〜クイーン·ザ·セレブレイド〜

ヒムネ

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プリンセス ―ショート―

オブスーン戦争『炎と氷』

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「女か」「女の子か」「心配だ」などの陰口。


 この国で初めて生まれた女の子がガーネットだった事もあり、最初は誰しも王国に赤ちゃんが誕生しビスカ中が喜んだのだが、初めての女の赤ちゃんという理由で、「不吉」「ビスカを滅ぼすかも知れない」国が危ないと煽る者から、「大丈夫なのか女で」「女では男ほど戦えまい」「もう一人産んでくだされば」


 勝手に喜び、また勝手に不安を覚え、勝手に貶す人。


 その声は途絶えず物心付いたときから、ふと騎士や兵士、または国民の会話からガーネットの耳へと入ってしまうこともあった。


 だからこそ、


 女であろうと結果を求め辛い訓練なども男に負けまいと努力してきた。


 そしてデル·サージとの争いの結果、当時のデル·サージの王女が死去。次はガーネットが15の歳、ビスカの王女とターキシムの王が亡くなってその年からガーネットは王女として玉座に座り、


「私はクイーン·ザ·セレブレイドになる」


 城中の者に宣言する。


 自身が教えられてきた宗教。覚えている程度で最初は興味は無かったが、男女差別を1人受けてきたガーネットにとっては『差別あるこの国をやり直す』という想いからクイーン·ザ·セレブレイドを独自に調べ『神の啓示』を受けるために戦う事を誓うのだった······。


「ぬあぁっ!」


 踏み込み剣を右上に上げロベリーの剣を弾く、


「くっ」


 ロベリーも肌で感じ始める。さっきまで押していたはずが、ガーネット王女から闘士が戻ったように、いや、さらに強まったように感じ、



「ロベリー、貴様には貴様の想いで戦っていよう。だがそれこちらも同じだぁぁーっ!」



 衝撃波など無いはずなのに感じるのはガーネットの強い想いが鎧を通過し肌で感じる炎な様な気迫。
 それでも逆にロベリーは冷たく氷のように目を鋭くさせ動きを読む。



 ガーネット王女の剣、私の左手側に横薙、その後フェイクを入れ右上からと思わせ突きで仕掛けてくる。



 ロベリーの読みは完璧だった。これまでガーネットと戦って動きを見て覚えたおかげ、



 横薙を両足で飛び避け、フェイクを入れてきたガーネットが突きに来る。それを左腕の盾で防ぐ、が、



 刹那の瞬間、目を大きく開くロベリー、それは突きが盾に当たる直前に止まり時差をずらして再度突くと、



 その剣を左脇を抜け鎧に掠る。



 しかしまだ続く、



 脇を抜けた右手の剣を即座に離し近づいてガーネットの右拳が見えた。ロベリーも右手の剣を捨て咄嗟に拳つかもうとした瞬間に、



 また拳は直前で止まり、



 無防備となったロベリーの右側からガーネットの左の拳がロベリーの顔が歪むほど強い力で右頬を殴った。


 すかさず気を逃さんとガーネットは、


「うおぉぉぉーっ!」



 右に、左と、ロベリーを殴るが3発目の右の拳を左腕でそらし、



 ロベリーの右の拳が顔に入った。



 さすがに痛みで後ろへと下がるガーネット、それでもすぐ剣を持ち直し斬りかかる。



 ロベリーも瞬時に剣を持ち直しガーネットに斬りかかった。



 ロベリーが先を読み、ならばとガーネットは気迫で直前に攻撃を止めて攻めると、今度はそれも含めた先読みを始めるロベリー。



 一歩も引かない、倒れない2人、その気持の中にあるもの、それは国を背負う王女としての想い······。



 早朝に起きた戦争から既に1時間が過ぎ太陽は変わらず昇るが、ランク城の荒野、ターキシム国境、ターキシム城下街の外周辺と続いている戦争。
 そんなランク城の荒野でランク軍と争うビスカ軍に亀裂が起きていた。


「貴様ら戦え、ターキシムの兵よ。今はお前らもビスカ軍なのだぞ!」


「我らあくまでもターキシム軍。レスタ王女の思いを持っている軍だ!」


 今はビスカの支配下でも我等はあくまでもターキシム軍と言い張る兵たち。
 その空きを本来ならば兵士としては狙うもののランク軍はロベリー王女の言葉をヤクナから聞かされたをそれぞれの騎士や兵士が頭にたたきいれていたためだった。


 さらにずっと影で命令をしていたビスカ城のボルド騎士団長にもターキシム国境方面で思わぬ足止めを食らう。


「貴様、何者だ、仮面の女っ!」





「ふざけるなっ、どけっ!」


 斬りかかるボルドの激しい剣を、全て見切って弾いていく可動面頬の女騎士。
 ボルドでも分かることはランク城側の人間という事、その証拠に他のランク兵と同じ甲冑ということからだがこんな強いヤツがまだランク城に居たとはと内心で驚いてもいた。


「激しい剣。だから空きがあるんだけど」


「くっ、これでは······」


 ボルドをうまく足止めしながら女騎士は思い願っていた。


 勝ってロベリー王女、と······。


 30分、40分とロベリーとガーネットの激しい戦いは、ロベリーは先を読み避けて攻める。それに対して彼女の先読みを上回る速さであくまでも攻めて仕掛けるガーネット。
 対象的な2人の攻防は致命傷には至らずこの調子でずっと戦い続けていたため流石に体力が衰えてくるもの。



「ハァ、ハァ、ハァ······」



「ハァ、ハァ······フフッ」



 ガーネットが笑みを浮かべる。この集中する中であえて笑みを浮かべた彼女に、何かあると睨み構えるロベリーに、



「ここまではやるとは、思わなかった」



「国を、国のためにもあなたを」



「だが勝つのは私だ」



「っ? そんなの」



「もうすぐ、我がビスカの第2軍が来る」



「なっ······」



 思わず下を向くロベリーは、


 やってしまった、と動揺し始める。


 いままでのロベリーが倒して来た王女達のように余力を残してやられては元も子もないとガーネットは時間差を置いて約2000人もの増援を一時間後にターキシム城に着くよう命令を下していた。



「これが策略というものだ」



 それと同時にここまで戦えるロベリーの集中力を削ぐためでもあり、結果、



「いくぞ」



 効力はあった。



 あれだけ氷のようにまるで空きのないロベリーだったが、溶かされる如く聞かされたこのあとの増援に攻めることまで頭が回らない。
 動揺している彼女を見て悪いなと思いつつもこれは戦争、相手の虚を付き続けたものが勝つのだ。


 今度こそロベリーを、と集中しだすガーネット、


 だがロベリーもこのガーネットとの戦いで読み続けた頭が冴え渡っており、妙だと思い始めた。


 と言った彼女の言葉、


 なのに何故なにも起こらない。


 戦っている兵士は先程と変わらない、いやかえって減っている。


 この感は都合よく考えている?


 違う、


 何故かは分からないがビスカ城の間で何かトラブルが起きて増援に来れないのかもと思った。楽観視は出来ないが······。


 
「くっ、何故このタイミングで、レンプル軍がっ!」



 ――



 それは西海岸沿いのレンプル城のベラ王女とその軍団2000人だった。



「この戦争、ビスカ城に勝たせるわけにはいかんっ」



「レンプルは、ランク城につく気かーっ!」


 昨夜聞かされたビスカ城とランク城の戦争、ベラは考えた末、どちらかに付くのではなくビスカの勝利を拒む事に決めたのだ。


「ふんっ!」


 豪快に振り回す大剣ツヴァイハンダーからは周りの敵兵を近づけず、また騎馬隊も避けるしかないと苦戦するビスカの第2軍。それは完全にガーネットを援軍で駆け付ける事は出来ない事を意味した。


「だめだっ、城を護るしかない!」


「だが増援の命令が」


「そうだが!」


 さらにはガーネット王女やボルド騎士団長など統率する者がいない事が動揺し、それが浮き彫りになり始める。


「はぁああっ」


「うわぁーっ」


「隊列の乱れか、よし、このまま進めっ」


「ベラ王女!」


 騎士兵士がベラの掛け声で意欲を燃やす中、一人の兵士が駆け寄り、ついさっき入った情報を伝えると、


「······ギトス城がか」


「はい、我々とほぼ近い時期に」


 いままで音沙汰のなかったギトス城のシリカ王女は既に『クイーン·ザ·セレブレイド宣言』していたが動きを見せなかった。だがついに沈黙を破り動き出し何を狙う、と思うベラだった······。
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