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第一話
願い事ひとつ
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駿美水菜、高校一年生。
剣や魔法が大好きな少女。
日頃から、そんな夢のような世界に行けたらいいなと考えている。
日々を現実逃避をして、妄想にふけっていた。
そんなある日、近くの川を何の気なしに歩いていると、川の中をバチャバチャと動くものを見つける。
魚かな?と、目をこらすと、一匹の子猫であった。そこは、深さ一メートルはある川であった。
水菜は、慌てた。
(子猫が、溺れている)
助けなくちゃ!
水菜は、何を思ったか、考えなかったか、川に身を躍らせた。
ザバン、鞄を放り投げると、学生服のまま飛び込んでいた。
なんとか、子猫を抱きかかえ、岸辺を見る水菜。
しまった!と、思った。
そう、水菜は、カナヅチであった。
今度は、自分がバチャバチャする。
ゲホッゲホッ、水を飲み込んでしまった。足を着こうにも、流れが速い上に、底がヌルヌルして、立ち上がれない。
苦しい。意識が遠のいていく。
目の前が、暗くなるのを感じた。
ゆっくりと、闇の底に落ちていった。
・・
どのくらい、時間が過ぎただろう。
水菜は、岸辺に打ち上げられていた。
(あれ、確か私、溺れてたよね。助かったんだ)
体を起こし、周囲を見る。
全身ずぶ濡れで、へたり込む。
しばらく、何も思いつかないでいる。
「おい、大丈夫かにゃ」
誰かが、声をかける。
声の方を見るが誰もいない。おかしいなと、頭をポリポリする。
「ここだにゃ」
声が下の方から聞こえたので、視線を落とす。
さきほどの子猫が立っていた。
「ああ、さっきの子猫ちゃん」
二本足で立って、前脚を舐めては、顔を洗っている。
夢でも見てるのだろうと、何の不思議もなかった。
「大丈夫かにゃ、と聞いている」
うんと、うなずく水菜。
「大丈夫だよ」
頭が朦朧としていて、夢のような気分であった。
すると、子猫は、二本の後ろ足を前に放り出して、チャカリと水菜の横に座った。
「お前、バカだにゃ」
「いきなり失礼ね~、あなたが溺れてたから助けようとしたのに、その言い草はないわよね」
子猫は、爪でヒゲの辺りをポリポリとする。
「あ、あれは、泳ぎの練習をしていただけだにゃ」
水菜は、横目で子猫を見ると
「うそだ~。あっぷあっぷしてたよ。あれは」
「バカなこと言うにゃ、俺は泳ぎは得意なのにゃ」
水菜は、子猫の首の後ろを掴むと、川に向かって落とそうと持ち上げる。
「にゃ、にゃにをする」
ジタバタする子猫。
「手を離すから泳いで見せて」
「わわわ、わかったにゃ。うそ、うそだにゃ。泳げないのにゃ」
地面に子猫を下ろす水菜。
「そうやって、最初から素直に認めればいいのよ」
「ふう・・.しかし、お前、鬼だにゃ、やることがえげつないのにゃ」
水菜が、子猫の後ろを掴もうと手を伸ばす。
「うそだにゃ、冗談だにゃ」
「そうそう、素直でよろしい」
子猫は、落ち着こうと、手や足を舐め始める。
「ところで、子猫ちゃん、名前は?」
「ああ、にゃめ郎だにゃ」
「なめろう?あの叩き鯵の?」
「違うにゃ、にゃめ郎にゃ」
「わかったわ、なめろう。私は、水菜。ミズナだよ。よろしくね」
「ちっとも、わかってにゃいにゃ、にゃめ郎って言ってるのにゃ」
(そこは、にゃをなに置き換えんでも、いいのに)
なめろうは、思った。
「ところで、なめろう。ここは、どこなの?」
首を傾げるなめろう。
「どこって、ここは、ココにゃ」
「人のこと、バカにしてる?」
なめろうの、首後ろに手を伸ばす水菜。
「ウソじゃにゃいにゃ、ここはココにゃ」
横目で、なめろうを見る水菜。
「じゃあ、聞くね。ここがココなら、あっちは?」
川の向こう側を指さす水菜。
「ああ、あっちは、コッチだにゃ」
ん?となりながら、反対側を指差して
「じゃあ、こっちは?」
「こっちは、アッチにゃ」
ジィッと、なめろうを覗き込む水菜。
「やっぱ、人のこと、バカにしてるよね?」
なめろうは、立ち上がり両前脚を腰に当てると
「バカににゃど、しとらんにゃ」
水菜は、上目使いで、口元に指を置く。
ん~と、頭を整理し始める水菜。
何やら、考えている。
「お前、頭悪いのにゃ」
水菜の手がなめろうの首後ろに伸びる。
「じょ、冗談だにゃ」
しきりに、前脚を舐めては顔を洗うなめろう。
「まあ、ニャンにしても、助けてくれようとしたのにゃ、礼をしにゃいとにゃ」
ん?と、水菜は、なめろうを見る。
「礼?」
「そうだにゃ、にゃんでも、一つ叶えてやるにゃ」
「なんでも?」
うんうんとするなめろう。
ん~っと、腕を組んで、考え込む水菜。
あっと、ひらめく水菜。
「じゃあさ、打出小槌が、ほしいな」
ニヒッと、する水菜。
「うちでのこづち?」
「やっぱり、無理?」
「そんにゃもので、いいのにゃ?簡単にゃ」
なめろうは、手招きを始めた。
ボフッと、煙が出て小さな、指でつまむほどの、小槌が出てきた。
「ちっちゃ」
「このほうが、持ち歩きにちょうどいいにゃ」
「まあ、そうだけど」
小槌を水菜に渡すと、なめろうは立ち上がった。
「さて、俺は行くにゃ」
「え?待ってよ。私は、どうするのよ?」
ニヤリとするなめろう。
「そういうときの、小槌にゃ」
「ええ、説明書とかないわけ?」
なめろうは、肩をすくめて見せる。
「そんにゃもの、にゃいのにゃ。あっ、お願いするときは、正確にわかるように頼むのにゃ」
「ええって、それだけ?」
前脚を振るなめろう。
「じゃあにゃ」
ボフン!煙と共に消えてしまった。
「待ってよ。使い方、教わってないし・・・」
途方に暮れる水菜。
「えい、物は試しね」
ちっちゃな、小槌を指先でつまむと
「打出小槌よ。私を私の世界の元いた川岸に帰してちょうだい」
言いながら、シャンシャンと、振ってみた。
水菜は、ボフン!と、その場から消えた。
・・
気がつくと、飛び込んだ川岸に、座り込んでいた。
「戻ってきた?」
すぐ近くに、鞄が落ちているのを見つけ、それを拾い上げる。
「夢だったのかな・・・」
手の中に、何かを持っているのに気づく水菜。
開くとそこには、ちっちゃな小槌があった。
剣や魔法が大好きな少女。
日頃から、そんな夢のような世界に行けたらいいなと考えている。
日々を現実逃避をして、妄想にふけっていた。
そんなある日、近くの川を何の気なしに歩いていると、川の中をバチャバチャと動くものを見つける。
魚かな?と、目をこらすと、一匹の子猫であった。そこは、深さ一メートルはある川であった。
水菜は、慌てた。
(子猫が、溺れている)
助けなくちゃ!
水菜は、何を思ったか、考えなかったか、川に身を躍らせた。
ザバン、鞄を放り投げると、学生服のまま飛び込んでいた。
なんとか、子猫を抱きかかえ、岸辺を見る水菜。
しまった!と、思った。
そう、水菜は、カナヅチであった。
今度は、自分がバチャバチャする。
ゲホッゲホッ、水を飲み込んでしまった。足を着こうにも、流れが速い上に、底がヌルヌルして、立ち上がれない。
苦しい。意識が遠のいていく。
目の前が、暗くなるのを感じた。
ゆっくりと、闇の底に落ちていった。
・・
どのくらい、時間が過ぎただろう。
水菜は、岸辺に打ち上げられていた。
(あれ、確か私、溺れてたよね。助かったんだ)
体を起こし、周囲を見る。
全身ずぶ濡れで、へたり込む。
しばらく、何も思いつかないでいる。
「おい、大丈夫かにゃ」
誰かが、声をかける。
声の方を見るが誰もいない。おかしいなと、頭をポリポリする。
「ここだにゃ」
声が下の方から聞こえたので、視線を落とす。
さきほどの子猫が立っていた。
「ああ、さっきの子猫ちゃん」
二本足で立って、前脚を舐めては、顔を洗っている。
夢でも見てるのだろうと、何の不思議もなかった。
「大丈夫かにゃ、と聞いている」
うんと、うなずく水菜。
「大丈夫だよ」
頭が朦朧としていて、夢のような気分であった。
すると、子猫は、二本の後ろ足を前に放り出して、チャカリと水菜の横に座った。
「お前、バカだにゃ」
「いきなり失礼ね~、あなたが溺れてたから助けようとしたのに、その言い草はないわよね」
子猫は、爪でヒゲの辺りをポリポリとする。
「あ、あれは、泳ぎの練習をしていただけだにゃ」
水菜は、横目で子猫を見ると
「うそだ~。あっぷあっぷしてたよ。あれは」
「バカなこと言うにゃ、俺は泳ぎは得意なのにゃ」
水菜は、子猫の首の後ろを掴むと、川に向かって落とそうと持ち上げる。
「にゃ、にゃにをする」
ジタバタする子猫。
「手を離すから泳いで見せて」
「わわわ、わかったにゃ。うそ、うそだにゃ。泳げないのにゃ」
地面に子猫を下ろす水菜。
「そうやって、最初から素直に認めればいいのよ」
「ふう・・.しかし、お前、鬼だにゃ、やることがえげつないのにゃ」
水菜が、子猫の後ろを掴もうと手を伸ばす。
「うそだにゃ、冗談だにゃ」
「そうそう、素直でよろしい」
子猫は、落ち着こうと、手や足を舐め始める。
「ところで、子猫ちゃん、名前は?」
「ああ、にゃめ郎だにゃ」
「なめろう?あの叩き鯵の?」
「違うにゃ、にゃめ郎にゃ」
「わかったわ、なめろう。私は、水菜。ミズナだよ。よろしくね」
「ちっとも、わかってにゃいにゃ、にゃめ郎って言ってるのにゃ」
(そこは、にゃをなに置き換えんでも、いいのに)
なめろうは、思った。
「ところで、なめろう。ここは、どこなの?」
首を傾げるなめろう。
「どこって、ここは、ココにゃ」
「人のこと、バカにしてる?」
なめろうの、首後ろに手を伸ばす水菜。
「ウソじゃにゃいにゃ、ここはココにゃ」
横目で、なめろうを見る水菜。
「じゃあ、聞くね。ここがココなら、あっちは?」
川の向こう側を指さす水菜。
「ああ、あっちは、コッチだにゃ」
ん?となりながら、反対側を指差して
「じゃあ、こっちは?」
「こっちは、アッチにゃ」
ジィッと、なめろうを覗き込む水菜。
「やっぱ、人のこと、バカにしてるよね?」
なめろうは、立ち上がり両前脚を腰に当てると
「バカににゃど、しとらんにゃ」
水菜は、上目使いで、口元に指を置く。
ん~と、頭を整理し始める水菜。
何やら、考えている。
「お前、頭悪いのにゃ」
水菜の手がなめろうの首後ろに伸びる。
「じょ、冗談だにゃ」
しきりに、前脚を舐めては顔を洗うなめろう。
「まあ、ニャンにしても、助けてくれようとしたのにゃ、礼をしにゃいとにゃ」
ん?と、水菜は、なめろうを見る。
「礼?」
「そうだにゃ、にゃんでも、一つ叶えてやるにゃ」
「なんでも?」
うんうんとするなめろう。
ん~っと、腕を組んで、考え込む水菜。
あっと、ひらめく水菜。
「じゃあさ、打出小槌が、ほしいな」
ニヒッと、する水菜。
「うちでのこづち?」
「やっぱり、無理?」
「そんにゃもので、いいのにゃ?簡単にゃ」
なめろうは、手招きを始めた。
ボフッと、煙が出て小さな、指でつまむほどの、小槌が出てきた。
「ちっちゃ」
「このほうが、持ち歩きにちょうどいいにゃ」
「まあ、そうだけど」
小槌を水菜に渡すと、なめろうは立ち上がった。
「さて、俺は行くにゃ」
「え?待ってよ。私は、どうするのよ?」
ニヤリとするなめろう。
「そういうときの、小槌にゃ」
「ええ、説明書とかないわけ?」
なめろうは、肩をすくめて見せる。
「そんにゃもの、にゃいのにゃ。あっ、お願いするときは、正確にわかるように頼むのにゃ」
「ええって、それだけ?」
前脚を振るなめろう。
「じゃあにゃ」
ボフン!煙と共に消えてしまった。
「待ってよ。使い方、教わってないし・・・」
途方に暮れる水菜。
「えい、物は試しね」
ちっちゃな、小槌を指先でつまむと
「打出小槌よ。私を私の世界の元いた川岸に帰してちょうだい」
言いながら、シャンシャンと、振ってみた。
水菜は、ボフン!と、その場から消えた。
・・
気がつくと、飛び込んだ川岸に、座り込んでいた。
「戻ってきた?」
すぐ近くに、鞄が落ちているのを見つけ、それを拾い上げる。
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