蜃気楼の向こう側

貴林

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5 ナミリアの宿

ナミリアと忍

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裏世界 昼前

ナミリアの宿近くの遺跡
すぐると忍は、手を取り合って姿を現した。
「ほお、ここが裏の世界ですか。なんとも、異国風な日本といったところですかな」
俊が、いつになくはしゃいでいる。
「この先だよ。早く早く」
忍を押して、急かす俊。
「あははは、慌てなくても逃げるものではないですぞ」
ナミリアの宿が、見える所まで来た二人。
「あそこだよ、シノ。早くったら」
不意に俊が立ち止まる。
ぶつかりそうになる忍。
「い、如何されましたかな?」
鍛冶場を見る俊。そこに見慣れない男たちの姿があった。
目を凝らす俊。
いや、どこかで見た顔があった。
はたと俊は、ナミリアが剣を叩き壊した時の男の姿を思い出していた。
「あの時の・・・」
背負った弓を取ると矢を引いた。
「動かないで」
何やら物色している一人の男に矢を向ける俊。
えっと、振り向く男は、驚いて尻餅をつく。
その弾みで、作業台の工具がガチャガチャと音を立てて落ちる。
「おいおい、何事だい?」
扉が開くと、ナミリアが姿を現した。
その姿を見た俊は、ホッとしたのか矢を持つ手が緩んでしまう。
ビュンと音を立てて、男の近くに矢が突き立つ。
ひいと、怯える男。
オロオロと、ナミリアが俊に近づく。
「ス、スグルかい?」
懐かしい顔を見て、思わず笑みが溢れる俊。
「ただいま。ナミリア」
ナミリアは、俊に駆け寄り抱きかかえると高々と持ち上げた。
「あははは、スグル。戻ったんだね」
ギュウッと、抱きしめるナミリア。
「く、苦しいよ」
ごめんよと、俊を地に下ろすナミリア。
視線を男達に向ける俊。
「この人たちは?」
「ああ、こいつらかい?」
皆がゾロゾロと、ナミリアの周りに集まる。
「おかえりなさい。お嬢様」
首を傾げる俊。
「お嬢様?」
頭を掻きながら、ナミリアが話し始める。
「いやね、スグルが帰ってから、こいつら、弟子にしてくれってね」
頭を垂れながら、一人の男
「あの後、俺ら改心しやしてね」
「姐御の気風の良さに惚れちまって」
「あの時の恩を返したい」
「で、弟子入りを申し出たわけですよ」
「はあ、なるほど・・・」
呆気に取られる俊。
ナミリアの視線が忍に移る。
「で、こちらさんは?」
内心では、こいつはと言いたい所だった。
言葉を選ぶ俊。
「表世界で、面倒見てもらってる忍さん」
忍が一歩前に出る。
「俊の義理の父です。どうぞ、よろしく」
「おお、父上殿か」
ナミリアが負けじと言う。
「どうも、はじめまして。スグルの義理の母です」
一瞬、二人の間で火花が散り、お互いが手を握りあう。
ギリギリと音が聞こえんばかりに、お互いがムキになっている。
作業台に二人揃って肘を乗せると、アームレスリング状態に。
ぐぬぬぬぬ・・・
意地の張り合いである。
俊は、呆れ顔をする。
弟子の男たちに手招きすると
「中でお茶でもどうですか?」
ゾロゾロと建物の中へと入っていった。
鍛冶場では、まだ意地の張り合いが続いている。
遠く、カラスが鳴いている。
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