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第五章 革命の時
第四十四話 変貌した国
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カンペルロ王国の前王であるグラドロン・フォードは、人格的にも優れた王だった。彼の善政によって永い間カンペルロは戦争を起こすことなく繁栄していた。
しかし、後継者の男児に恵まれなかったことだけが唯一の悩みだった。王妃は身体が弱く、娘を一人産んだ後に子供を望めない身体になってしまったのだ。真面目だった彼は第二夫人を持つことさえなかった。彼は婿をとり、娘であるマルグヴェンと結婚させ、後継者として育てることにしたのだ。
カンペルロでは男子にしか王位継承権がなく、王女しかいない場合は婿をとって継承させるのが伝統として決まっていたためだ。そのしきたりがなければ、きっとマルグヴェンを女王として教育しただろう。
アエスは公爵家出身の貴族であり、野心家であったため何とかして王位につきたいと思っていた。フォード家の事情を知っていた彼はあの手この手で自分を売り込み、何とかマルグヴェンとの結婚へと漕ぎ着けた。正式な後継者として引き継ぎの儀式を滞りなく澄ませた後、かつてから計画していた通り、グラドロンをひっそりと暗殺した。
少しずつ分からないように毒を盛り、グラドロンが自然に弱っていくように仕向けたのだ。傍から見れば病気で死んだとみてもおかしくない位、王はあまりにも自然過ぎる死に方だった。
それまで平穏だった国内が徐々に乱れ始めたのはそこからだった。
アエスは国王として就任するや否や、前国王の后を始め、グラドロンの関係者をことごとく処刑した。己の血筋と無関係な者達を排除するのが目的だった。それで自分の寝首をかいたり、足を引っ張ろうとする者達といった芽を早々に摘み取っておいたのだ。
彼は全世界を自分の支配下に置くことしか頭になく、手始めとして弱小の国を侵攻し、略奪しては己の領土を強引に広げていった。無理な遠征や公共事業を多発させていては、財源はあっという間に底をつく。そこで財政がひっ迫すると、罪もない住民を裁判にかけては牢獄へと放り込み、その財産を没収したのだ。街に住むカンペルロ王国の国民達は、いつ自分達が殺されるか分からず、日々怯えた毎日を過ごした。
アエスは欲深く放蕩な男であった。マルグヴェンがいるにも関わらず、彼のしとねには毎日別の女がいるという有様だ。毎晩祝宴を開き、見目の良い女がいると例え家臣の妻だろうと誘惑しては一夜をともにし、飽きれば牢へと放り込んだ。その放蕩振りは目に余るものがある。最初諫臣がその暴虐非道ぶりを見かね、幾度となく諫言し王に改心するよう努めたが、全く耳を貸そうとはせず、それどころか反逆の意ありと牢につないでは殺してしま有様だった。
アエスはマルグヴェンとの間に一子をもうけていた。王家が長く待ち望んだ男児だった。子供はゲノルと名付けられ、すくすくと育っていった。
その王妃マルグヴェンはというと、既に亡き人だった。些細な諍いが発生したとき、それをきっかけに反逆の意ありと無理矢理牢へと押し込まれ、失意の内に死んでしまったのだ。ゲノルがまだ八歳になったばかりの時だった。
意見するなら反逆者の烙印をおし、ランデヴェネスト牢獄に閉じ込め、でっち上げては死刑にする。その繰り返しの結果、ランデヴェネスト城には佞臣しか残らず、カンペルロ王国は風通しが一切ない、専制君主状態となってしまった。
国民は理不尽に罰せられるのを恐れ、口には出さないものの、誰か国内の状況を好転させる者が現れて欲しいとずっと願い続けていた。
しかし、後継者の男児に恵まれなかったことだけが唯一の悩みだった。王妃は身体が弱く、娘を一人産んだ後に子供を望めない身体になってしまったのだ。真面目だった彼は第二夫人を持つことさえなかった。彼は婿をとり、娘であるマルグヴェンと結婚させ、後継者として育てることにしたのだ。
カンペルロでは男子にしか王位継承権がなく、王女しかいない場合は婿をとって継承させるのが伝統として決まっていたためだ。そのしきたりがなければ、きっとマルグヴェンを女王として教育しただろう。
アエスは公爵家出身の貴族であり、野心家であったため何とかして王位につきたいと思っていた。フォード家の事情を知っていた彼はあの手この手で自分を売り込み、何とかマルグヴェンとの結婚へと漕ぎ着けた。正式な後継者として引き継ぎの儀式を滞りなく澄ませた後、かつてから計画していた通り、グラドロンをひっそりと暗殺した。
少しずつ分からないように毒を盛り、グラドロンが自然に弱っていくように仕向けたのだ。傍から見れば病気で死んだとみてもおかしくない位、王はあまりにも自然過ぎる死に方だった。
それまで平穏だった国内が徐々に乱れ始めたのはそこからだった。
アエスは国王として就任するや否や、前国王の后を始め、グラドロンの関係者をことごとく処刑した。己の血筋と無関係な者達を排除するのが目的だった。それで自分の寝首をかいたり、足を引っ張ろうとする者達といった芽を早々に摘み取っておいたのだ。
彼は全世界を自分の支配下に置くことしか頭になく、手始めとして弱小の国を侵攻し、略奪しては己の領土を強引に広げていった。無理な遠征や公共事業を多発させていては、財源はあっという間に底をつく。そこで財政がひっ迫すると、罪もない住民を裁判にかけては牢獄へと放り込み、その財産を没収したのだ。街に住むカンペルロ王国の国民達は、いつ自分達が殺されるか分からず、日々怯えた毎日を過ごした。
アエスは欲深く放蕩な男であった。マルグヴェンがいるにも関わらず、彼のしとねには毎日別の女がいるという有様だ。毎晩祝宴を開き、見目の良い女がいると例え家臣の妻だろうと誘惑しては一夜をともにし、飽きれば牢へと放り込んだ。その放蕩振りは目に余るものがある。最初諫臣がその暴虐非道ぶりを見かね、幾度となく諫言し王に改心するよう努めたが、全く耳を貸そうとはせず、それどころか反逆の意ありと牢につないでは殺してしま有様だった。
アエスはマルグヴェンとの間に一子をもうけていた。王家が長く待ち望んだ男児だった。子供はゲノルと名付けられ、すくすくと育っていった。
その王妃マルグヴェンはというと、既に亡き人だった。些細な諍いが発生したとき、それをきっかけに反逆の意ありと無理矢理牢へと押し込まれ、失意の内に死んでしまったのだ。ゲノルがまだ八歳になったばかりの時だった。
意見するなら反逆者の烙印をおし、ランデヴェネスト牢獄に閉じ込め、でっち上げては死刑にする。その繰り返しの結果、ランデヴェネスト城には佞臣しか残らず、カンペルロ王国は風通しが一切ない、専制君主状態となってしまった。
国民は理不尽に罰せられるのを恐れ、口には出さないものの、誰か国内の状況を好転させる者が現れて欲しいとずっと願い続けていた。
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