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十一突き目 忘れたい過去

元カレ

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琴音と同居を初めて、2日目の朝。
相変わらず、起きたてHから始まる。
すっかりラブラブモードの二人。
こんな時が、一番幸せなのかもしれない。
「恵さん、パン焼けるから、コーヒーお願い」
「はいよ、今やってる」
「今日の現場って、どこだっけ?」
「あれだよ、縮れた毛の所」
「ああ、なんか懐かしいね」
指で何かをつまんでいる真似をする恵。
「め、恵さん、これは何故このような所に落ちているのでしょうか?」
わざとらしく寄り目にしている恵。
「もう、そんな顔してないから」
照れながら、恵のつまんだ指を握りつぶす琴音。
さらに、恵は、雑巾を持った手をしながら、うえっ、うえっと、して見せる。
「だからもう、やめてったら。ほんと、意地悪なんだから」
ぷぅと膨れる琴音。
その膨れた顔が可愛いくなって、キスをする恵。
「そうやって、誤魔化すんだから」
恵の首に腕を回すと琴音も恵と深いキスをする。

もうとても見ていられないので、話は進む。

場数を踏んで、かなり仕事に慣れた琴音は、例の4つの部屋を40分で終わらせると、トイレ掃除に取り掛かっていた。
ギイと音を立てて扉が開かれる。
「恵さん、個室の方頼めますか?」
「え?なに?」
恵では、なかった。従業員が用を足しに入ってきたのだ。
「あ、すみません、今清掃中で」
「ん?看板とかなかったけど?」
清掃中 の看板を出し忘れていた琴音。
「ごめんなさい、こちらの手違いです。一度、出ますので、失礼します」
「いいよ、別に。いたって」
男は、チャックを下ろすと、小便器に向かって立つと構わず初めていた。
隠れるように個室に入り、便器を拭き始める琴音。
男は用を足し終えると、チャックを上げた。
そして、琴音が背を向けて個室の洋便器をしゃがんで拭いていると、そのお尻の下に足の爪先を入れると、琴音の陰部を押し上げてきた。
「きゃあ、な、何するんですか?」
振り向いた琴音は、男の顔を見て驚いた。
男は、ニヤニヤしながら琴音を見下ろしている。
「なんだ、やっぱ琴音じゃねえか。お前、便所掃除なんかしてんのかよ?」
「あ、ああ・・・」
そこに、恵がやってきた。
「琴音、看板出してなかったぞ」
「じゃあな、琴音」
男は、クルリと向きを変えると何もなかったかのように出て行く。
琴音が、カタカタと震えている。
恵が駆け寄り琴音の震える肩を抱く。
「何があったんだよ、琴音」
今出て行った男を思い出す恵。
「あ、あいつか?何したんだ」
立ち上がろうとする恵の腕を掴む琴音。
ダメダメと、首を横に振っている。
掴んだ腕をそのまま引き寄せる琴音は、恵に抱きついた。
「だ、大丈夫だから。ね、だから、お願い」
琴音を抱きしめながら、出て行った男が気になって仕方がない恵。
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