蜃気楼の向こう側

貴林

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1 新たな出会い

表と裏

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気づくと、シンもそこにいた。
ゆっくりと、真希乃を見る。
「いいか、よく聞け。ここからは、進んだら二度と引き返せくなる」
「大志も、同じことを」
「うむ、口が減らない奴だよ」
「え?大志を知ってるんですか?」
「準備をして、お前を待ってることだろう」
「準備って、なんです?」
「いずれ、わかる」
「これから、降りかかってくることは、お前が自分で選んで、進みなさい」
「自分でって、一人でですか?」
「この石は砕けやすい。が、効力は変わらない。大きかろうが、小さかろうがな」

「どういう意味ですか?」
「困った時は、仲間がいるだろ?」
四人を見ると、皆がうなずいた。

「これは、どう使えばいいのですか?」
「言うのは、簡単だ。行きたいところを、念じればいい」
「念じる」
「やるのは、難しい。念じ方が、中途半端だと、死ぬことにもなりかねん」
「死ぬ?」
「先程は、大志への思いが、強かったから上手くいったようだがな」
「大志・・」
「私もそろそろ、戻らねば」
「戻る?」
「ここは、私のいるべき場所ではないからな」
「戻るって、大志のところですか?」
「そうだ」
「じゃあ、僕もいっしょに」
「いかん、今はまだ早すぎる」
「でも」
いては、事を仕損じると、いうだろう?」
「く・・」
「その時が来れば、必ず大志に会える」
「いつなんですか?」
「お前次第だ。そう、大志も言っていただろう?」
顔を上げる真希乃。
「降りかかるものを、何が正しいか僕が決める」
うなづくシン。
「何が正しいかなんて、ほんとは、誰もわからないことだ。だから、お前が信じたように、進みなさい」
「何をどう信じれば」
「ここまで、何を信じて来たんだ?」
「大志・・・」
「それにここまで、お前一人で来れたわけじゃないだろ?」
真希乃は、皆を見た。

「そろそろ、行かねば」
「もう?」
「戻って準備をしなければ、お前を受け入れる準備をな」
シンは、短刀を取り出すと、真希乃の手を取り、手の平を切りつけ、そこに短刀を握らせた。
「この痛みと、この短刀が鍵となるだろう」
短刀を握った手を片方の手で、抑える。短刀の柄の先から、血がしたたる。

シンは真希乃の頭に、手を添えるとクシャクシャと優しく撫でた。

「大きくなったな、真希乃。また、いずれな」
立ち上がり、背を向けるシン。

はっとする、真希乃。
あの優しい目と手の感触。
言おうとして、手を伸ばすが
もうそこには、いなかった。

「・・お・・とうさん・・・」
真希乃の目から、止めどなく涙が溢れていた。
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