〜クイーン·ザ·セレブレイド〜

ヒムネ

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プリンセス ―ロング―

覚悟の日

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 玉座に座って天井を見つめるロベリーは昨日のことを考えてどうすれば1番いいのか頭を巡らせる。何か戦争を終わらせるきっかけが無いものかと、


「ロベリー王女······」


 その声にやはり平和はそうは長くは続かないと感じるロベリー。


「どうしましたかヤクナ」


「······最近、晴れ間が続いてますな」


「ん······そうですね、ありがたいです」


 なにやら何時もよりおかしいヤクナの顔は少し寂しげで悟ったような感じ。それだけではなく玉座の間全体にただよう雰囲気はあきらかにいつもとは違う、


 みんなが何かを隠してる。


 でもそれはきっと自分を傷つける事に違いないのだろう。


 訊かなくていいのなら、訊きたくは無い。


 居づらいくスッと彼女は立ち上がり歩き出すと、


「ロベリー王女、どこへ?」


「ヤクナ······父の様子と母のお墓へ、少し風にあたってきます」


「はっ、わかりました」


 ロベリーが出て行く。


 それを確認しヤクナに近くの兵士2人が集まり、


「ヤクナ様、どうするおつもりです?」


 3人は険しい顔で、


「タイミングというものがある。だが、今回ばかりは······この世に神など、いないのかもしれんな」


 遅かれ早かれいずれは知る事になってしまう。かといって話せば······そんな彼らは固唾を飲みながらも沈黙し覚悟を決めるしかなかった······。


 しばらくしてヤクナやその他の兵士と話題をどうするかと考えていると「ロベリー王女、まだですかね」と兵は不意に口にする。


「ロベリー王女だって考えることはあるさ」


 あまりこちらから気を使いすぎるのもと思いつつヤクナ自身も頭の隅で心配になり、


「······ふぅ、ダメだな。よし、私が見てこよう」


 仕事に集中できず自らそう言って玉座の間を出たが廊下を歩いていると、


「プログ王!」


 辛そうにも必死に王は1人震えながら、


「ヤクナ、ロベリーはどこだ!」


「ロベリー様はプログ王のところでは······まさか――」



 冬の風、少し冷たく肌寒い、



「おかあ、さま······」



 ロベリーは母のお墓にきていた。



 長い髪がなびかせながら右手には果物ナイフを持ちその漆黒の瞳は生きているのに死んでいる様に力が無い、



「わたし、記事を読みました――」



 父の様子を見ようと部屋を訪れた時、


「おお、ロベリーよ大丈夫なのか?」


 何がです、とベッドの近くの椅子に座りリンゴを剥こうとすると記事が、


「お前を心配していたのだ」


 どういうことなのかと記事を確認してしまう。


『許せないと怒りのシリカ王女がクイーン·ザ·セレブレイドを宣言。朝、堂々とギトス城のシリカ王女は壇上にあがり演説を始め、亡くなったチュリン王女と――』




 




「チュリンが············」



 その文脈だけが目に入り手に持った果物ナイフとともに走り去る。


 兵士も走り去る王女を目撃するもお構いなし、ハァ、ハァッと息を切らして気が付けば母のお墓の前に――。



「ねえお母様、そこにチュリンがいるんですか?」



 墓石に語りかける。



「そこにバーナは? 亡くなった兵士の方々もいるのですか、答えてくださいっ······おかあ、さま」



 母に抱きつくように墓石に抱きつくも、あのときの母のように良い匂いも温もりも優しさも感じない。



 感じるの身体の芯まで伝わる石の冷たさだけ。



「つめたいです、おかあさま······たい」



 ボソッと呟くようにロベリーは、



「······きたい、いきたい、いきたいっ、いきたいですっ!」



 1人いきたいと叫び感情が解放され、



「うっうっ」涙が溢れる。



 それでも、



「わたしも、そっちにいきたい、つれてってっ、つれてってっ、つれてって······」



 なにもおきない事に膝を付くロベリー、



「どうして······どうしてよ、うっうっ、わたしだってつらい、もう傷つきたくない、痛いのだって嫌······なのに、なんで、つれてってくれないんですか? 答えてよ、答えてっ、こたえてよ······うあぁぁぁぁぁー!」



 その叫びはランク城に響く、



 ヤクナや兵たちも大庭園から顔を出すがとても近づけない雰囲気に黙って見守る事しか出来ない。



 泣いても、


 叫んでも、


 聞こえてくるのは波の音。



 誰も戦を、戦争を終わらせることはできない。

 

 生きることの厳しさしかロベリーに触れてはくれず、



「······そうだ······」



 虚ろな眼に入ったのは右手の果物ナイフ。



「······ハハッ、わたしから、母に、バーナにチュリンに、会いにいけばきっと、よろこんでくれる」



 胸にそっとナイフを向ける、



「ロベリーさまあぁぁ、おやめをぉぉー!」



 さまざまな事が記憶をめぐる、



 ランク城に生まれ、



 父と母の笑顔、



 チュリンとの思い出、



 バーナに好意を抱いたこと、



 円卓の間······戦争······、



 もうすぐ全てから解放される······。



『私にはがある』



「あっ!」



 と正気になりナイフを落とす。



「ハァ······ハァ······プ、レナ······王女?」



『なのに貴女はそんな事も考えず我々に口先だけ協力、協力などと』



「デナ······さん」地面に手を付ける。



『それが私のだっ!』



「······バイオレット······王女」



 運命にも彼女を止めたのは戦場で戦った者たちの言葉、



 流した涙を拭かずロベリーは立ち上がり目をつぶった。



 聞こえてくるのは自身の中のの声、



「言ったはずだ、貴様では無理だと、必要なのは······」



「姉さんではなく、貴女が死ぬべきだった、何故なら······」



「貴様が死のうが現実は変わらない。私には······」



 自身の中のプレナ、デナ、バイオレットがそう語りかけ、その幻影のような3人と自分の言葉が重なる。



······ですか······」



 そっと目を開くと涙は消え現実に戻っていた。


 落ち着くと再び目に入る果物ナイフを右手に取り、


「わたしはっ」


「おやめくださいロベリーさまぁぁぁー!」


 声を上げ急いで止めに向かうヤクナだが、



 バサッ、



 ロベリーは長いピンクの髪を切った。



 掴んでいた左手に切った髪を持ち崖へと投げると、



 ピンクの髪が宙に舞いまた海へと落ちていった。



 散っていく髪を見上げながら、



「私も······を、決めました」



 どこまでも青空を見通したような眼と淋しさを含んだ笑みでそうお墓に言い捨て、ロベリーがロベリーではなくロベリー王女として戻る事を意味をするランク城へと戻るのだった······。
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