〜クイーン·ザ·セレブレイド〜

ヒムネ

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プリンセス ―ロング―

血を流す痛み

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 更に馬のロネリーが前脚を上げながら鳴き、止めたロベリー。ちっ、ならばと馬のストロングをそのまま時計回りし、槍を前に構えてロベリーに真正面へと向かって行く。
 ロベリーも腕を右側に伸ばして、剣で迎えうつつもりで向かってくるバイオレットの方へと走らせた。


 互いの馬が真正面へと駆ける。


 先に仕掛けたのは槍を構えたバイオレット、真正面から貫こうと企んだのだが、


「はぁああっ!」


 なに、と言う2文字が頭に浮かび予想外の事にロベリーは馬の上から素早く飛び上がったのだ。


 一瞬槍を切り上げるのが遅れ、


「うわー!」「キャー!」


 馬に騎乗していたバイオレットに飛び出してきたロベリーは体と体が激突し2人は落馬し地面に腰をうつ。


「くぐっ······」「うっ······うっ······」


 広い戦場の荒野に2人の王女が起き上がろうとするが痛みと痺れで起きれず。


 ――そのころ砂塵が舞い激戦区とかす南西ではどちらの軍も引けを取らず拮抗していることからも、カギを握るのはランク城の騎士バーナとニゲラニ城のセレブ騎士団長。


「やるではないか若き騎士よ」


「はぁ、はぁ」


 褒め称えるセレブ、だが汗を流すバーナにそんな余裕は無かった。多様な武器を扱うセレブとの戦いは重装備をしている彼には不利だからだ。剣や槍、斧などは剣で、しかし弓や弩弓はいくら鎧といえど貫かれる恐れがあることから回避しづらくとも絶対に受けてはならない。そのためいつも以上に回避に集中した事で疲労は確実に溜まっていく。


「はあっ!」


 槍で攻めるセレブだが、


「くっ」


 左手の盾、右手の剣で槍の突きを見極め弾き続けるバーナ。空きあらば、


「うおおっ!」


 盾で突進するも、相手はそれに気づき後ろへと下がった。


 セレブはこんな事を続けていてはらちがあかないと自分の右上に剣を横にして突き刺す構えをする。


 バーナもそれに備え相手から目を離さず盾を構えると、


「フッ、生真面目だな。そういう奴ほど早死するぞ」


「死にはしない、誉めの言葉と受けとっておく」


 お互いが集中し周りの激しい音が徐々に遠ざかっていく。



 頬には綿の様な雪も。



 慎重に距離を詰め2人は動き出した。



 その時、



「バーナーッ!」



 不運にもラドルフの声が僅かに耳に入り集中力が乱れて右手を前にして突きを狙うセレブの剣に左の盾で防ぐ、



 しかし盾の右端で防ぎきれず突き刺しに来た剣が少しずれ、



 グサッ、



 敵の剣はバーナの右肩当てごと砕き貫く。



 相手の剣が刺さったのが見えたラドルフが馬で駆けつけ剣を降り、それに気づき突き刺した剣を即座に抜き距離を取る。


「そのやさ顔、ラドルフ騎士団長か」


 馬を止め、


「セレブめ、生きてるかバーナ」


「は、はい、み、右肩をやられました」


「下がっていろ」


 右肩の痛みと出血で立っているのも辛くなり両膝をつく。だがチャンスとばかりにセレブ騎士団長は戦っている周りの兵士達を集め、


「逃さん、行けっ!」襲ってくる。


 ラドルフは周りの兵士にバーナを護りながら迎撃するように命令、右肩を押さえて何とか自分で動くバーナだが「ロベリー、王女は······」それよりも彼女の事を案ずるのだった······。


 ――ロベリーがロネリーから飛び込みストロングに騎乗したバイオレットと激突、落馬した2人は痛みを堪えながらも武器を探していた。しかしバイオレットは武器を握る前にと後ろの腰に隠していたナイフを右手で抜き、


「おのれ小娘······ロベリー王女め、手こずらせてくれる」


 なんとか立ち上がり近づいていく。


 いままで感じたことの無い痛みと痺れでも近づいてくる相手にロベリーも武器を探すが運よく近くに自分の剣が落ちていてそれを拾い、


「バイオレット王女、もう止めてっ」


 こんな状態でも彼女は説得を試みる。


「なぜ貴女は、オメラ王女の言葉を、綺麗事と言うの?」


「簡単な話だ」


 皺を寄せニヤリとし、



「あの国は血を流したことのない偽善の国、そんな国の王女の言葉などどうでもいいだけだ、はああっ!」


 勢いを付け飛びかかって来たナイフを剣で受け止める。


「偽善って、なら血を流すことが正しいと言うの?」


「黙れっ、私がクイーン·ザ·セレブレイドになり全てを治めれば、もう血は流さなくてすのだっ!」


 勢いが増していくバイオレット、 


「そのために、多くの兵たちの命を失ってもですか?」


「構わん、それが私のだっ!」


?」


 たじろぐロベリーにもう少しと攻撃を続ける。一見無茶のように見えるが、受けてばかりのロベリーが自分に殺意が無いとバイオレットは見抜き剣をよりも短いナイフでも果敢に攻めることができていたのだ。


 そんなロベリーに迷いが出てしまう。


 自分がプレナ王女に言われた言葉を知らないはずのバイオレット王女が偶然にも同じ言葉を放った事に。


 はっ、とロベリーが気づけばその時バイオレットは右手のナイフで彼女の剣を防ぎ左手で、



「はぁぁあっ!」




 バイオレットの拳がロベリーの鼻から顔を強打した。



「う、うわぁぁぁあぁぁっ······あ」



 背中から倒れ砂埃が舞う。ロベリーが生きてきて1度も感じたことの無い激しい痛みに思わず叫びだす。


「フンッ」


 痛みで頭いっぱいの中、微かな自身の使命で顔を左手で隠しなんとか落とした剣を拾う。


「甘えた王女には味わった事があるまい、それが痛みだ」


 相手に背を向けてしまっている。早く立たないととうつ伏せから起き上がろうとしたが、



「血、うっ······うっうっ」



 自分の鼻から出る真っ赤な血と激痛で震えだし涙と雪で地面が濡れていく。



「お前もこれで母の仇を討ちたくなっただろう。さぁ立てっ」


「おかあ······さま······」


 仇······ロベリーの頭にそれはなく、ただ浮かぶのは、



 母に



 再び近づこうとしたバイオレットの元にニゲラニの兵が駆けつけ王女に何やら話し掛けていた。


 その間に痛みを堪えなんとか立ち上がると、


「ハァ、ハァ······」


「仕方ない、退くぞ」


 バイオレットが命令をすると兵士たちは撤退していく。そしてロベリーを見て、


「命拾いしたな、次こそロベリー王女の命はもらう」


 痛みで震える彼女もどうしてと内心思うも背を向き剣を収めニゲラニの軍団が徐々に去っていく姿を見ていた······。


 するとロベリー王女にも自軍の兵士が、


「ロベリー王女大変な······鼻血がっ!」


 驚き慌てる兵に大丈夫と痩我慢し答え落ち着かせて内容を聞くと、



「ラバーグの軍がここに?」



 予想もしない事に、だからバイオレット王女はと気づき急いで離れようと思ったのだが荒野にはケガをした自軍とニゲラニの兵士や騎士がいる。


わたくしをラバーグの軍のところへ案内してください」


「え、本気ですか!」


「傷ついた兵たちをおいて逃げる事はできません」


 そう言い少数はロベリーと、残りは重症者に騎士、兵士を向かわせロベリーは馬のロネリーに跨りラバーグの軍がやって来る場所に移動する事に······。


 当然それはラドルフ騎士団長の元にも、


「それでセレブたちが退いたのか、それにしてもロベリー王女が少数でとは、なんとまた無茶を」


 呆れながらもラドルフは馬に乗りロベリーの方へと向かう。
 また、雪が降るなか右肩に深手を負い寒いくても鎧を脱ぎバーナは兵士に包帯を巻かれながらも騎乗したラドルフが徐々に小さくなり見えなくなると「ラドルフ騎士団長、頼みます」と歯がゆくもロベリーの無事を静かに祈るしかなかった。


 北西から更に西へ向かうロベリー、しかし5分もしないうちに森林ギリギリまでの所までにたどり着き、そこで待つことにする。
 さすがに日のない雪の日は体が冷えて布目を手でこすりだす。他にも傷や殴られた鼻もズキズキと痛みだすがそれでも待ち続けていると、馬の駆ける音とともにラバーグの兵士たちが森林から姿を現す。


 うおっ、と馬を止めたのは騎士団長ではなかった。


「ロベリー王女でしたか、申し遅れました私は騎士カリム、ご無事で何よりです」


 カリムが皆に止まれと号令しどんどんとラバーグの兵士たちが現れたが、


「あの~、すいません」と号令をした騎士カリムに話しかけ、


「騎士団長殿は居られないのですか?」
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