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序章 脱走者
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ランデヴェネスト牢獄──
カンペルロ王国の都にある、ランデヴェネスト城の敷地内に、その建物はあった。
その建物は国事犯の収容所であり、主に王政を批判した学者などが収容されている。ただ、その大半が誠意をもって主君に諫言した結果、身分を剥奪され投獄された臣下達だった。
カンペルロ王国は現在、ほぼ専制政治が敷かれている状態である。
現カンペルロ王であるアエス・フォード王の周りには、佞臣が侍り、これを是正する者がいなかった。
彼らにも生活がある。
養う家族を路頭に迷わせる訳にはいかない。
世直しのためと名乗り出ては連行されてゆく、元同僚達を見て見ぬ振りをする者達ばかりだった。
この牢獄は、人間だけを収容するわけではなく、先日占領した土地に住んでいた人魚族をも収容していた。
アルモリカ王国──
主に人魚族が治める国で、カンペルロ王国から見て南に位置する国だ。
温暖な気候で、広大な領土を所有しており、肥沃な土地である。
農産物が豊富に採れ、畜産も盛んに行えるだろうと見込んだアエス王が、国益を増やさんと強引に手を伸ばしたのだ。
宣戦布告もせず突然侵攻したことにより、アルモリカ王国は抵抗も虚しく、あっという間にカンペルロ王国の占領下に置かれてしまった。
王と王妃は殺され、その他の人魚達は奴隷として連行され、歯向かうものは容赦なくその場で殺された。このままでは、過去に占領された各元王国と同じように、属国化への道まっしぐらである。
先王であったグラドロン・フォード。
彼は温厚な性格で、他国と友好的な外交を重んじており、人魚の国ともその例外ではなかった。
彼が急逝した後、即位した現国王は先王とは正反対の暴君だった。
侵攻によって隣国を領地ごと略奪し、属国化した国民を奴隷にし、搾取し続けたのだ。
現国王となり、カンペルロ王国は富と快楽の溢れる強大な国となったが、まさに快楽的繁栄と言っても良かった──一部の者にとっては。
先王を偲ぶ者は多くいたが、顔に出せば謀反の意ありと、殺されかねない。
まるで罪人のように連れて行かれる人魚達に、同情する者もいたが、触らぬ神に祟りなし状態だ。
こうして、戦々恐々とした日々が過ぎて行った。
⚔ ⚔ ⚔
そんなある日のこと。
ランデヴェネスト牢獄で異変が起きた。
一人、脱獄者が出たのだ。
何者かによって鉄格子が開かれ、枷代わりの黒い腕輪が一つ落ちていたのを、監視していた兵が発見した。
少しの間目を離したすきに、消えるようにいなくなったようだ。
「一人逃げ出したぞ!! 探し出せ!!」
「手負いだから、まだそんなに遠くまで行っていない筈だ」
「奴を必ず連れ戻さねば。アルモリカ王家最後の生き残りだからな……!!」
血相を変えた兵士達が追手を差し向けた。
真っ暗闇の中に姿を消していった、一人の人魚の後を追う為に──
カンペルロ王国の都にある、ランデヴェネスト城の敷地内に、その建物はあった。
その建物は国事犯の収容所であり、主に王政を批判した学者などが収容されている。ただ、その大半が誠意をもって主君に諫言した結果、身分を剥奪され投獄された臣下達だった。
カンペルロ王国は現在、ほぼ専制政治が敷かれている状態である。
現カンペルロ王であるアエス・フォード王の周りには、佞臣が侍り、これを是正する者がいなかった。
彼らにも生活がある。
養う家族を路頭に迷わせる訳にはいかない。
世直しのためと名乗り出ては連行されてゆく、元同僚達を見て見ぬ振りをする者達ばかりだった。
この牢獄は、人間だけを収容するわけではなく、先日占領した土地に住んでいた人魚族をも収容していた。
アルモリカ王国──
主に人魚族が治める国で、カンペルロ王国から見て南に位置する国だ。
温暖な気候で、広大な領土を所有しており、肥沃な土地である。
農産物が豊富に採れ、畜産も盛んに行えるだろうと見込んだアエス王が、国益を増やさんと強引に手を伸ばしたのだ。
宣戦布告もせず突然侵攻したことにより、アルモリカ王国は抵抗も虚しく、あっという間にカンペルロ王国の占領下に置かれてしまった。
王と王妃は殺され、その他の人魚達は奴隷として連行され、歯向かうものは容赦なくその場で殺された。このままでは、過去に占領された各元王国と同じように、属国化への道まっしぐらである。
先王であったグラドロン・フォード。
彼は温厚な性格で、他国と友好的な外交を重んじており、人魚の国ともその例外ではなかった。
彼が急逝した後、即位した現国王は先王とは正反対の暴君だった。
侵攻によって隣国を領地ごと略奪し、属国化した国民を奴隷にし、搾取し続けたのだ。
現国王となり、カンペルロ王国は富と快楽の溢れる強大な国となったが、まさに快楽的繁栄と言っても良かった──一部の者にとっては。
先王を偲ぶ者は多くいたが、顔に出せば謀反の意ありと、殺されかねない。
まるで罪人のように連れて行かれる人魚達に、同情する者もいたが、触らぬ神に祟りなし状態だ。
こうして、戦々恐々とした日々が過ぎて行った。
⚔ ⚔ ⚔
そんなある日のこと。
ランデヴェネスト牢獄で異変が起きた。
一人、脱獄者が出たのだ。
何者かによって鉄格子が開かれ、枷代わりの黒い腕輪が一つ落ちていたのを、監視していた兵が発見した。
少しの間目を離したすきに、消えるようにいなくなったようだ。
「一人逃げ出したぞ!! 探し出せ!!」
「手負いだから、まだそんなに遠くまで行っていない筈だ」
「奴を必ず連れ戻さねば。アルモリカ王家最後の生き残りだからな……!!」
血相を変えた兵士達が追手を差し向けた。
真っ暗闇の中に姿を消していった、一人の人魚の後を追う為に──
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