〜クイーン·ザ·セレブレイド〜

ヒムネ

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プリンセス ―ショート―

王子と貧困の女性

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「う~ん、痛っ」


 ターキシムの宿屋アクアン·ジエルのふかふかベッドで目を覚ましたロベリーに両腕を上げると全身に軽い痛みが、ガーネット王女に殴られた所々が触ると特に痛くてまるでゲンコツされているよう。


「はぁ~······あとすこし」


 でも、あとすこし、あと少しと呪文のようにぶつぶつと自身に言い聞かせて着替えていく。


「うんしょ」と鎧を被り、剣をベルトの左に引っ掛けた。すると地面に日の光が指しているのが目に入り、顔を上げ青空の方を見上げた。


「きもち、いいかなぁ」


 気になり日の明かりの方に歩き、目を閉じ全身に浴びていく。


 無心でただ浴びていると、平和だった世界を思い出しまた父に怒られたことや兵たちと話した小さなことなど、楽しいかった記憶がよみがえる。もちろん、バーナやチュリンとの想い出も······。


 外に出ようと宿のオーナーの女性に感謝をするが、相変わらず怖がられたままで下を向き落ち込む。それでも仕方ないと顔を上げターキシム城下街出ると、


「ロベリー王女、おはようございます」


「外で待っていたのですね。みなさん、おはようございます」


 すかさずヤクナは昨日の戦いによる身体の調子を訊いてみる。


「······全身に痛みを感じますが、耐えられないほどではありませんので御心配なく」


 それとゴルドバ城のチェコから受け取った言葉も伝えると、



って、ほんとうですか?」



 はい、と笑顔でヤクナは頷くも素直には喜べなかった。チェコの姉のベルディ王女を殺した人に対してそんな言葉は出ない、なのにと考え込む姿を見たヤクナは、

「ロベリー王女、考えるのは後にして今は」


「そうですね。では、我々はこれからレンプル城に向かいます!」


 思うことを今は棚に置き、ロベリー率いるランク軍の負傷した兵は国に返しその穴埋めをターキシムの騎士兵士たち約1000人加え合計2000人でレンプル城に向け馬が駆け走る······。



 ――そんなランク軍がやって来ることをレンプル城でも知らされベラ王女は、


「そうか、とうとうここまで······」


「我々を······襲うと思うかい? ベラ」


 今までの話では4人の王女を殺している。これはつまり妻が殺されると改めて不安な夫で王のペレが聞いてみても黙するベラ、もはや4国を手中に収めたランク城がその気になれば約2万以上の兵を投入し武力による支配も不可能では無いと誰もが思うところであった。


 黙っているベラも簡単には言葉に出来ないと妻を気遣うペレが変わりに、


「······どれくらいの規模なんだい?」


「はっ、恐らく多く見積もっても3000人に満たないかと」


「え、そうなのかい?」


 どうしてか分からないが考えられる事は、あの大戦争でほぼほぼ兵を失った、と一安心するペレはベラの方を向き、


「これなら我が軍が全兵を投入すれば勝てるかも知れない!」


「ではっ、兵に戦闘準備をするよう向かい」



「まてっ!」



 兵士が返事をしようとしたら黙っていたベラは重い口を開いた。


って、ベラ、どうして」


「······考えが、決まったっ」

 
 目が鋭くなり緊張が走る騎士兵士たち、だがペレは動じることはなく彼女を信じて言う通りにする。そしてベラを見て不安どころか笑みを浮かべ安堵していたのだ。



 それは彼女は、妻は、強い女性だと知っているから·······。


 
 ――7年前ラバーグ城とレンプル城の争いで、


「母上ぇぇーっ!」


 チャロバ·ル·ペレ当時16才、鉱物による紛争で母を亡くし彼は生きる気力を失っていた。
 この時代は何かと、理由を付けては紛争することが当たり前だったためレンプルの鉱物に目を付けたラバーグ城の王が話を持ちかけ、こじれて争うこととなり母も戦場に出たことで殺されたのだ。


 戦争なのだから死ぬのは当たり前、そんなことは分かってはいても大好きだった母を失えば誰だって傷がつく。
 そんな彼は城下を歩き小石を蹴りながら、ただただ途方に暮れていた。


「はぁ、つまらないっ、生きてたってつまらなーいっ!」


 だだをこね、畑で顔を上げながら国民を護るために母は命を懸けていたのかと思っていた時に目が入る。
 おじいさんおばあさんの中に1人ダスティ·ピンクのロン毛で畑を耕す者が、身長も普通の男性かそれ以上で珍しいと眺めていたら、


「ベラッ、そっち耕したら今度は上に行くぞい」


「うん、わかった」


 当時18才のベラはお金がない貧困家族で生まれで王族や貴族からは遠い女性だった。
 目線に気がついたベラは明らかに装いが豪華で場違いな人が見ているとおばあさんに、


「おばあさん、あれ誰だろう?」


「んん、はて?」


 目の遠いおばあさんもぼやけて何かがいるとペレの方へと近づいて行くと、


「あんさん誰や?」


「えや、あの、私はこの国の王子で~」


「あれま、なぜに王子様が来ないな場所に?」


 軽く驚いているおばあさんが気になりベラも近づいて行く。


「おばあさん、彼は?」


「ベラ、こん人は王子様やて」


「え、王子って」


 たしかに、通りで派手な服装だと思ったベラは、


「はじめましてベラです。どうして王子様がここに?」


「ベラ······」


 近くで見ると腰巻きをして二の腕や太ももを出しているが筋肉は騎士たちにも負けないようだと感じるほど立派で逞しく思えた。


「あ~、ん~、いやなんとなく」


「散歩ですか」


「そうそう、散歩······はぁ~っ」


 何やら元気のない王子様と感じたが、たしか王女である母が亡くなったのを記事で観たことがあったためこの人かとベラは気づくが、


「王子様、ご察知しますが、残念ですがここにはあなたのような方がお気に召すものはございませんよ?」


「あ、ああぁ、そうみたいだね」


 見るからに広大な畑でそれしかほんとうに見当たらないし、彼女の手が目に入れば土まみれで汚れている。とても自分のような身分の上な者が足を踏み入れて良いところではないと感じて城へと戻る事にする······。


 あんな思いをしている国民もいるんだなと母の導きのような感じをしつつ戻ると面倒くさいことが、それはお見合い相手の話で、とてもとてもそんな気分では無い上に、会う人会う人貴族生まれに加え容姿もよく、礼儀も問題ない完璧な人ばかりだが何かが物足りない。


 そんな事が続いていた時いつも頭に浮かぶのは貧困生まれのベラ、ペレ王子も気になってはあの畑を散歩といいたまにはと訪れ始め、


「やぁ、ベラ、おばあさん。今日はどうだい?」


「王子様」


 週2回のペースで現れるペレ王子を次第に慣れていったおばあさんとベラ。
 

 そこで、


「いつもそこで見てるだけじゃ暇じゃろ、少しは手伝ってみるかい?」


「え、ぼ、ボクが?」


 ペレは興味はあったが汚すのは内心嫌であった。そのことに感づくベラは桑を止め呆れた目で、


「汚れたくないのなら別にやらなくてもいいんですよ王子様」


「えー······むむ~、こうなったらやけだっ!」


 彼女にそう言われてはと覚悟を決めたのか桑持ち上げて気合を出し手伝ったものの10分後、


「ゼェ、ゼェ······」


 手を止めてしまったペレ王子、ベラは溜息をしながら近づき、


「手、止まってますよ」


「あ、う、うん······ゼェ、ゼェ」


 仕方ないと休憩するように促すと「ベラもどうだい?」と言ってきて最初は断ったがおばあさんも「行ってきー」の言葉でしょうがなく近くの軽い木材で作った休憩所の椅子に座り休むことに。


「はぁ~」


 疲れはするものの陽光の下で畑仕事なんてやったことの無い彼にとっては新鮮だった。気分が澄んでいると、隣に座るベラは前を向いて遠くの山や雲を観ているのか黙って何も話さないので、


「あ、あの~、ベラ?」


「なんですか王子様」


 返しは相変わらず無表情で冷たく感じる声。


「きょ、今日はいい天気だね~」


「そうですね」


「う~ん······」


 うまく会話が弾まない事に頭をかくペレ王子、何かこう話を弾ませることは出来ないかと彼女の透明な目を、横顔を見ながら、


「ベラは~、その格好の服しかない、わけじゃないよね?」
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