすると決めて行動したことは……太陽は掴めないけど将来は掴めるとワタシは思います」
「え~……よくわかんないよ」
「フフ~ンッ、今は分からなくても良いですよ~、もう少し大人になってからです」
「なんだよ~、メガミのケチッ……あっ」
「フフッ」
「おかあさんをげんきになったのって、メガミがたすけてくれたの?」
「それはですね~……」
「それはっ!?」
「女神ですから」
「どういうこと~?」
 女神がこの時はぐらかしたのか、本当に母が退院したのは偶然だったのかは分からない。でも、ボクはそよ風の女神のおかげだと思っている。

 ――それから引っ越したボクと女神は離ればなれになった。しばらくは寂しい気持ちでいっぱいだったが、それも1年2年と時間はその記憶を薄れさせていき、小学高学年にはすっかり忘れていた。
 そんな小学6年生の大掃除の時期、自分の部屋を片付けていた時だった。
「ふ~……掃除って大変だな~……小さい頃は頑張って掃除した、はず……」
「大変そうですね」
「ん、だれっ……キミはっ!」
「そよ風に導かれてたどり着きました。おひさしぶりですね、ヒカルくん」
 霞んでいた記憶のピースが埋まった。この明るい声と笑顔を、どうして忘れていたんだろう。
「名前は……女神……だ」
「ワタシ感激ですーっ、覚えててくれて嬉しいですーっ!」
「僕が片付けたから、掃除したからこれたの?」
「はい、そよ風に導かれるままにですが……聞かせてください、これまでのこと」
「へへっ、いっぱいあるよ!」
 このあと僕と女神は出会わなかった約6年分の話した……。

 女神こうしてお掃除をした時にそよ風に導かれて気まぐれに現れる……。
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