蜃気楼の向こう側

貴林

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1 新たな出会い

刺客

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「ちょっと、飲み物買ってくるよ」
真希乃は、入り口に向かう。
「あ、私も行くよ」
彩花も続いた。

「大丈夫?真希乃」
心配げに真希乃の顔を覗き込む彩花。
「あ、うん、なんでも」

周りを見回す真希乃。
「販売機、どっちだろ?」
「んーと」
案内表示を探す彩花。
自動販売機、休憩室と書かれた案内を見つけ
「あ、こっちみたい」
真希乃の腕に腕を回すと、引っ張った。
ふくよかなものに腕が触れ、真希乃は、ドキリとした。
触れてはいけないと、少し離して腕を組んでいる。
彩花は、気にもしていないようだ。
販売機で、適当なものを五本買うと、忍の部屋に向かった。

廊下に出ると、看護師、医師、患者、面会者など往来する。その中に、見たことのある人を見た気がした。
はてと、人混みにチラチラ見える人。
(あれは)
マスクを着けて目元しかわからないが映像で見た少女だった。
胸がドキドキした。視線は、そらせているが、確実にこちらに向かっている。
彩花は気づいていない。
早足になる少女。背中から何かを抜き出した。キラリと光る。
「彩花!」
真希乃は、彩花を振り解き、自分の後ろへと引っ張った。横払いに閃光が走る。キン!と高い金属がぶつかる音。真希乃は、懐刀で、これを受け止めた。予期せぬことに、少女は舌打ちをする。
少女は、折り返し刀を真希乃を斬りつける。キン!それも、なんとか、受け止める。
甲高かんだかい音に、目を細める真希乃。
一瞬、少女を見失う。五感を研ぎ澄ます。右後ろに気配を感じ、振り向きながら、闇雲に斬りつけた。
驚いた少女は、靄を発し消える。
「く・・」
それを、追うように真希乃も消えた。
突然の出来事に、彩花は座り込んだまま、呆然とする。
周囲が何事かと、ざわついている。


靄を抜けると、ブワっと目の前に、別の場所が現れもたつく真希乃。多少の高低差のせいか、足をすくわれ体制を崩す。
(屋上?)
見える景色から、真希乃は、思った。
上方から、何かの圧力。
左に転がり、それを避けた。
ガキーン! コンクリートを少女の刀がぶつかる。跳ね返るように、さらに真希乃を追う刃先。
たまらず、懐刀で防ごうとするがあまりに適当すぎた。刃先が真希乃を捉える。ガイーン!やや鈍い音がして、刃先は弾かれた。
恐る恐る目を開ける真希乃。目の前に、真希乃をかばうように立つ女性の後ろ姿。
「また、会ったわね。真希乃くん」
見ると、今朝、家の前で会った女性鷺月麗美さぎつきれいみであった。
麗美は、身長より少し長めの薙刀を持ち、それを持って少女の攻撃を防いだのだ。

「ここは、私が引き受ける、あなたは彩花ちゃんをお願い」
「え」
「刺客は、その子だけじゃないのよ。早く行きなさい」
「あ、はい」
真希乃は、彩花を思った。

ボワっと、溶けて消える真希乃。
それを、見届けると麗美。

手に持った薙刀を、ブンブンと回すとガキーンと、コンクリートに突き立てた。
やや見上げる視線で、少女を見るや、麗美が微笑む。
「いつでも、いいわよ」
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