炎のトワイライト・アイ〜二つの人格を持つ少年~

蒼河颯人

文字の大きさ
44 / 78
第三章 過ぎ去りし思い出(過去編)

第四十四話 崩壊の序曲

しおりを挟む
 ヨーク家の屋敷内。
 ランカスター家の屋敷といい勝負に広い。
 セフィロス、ルフス、ロセウスの三人は急ぎ足で駆け抜けていた。
 早くこの屋敷を脱出せねばならないことは分かっているが、慣れない場所な為右も左も良く分からない。
 動きがどうしても鈍くなる。
 
「身体はもう大丈夫か? セフィロス」
 
 ロセウスは自分の後ろから駆けてくるランカスター家現当主をちらと見遣った。
 
「ああ。君の“破力波”のお陰で、私にかけられてた奴等の術は完全に解けたようだ。本当に助かった。ありがとう」
 
 セフィロスは両腕を動かし、自由に動かせることを彼にアピールした。その隣でルフスは右左と視線を動かしている。
 
「先程来た道を元に戻ればここを何とか最短で抜け出せると思う。慣れないから戸惑うが」
 
「しかし君達はどうやって私の居場所が分かったのだ!? ここは初めてだろう? 私でさえも過去父の付き添いで一度来て以来。それも、こんな奥までは来なかったからほぼ初めてもいいところだ」
 
「それに関しては俺が説明してやる。走りながらで悪いが」
 
 ロセウスによると、セフィロスが攫われた時、急を知らせたのはウィリディスだった。犯人は黒い覆面を着けていた為顔の判別が出来ないが、おそらくジョージかパーキンだろうと思われる。こういうことを忠実に実行へと移すのは彼等しかいないからだ。
 
 彼が飛び去る方向を確認すると、ヨーク家の領地がある方向へ向かっているのは分かった。その時セフィロスの周りに微かだが青白い光が瞬いているのに彼女は気が付いたのだ。どうやら我々ランカスター家の者にしか見えない光のようだ。
 
 屋敷をマルロと彼の教え子達に任せ、五人でヨーク家の屋敷に向かった。現地に到着してからもその瞬きは消えずに見えた。まるでどんな壁でも通り抜けていくように、光は見えたのだ。不思議だ。
 ロセウス達はその光を見失うことはなかった。
 その光が突然動きを止め、燦然と輝きを増した。
 その後を追うように辿った先にセフィロスがいたということだった。
 
 (この首飾りのサファイアって、持ち主の居場所を知らせる力があったのか……)
 
 ある意味、父ヘンリーが自分を守ってくれたと言っても過言ではない。
 
 (父上……)
 
 鼻の奥がちくりと傷んだ。
 
 セフィロス達が階段を一気に下まで降りると、騒がしい音が鳴り響いていた。複数人が乱闘騒ぎを起している。その中でも一際目立つ三人の姿がサファイア・ブルーの瞳の中に飛び込んで来た。緑色のコート、紫色のコート、黄色のコートの三人が茶色のコートを羽織った集団に囲まれている。
 
「はああああああっっ!!」
 
 紫色のコートの裾を棚引かせたウィオラが両手から何本もの黒糸を吐き出している。
 彼女が得意とする暗器、黒紫糸だ。
 黒く煌めいた糸が弧を描き、獲物に巻き付いてはその身体を剪断していく。
 
「やぁ――っっ!!」
 
 ウィリディスは背後から黒い尖った爪のようなものを何本も伸ばし、四方八方で獲物を串刺しにしては長い足でふっ飛ばしている。
 
「ええい!!」
 
 赤銅色の髪を持つ少年は身体から黄色い光芒を放ち、獲物に向かって金色の雷を次々と落としていく。
 
 彼等は奮闘しているが、相手の数が一向に減る気配が何故かしない。逆に増えているような錯覚を覚えた。
 
「ウィリディス! ウィオラ! フラウム!!」
 
 ウィリディスがセフィロスの声に真っ先に反応し、表情が一瞬明るくなった。彼女の声を聞き、ウィオラとフラウムも三人が帰ってきたことに気付き、表情を和らげた。
 
「セフィロス!!」
 
「三人共良かったです」
 
 セフィロス達は敵を薙ぎ倒しつつ、ウィリディス達に加勢した。自分達の周りを囲む敵の数を見て背筋が寒くなった。屋敷内に収容出来る人数を明らかに超えている。
 
「一体ここは何人従者がいるんだ!?」
 
「良く分からないけど、倒しても倒してもまたやって来るんです」
  
「きりがないのよ。……私ちょっと疲れてきたわ」
 
 ウィオラの雰囲気がやや疲労感を帯びている。屋敷に突入してルフス達がセフィロスを救出して戻ってくるまでずっと戦っていたのだから、無理もない。フラウムは少し咳き込んでいる。
 
 そこへ大きなどら声が響いてきた。
 
「我々から逃れられると思ったか! ランカスター家の者達よ」
 
 セフィロス達が声の主の方に顔を動かすと、茶色のコートを来た男がゆったりと近付いて来た。ランバートと似た大柄な男の出現にヨーク家の従者達も動きをぴたりと止めている。
 その男はヨーク家現当主、リチャード・ヨークだった。その後ろには、腹に手をあて、顔色がやや悪いランバート・ヨークも立っていた。
 
「こんな形で再び相見えることになるとは思わなかったな。セフィロス・ランカスター」
 
「リチャード・ヨーク……!」
 
「そんなに痛めつけられるのが好きとは意外だ。お前は父君とはタイプが異なるようだ」
 
「一体何が言いたいのですか!?」
 
「お前達の屋敷は今頃廃墟となっておる筈だ」
 
「……何ですって……!?」
 
「マルロという奴がシンガリだったようだがな。我が手下が奴を仕留め、他の奴等を仕留め、火を放っておる。もう戻る場所などない。お前達には我が配下に降るか死ぬかの選択肢しか残っておらぬ」
 
「嘘だ!! 勝手を言うな!!」
 
「ではこれを見るが良いぞ」
 
 リチャードが手をかざすと、セフィロス達の目の前に燃え上がる屋敷の画像が出現した。それは見間違える筈のない、彼等の屋敷だった。何百年もの間先祖代々守り続けられてきた建物が、赤々とした火の海に飲み込まれている。
 
「何てこと……!!」
 
 フラウムの右手がわなわなと震えている。
 
 ランバートの横に立つ黒い覆面を被った男がセフィロス達に向かって右手を突き出した。その手に握られているのは黒い煤のついたオリーブ・グリーン色をした上着だった。ランカスター家を示す赤薔薇を中心とした小さな紋章が袖元に縫い付けられている。見間違えるはずのない、マルロの上着だった。
 
「……!!」
 
 セフィロスは言葉が出なかった。
 その上着を凝視したまま、ごくりと唾を飲み込む。
 そう簡単に倒れる筈のない屈強の戦士でもあったあのマルロが……何故……!?
 
「最後の最後までしぶとく手強い奴だったが、この剣で一突きしたら呆気なく灰化した。まさかお前達がこの剣の前には逆らえんとは意外だった」
 
 黒い覆面の男は感情のない声で言い放った。そして腰に帯びていた剣を黒い鞘ごと外し、ランバートに渡した。
 
「あれが気になるか? まあいい。突然我々が急に力を得たのか不明のままでは気持ちが悪いだろうから、私が教えてやる」 
 
 その剣の鞘には、ヨーク家を示す白薔薇を中心とした紋章が彫刻されていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~

ぐうのすけ
ファンタジー
赤目達也(アカメタツヤ)は少女を育てる為に冒険者を辞めた。 そして時が流れ少女が高校の寮に住む事になり冒険者に復帰した。 30代になった達也は更なる力を手に入れておりバズり散らかす。 カクヨムで先行投稿中 タイトル名が少し違います。 魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は黒魔法と白魔法を覚え世界にただ1人のトリプルジョブに至る~ https://kakuyomu.jp/works/16818093076031328255

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

リストラされた42歳、確率の向こう側へ。~なぜか俺の選択肢がすべて正解になる件~

RIU
ファンタジー
「君には今月いっぱいで席を空けてもらいたい」 42歳、独身、社畜。会社のために尽くしてきた柏木誠は、理不尽な理由でリストラされた。 絶望の中、雨の神社で野良猫を助けた彼は、不思議な光と共に【確率固定】という異能――「無意識に正解を選び続ける豪運」を手に入れる。 試しに買った宝くじは10億円当選。 復讐心に燃える元上司を袖にし、元天才投資家の美女をパートナーに迎えた柏木は、その豪運で現代社会を無双していく。 「俺の選択に間違いはない。なぜなら、確率の方が俺に合わせるからだ」 枯れたおじさんが資産と余裕を手に入れ、美女たちに頼られながら、第2の人生を謳歌する痛快サクセスストーリー!

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

処理中です...