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三突き目 涼介と一城の過去

一城の家で

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まさるが、若かりし頃の話をしている。
「通ってた高校が男子校でね、私と一城は、顔見ては殴り合いばかりしてたのね。そのうち、派閥みたいのが出来ちゃって、一城派とまさる派みたいに分かれててね、派閥争いが絶えなかったのよ」
黙ってそれを聞きながら、グラスを傾ける一城。
「そんなある日、私は一城派の連中に拉致されちゃって、ボコボコにされてたのね。そこに一城がやってきて、いよいよダメかって覚悟を決めたわ」
話を遮るように、一城が空のグラスを差し出し、カラカラと氷が音を立てる。
「んもう、いいとこなんだから、邪魔しないでよね。一城」
グラスにウイスキーを注ぐと一城の前に差し出す。
「へいへい」
言うと、グラスを傾け、チビリと飲んだ。
「どこまでだったかしら。あ、そこにね、一城が現れて、こう言ったの」
固唾を飲んで聞く恵。その後の展開が気になった。
ドスを効かせて、まさるが言う。
「なにしてんだ。てめえら! て、言ったかと思うと、同じ派閥の仲間をボコボコにしちゃったのよ」
言うと、見惚れるような視線で一城を見る、まさると恵。
「あれ以来、メロメロなのよ。私」
へええ~っと、顔をする恵。
二人から憧れの目が注がれ、はにかむ一城。
「も、もう、いいって、その話は。第一、俺はそんな汚ねえ声してねえから」
すかさず、ツッコむまさる。
「あらやだ、一城ちゃん、照れちゃってる。ん~、可愛い」
「うるせえよ、ほっとけ」
また、知らない一城の一面を垣間見た気がした恵。憧れと胸を締め付ける感情が恵の視線を一城から離さなかった。
グラスを空にした一城は、視線を感じ恵を見る。
ニコリとする一城。
「どうした?」
「あ、いや、その、なんていうか」
一城は、恵の遠い方の肩に腕を回すと恵の頬にキスをした。
両手で口元を覆う、まさる。
「んまあ、見せつけてくれるじゃない」
「あっち行ってろよ、まさる。少しは、空気読め」
「は~い、隅っこ行ってま~す」
まさるは、入り口に近いカウンターの角まで来ると、背を向けてグラスを拭き始める。
一城は、肩に腕を回したまま、恵のあごをつまむと、自分の方を向かせる。一城は、唇に軽くキスをする。下唇を唇でつまむ。今度は上唇を。首を傾けて斜めに唇を重ね合う。深く互いの舌を絡め合う。
恵は、溶けていくようだった。
唇を離す一城、まだ余韻に浸る恵は、目を閉じている。
ふわふわとする恵は、一瞬めまいに襲われる。だが、ガッシリと支える一城の腕は、ビクともしなかった。
虚な目で、一城を見る恵。
不意に一城が恵の舌唇を唇でつまむと、ニョーンと伸ばし始める。
下唇を引っ張られ、何事か?と、目を見張る恵。
プッと、唇が離れると元に収まる互いの唇。
恵の伸びた唇がおかしかったのか、一城は、ブッと吹き出して笑った。
釣られて恵も、苦笑い。
「ひどいよ。一城さん」
「あははは、悪い、でも、今の顔、最高。ぶっ」
声を殺して、肩で笑う一城。完全にツボっている。

        ・

カラカランと扉が開き、店を出る恵と一城。
「まさる、ご馳走さん。また、来るよ」
「明日も待ってるわ」
「そう、毎日、来れねえっての」
「じゃあ、明後日ね」
後ろ向きに、まさるに手を振る一城。
「あのしつこさは、筋金入りだね。な、そう思わねえか、恵」
えへっと、する恵だが、店内と外との気温の違いと酒で暖まった体が急に冷やされて、両肩を抱え震えていた。
「寒いか?」
言うと、羽織っていた革ジャンを脱ぎ、恵に羽織らせる。
「え?これじゃ、一城さんが冷えちゃいますよ」
「酒で体が熱くてな。平気だよ」
一城は、胸に手を当て何かまさぐっている。
あっと、思い出して、恵が羽織っている革ジャンの内ポケットに手を伸ばす。微かに恵の尖った部分に触れて恵がピクリと身を縮める。
手を引くと、タバコとライターを持っている。
トントンとタバコを出し口に咥えると、ライターに火を灯す。プカプカとしたあと、スーと吸い込み、吐き出す一城。
やはり、空を仰いでいる。煙が流れると、キラキラと輝く星が見えた。
「明日も、晴れるかな」
恵も、空の星を見上げる。
「晴れそうですね」
上を見ていた一城は、ヘッシ と、くしゃみをすると、ぶるぶると震えた。
「やっぱ、さびぃわ」
鼻の下を指でくしゃくしゅとしながら、へへへと、笑う一城。
ちょっと、そのまま歩いていたが
「やっぱ、ダメだ」
言うと、恵が羽織った革ジャンの中に手を入れると、そのまま恵の肩を抱いた。肩を抱く手と反対で、革ジャンを羽織ると指でつまんで押さえた。
革ジャンの中で、肩を抱かれる恵。
密着した体が暖かかった。一城の厚い胸を背中に感じる恵。熱がそこから伝わって恵の体が火照り始める。
すぐ横にある一城の顔を見たくて、視線を送ると、一城も覗き込むように視線を合わせる、そして唇を重ねてきた。

       ・・

まさるの店からは、十分ほどのところに、一城の家があった。
親が残していったちょっと古い一軒家。玄関先に仕事で使うワゴン車が置いてあった。その横を通ると玄関に出る。
「まあ、上がれよ」
決して広いとはいえない玄関。
「お邪魔します」
靴を脱ぎ上がる恵。
真っ直ぐに伸びた廊下の先にリビングが見える。左手に階段と和室。右手に風呂場とトイレがあった。その壁を隔ててキッチンがあり、そのままリビングにつながっている。
ガラガラとガラスのはまった格子戸を開けると食卓があった。その奥に流し台。
「恵。コーヒー飲むか?」
「はい」
やかんに水を入れ火にかける一城は、そこから、風呂場に行く。
恵は、食器棚のガラス戸の中にコーヒーと砂糖とミルクを見つけたので、それを取るのに立ち上がる。
古い食器棚なのだろう、昔流行ったアニメのキャラの古ぼけたシールが、引き出しに貼られている。一度、貼って剥がそうとしたのをやめたのか、一部が破れて剥がれかけている。
「あ、これ知ってる」
一回り近く違う、恵と一城。
再放送でしか見たことのないアニメのキャラだった。
一城の子供時代を、勝手に想像する恵は、一人笑みを浮かべている。
「ん?どうした?」
戻ってきた一城が、そのシールに気がつく。
「ああ、これね、お袋にめちゃくちゃ怒られてさ、仕方なく剥がそうしたんだけど、うまく剥がれなくてな。で、そのままになってる」
恵の華奢な肩が目に入ると、後ろから抱きしめていた。
「不思議なんだよ、恵といると、落ち着くんだよ」
「え?それって、俺も同じです。一城さんにこうしてもらってると、何もかも忘れて無心になれるっていうか」
「そっか、ならよかった」
恵は、回された腕に手を添える。
「好きです・・こうしてるの」
「俺もだ・・・」
キスをしたい衝動に駆られる二人。
恵の肩を掴み、クルリと回すと向き合って恵を抱きしめた。

グラグラと、やかんのお湯が煮立つ、火を消すと、コーヒーを淹れずに一城が言う。
「風呂でも入るか?」
「いいですね」
すでに、二人には自然の行動になっていた。拒むでもなく何でも二人で出来た。
「風呂のお湯、見てきてくれねえか?そろそろのはずなんだけど」
「はい」
「俺は、着替えを用意してくるから」
「え?」
「今夜は、泊まってけ」
「・・・」
「ん?いきなりだからな、無理なら別に構わないけど」
「あ、いえ、泊まります。泊まりたいです」
「オッケ、ならよろしく」
階段を駆け上がる一城。
恵は、風呂場に行くと曇りのかかった引き戸を開ける。
バスタブには、もうお湯がスレスレまで来ていた。蛇口を捻ってお湯を止める恵。風呂場の中は、他と違って新しい印象を受ける。やや広めに作られている。
そこに着替えを持った一城が戻ってきた。
「着替え、シャツと短パンでいいか?」
「ええ、充分です」
カゴの中に二セット並べて置く一城。
脱ぎ始める一城。
「先にトイレ、行ってきます」
恵は、トイレに向かう。
ガラガラと引き戸を開け、一城が風呂に入る。
トイレから、戻った恵は、シャワーの音がする方を見る。曇りガラスの向こうに一城が見える。
服を脱ぐと、引き戸を開ける恵。
はじめに飛び込んできたのは、シャワーを浴びている、一城のえくぼのある引き締まった尻だった。
その上に、逆三角形の上半身があった。
明らかに自分とは違う体格をしている。見られるのが恥ずかしいのか、前を隠すかのように、後ろから一城を抱きしめる恵。
「お、おい」
不意に来られて、シャワーのお湯を思い切りかけられる恵。
すでに、頭からずぶ濡れになっている。
一城を伝って流れてくるお湯を気にするでもなく、恵は一城の背中にしがみついている。
「恵」
「はい?」
ボディソープをクシュクシュと手に取る一城。
「洗いっこ、しようぜ」

クルリと向きを変える一城はソープでグチャグチャの手を恵の体になすりつけてくる。
コチョコチョとされるので、くすぐったかった。
「ひ、卑怯ですよ。それ、一城さん。ま、待って下さいよ」
へへへと、顔をする一城。
「待たないよ~だ」
時々、やたら子供っぽくなる一城が、とても可愛く思えてしまう恵は、つい釣られて童心に帰ってしまう。
恵も負けじとボディソープに手を伸ばす。それに気づいた一城は、ボトルを取り上げる。
「あ、きったねえなぁ。それ、俺にも下さいよ」
べえ~の顔をする一城。
「やなこったい」
大の大人の男が、はしゃぐには、狭すぎる。
背を向けて、お腹で隠す一城。
必死にボトルを取りに行く恵は、そそり立つ一城のものを握っていた。
「あっ」
振り向いた一城は、真剣な顔になっている。
「恵」
抱きしめる一城。
互いのものが、ぶつかり合う。
恵もすでに硬くなっていた。
互いに押し当てたまま、きつく抱きしめあった。
一城の手から落ちたボトルを床から取り、棚に戻す恵は、クシュクシュとソープを手に取る。
膝をついて目の前に、一城のものを見ながら、手でこねたソープを一城のものに擦りつける。
一城の反応が早かった。根元まで下げると、クンと頭をもたげる一城。
天を仰ぎ、声を漏らす一城。
クチュクチュと音を立てて、上下する恵の手。
念入りにそこだけ洗うと、恵は今度はソープを手に取ると自分の体に塗り始める。一城に抱きつき、体を滑らせる。クネクネとどちらにも滑るため、もっとたくさん手に取り、一城の肩から腕、背中、腰、足全身にソープを塗り広げる。恵が顔を上げて一城を見て、キスをせがむ。
一城は、この時、恵の手の内にあった。誘われるまま、一城が動く。
恵は、一城の手を取ると自分の硬くなったそこに持っていく。
導かれるまま、一城は、恵のものをシゴく。ピクピクと見を縮める恵。
溢れ出る液がソープの泡と混じり合う。
シゴかれたまま、恵は一城の背中に手を回す。ツルツルと、手を滑らせ、全身を愛撫する。その手から、愛おしさが伝わってくるよだった。
一城は、手を止めると恵の腰に手を回し、ぐっと自分に引き寄せる。
互いのものが、滑って逃げていくようだ。
息が詰まる恵は、絞り出すように吐息を吐いた。
恵の敏感な耳に口を持っていくと、舌で舐め息を吹きかける。
う・・と、電気が走る恵。
放置された互いのものが、疼いている。
恵は、バスタブの縁に掴まるとお尻を一城に向ける。ソープがたっぷりと塗られている。
自身にもソープを着ける一城。
玉と棒は、足の間に見え隠れし、穴だけがしっかりと見てとれた。
穴の口に、先端を充てがう一城。ゆっくりと、恵の中に沈んでいく。
う・・と、恵が声を出す。
ジワジワと入ってくるのを感じ、息を止める恵。
根元まで、到達すると、恵の足が震え始める。ゆっくり引き戻す一城。
滑りが良かったので、激しく突いてみる一城。
前回と違って、恵も痛みがあまりないようだった。
ツルツルと滑る恵の背中に、お腹を密着させる一城は、その上で体を滑らせる。
恵は、それに反応して体をくねらせた。
一城の腰の動きが速くなる。
恵の先端からトロトロと流れ出る液。
床に着いても、まだ、先端から離れずにいる。
抜き差しするたびに、二人は声を漏らす。
流れ出る液が絶えない恵のそれを、一城が握るとクチュクチュと上下させた。
恵は、苦しさから顔をしかめる。
「ああ、恵ぅ」
「か、一城ぃ」
互いの名を呼んで、欲していることを伝えあう。
一城は、手を動かすのをやめない。
腰も動き続けていた。
「ああああ、イ、イク」
「も、もっとぉ」
一城が恵の中に放出するのと、ほぼ同時に恵も泡だらけの床に放出していた。
一城は、腰を突くたびに絞り出す。
一城は、自分のものより少し離れたところにある恵のそれをシゴいている。少し、感覚が違うが一人でしているような錯覚さえあった。
二人、つながったまま、その場にへたり込んだ。
「・・・恵」
「・・・はい?」
「なん、だか、この間と違うな」
「そ、うですか?」
一城は、恵から離れると、床に座り込んでしまった。
そのあぐらの中に、恵を座らせる一城。
「すごく、良かった」
腕の中の恵が照れたように笑う。
恵は、一城に腕を回すと抱きついてキスをした。
それに、答えるように舌を絡める一城。
息遣いとシャワーの音だけが、バスルームにあった。
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