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何か、何か__。
指輪を眺めながら答える。
「よくわからないけど、何か__。」
「そこだよ!! 」
突然学長が大きな声を出し、机をどんと叩いた。見ると顔が紅潮している。
「何かある事はわかるんだね? いやいや、初めてでそれだけ感じれば充分だよ。・・その指輪は西洋のアンティークでね、約二百年前の物だ。それだけ古いと、気も強くなって来て大変なんだよ」
「は? 」
気が強くなる?
学長が頷く。
「物はね、大切にされればされるほどその持ち主の気持ちがこもるんだよ。年月が長いと特にね。だから大抵の物は元の持ち主の所か作られた所、故郷へ戻りたがっているんだ。そうして強い気を発してサインを出す。物を大切にする人はその気がわかるらしいが、私は昔から人一倍、物の発するそういう気を感じ取る力が強くてね。美術館や博物館に行く度に悲鳴が聞こえてくるようで何とかならないかとずっと思っていた。それだけじゃない。その物が放つ強い気は、現在の持ち主や家族にまで得体の知れない不安や罪悪感をもたらし、結果周囲にまで悪い影響を与えるんだ。それは美術品等を調べるうちに偶然わかったんだがね。それである日友人に思い切って打ち明けたら何と彼もそういった気を感じると言う。それで我々は悩んだ挙句仲間を集め、気、サインだね、を発する物を盗み出し、元の所に返す〝赤の怪盗団〟を結成したんだ。大抵元の持ち主は亡くなっている事が多いからその遺族や子孫にこっそり、ね。大変喜んでいるようだよ。大方本人と一緒に埋葬するらしいが。いや、本当は真相を話して今の持ち主が元に戻すのが一番なんだが、利益のみを求める人達は不吉な雰囲気を何となく感じ取っているにも関わらず、そのサインがどこから発せられているか全く分からないのだよ。だから相手にしてもらえない。それで不本意だが、怪盗をやっているわけなんだ」
「赤の男爵と言う派手な怪盗をしているのはね、目立つ事で逆に我々が盗み出す物に着目して欲しいからなんだ。詳しく調べれば、我々が標的にしている物は全て、元の持ち主が特別に大事にしていた物だと分かる。そうすれば自ずと物のサインに気付くだろうからね」
「しかし最近は物を見境なく買い集める人が増えてね。利益のみを求め、アンティークに限らずただ貴重な物、珍しい物を買い集めれれば良いと思っている。その物の背景を理解せずにね。結果、赤の男爵の活動も増え、警察の動きも厳しくなってきた。男爵一人で盗み出し、警察の手から逃げるのが難しくなってきたんだ。それで、だ」
学長はここで一息つき、僕をまっすぐに見つめた。
「君に赤の男爵の影となって欲しい。つまりパートナーだね。メイン、盗みは赤の男爵がするんだが、君も現場に行って彼の逃亡の手助けをしたり、他様々なサポートをしてもらいたいんだ」
「それで、どうかな、藤堂君。優れた身体能力や真面目な性格、それに何と言っても男爵を慕ってくれている。君以外に適任者は見つからないんだ。やって・・・くれるかな? 」
学長が僕を見た。北島先生も、他の先生も
一斉に、僕を。
指輪を眺めながら答える。
「よくわからないけど、何か__。」
「そこだよ!! 」
突然学長が大きな声を出し、机をどんと叩いた。見ると顔が紅潮している。
「何かある事はわかるんだね? いやいや、初めてでそれだけ感じれば充分だよ。・・その指輪は西洋のアンティークでね、約二百年前の物だ。それだけ古いと、気も強くなって来て大変なんだよ」
「は? 」
気が強くなる?
学長が頷く。
「物はね、大切にされればされるほどその持ち主の気持ちがこもるんだよ。年月が長いと特にね。だから大抵の物は元の持ち主の所か作られた所、故郷へ戻りたがっているんだ。そうして強い気を発してサインを出す。物を大切にする人はその気がわかるらしいが、私は昔から人一倍、物の発するそういう気を感じ取る力が強くてね。美術館や博物館に行く度に悲鳴が聞こえてくるようで何とかならないかとずっと思っていた。それだけじゃない。その物が放つ強い気は、現在の持ち主や家族にまで得体の知れない不安や罪悪感をもたらし、結果周囲にまで悪い影響を与えるんだ。それは美術品等を調べるうちに偶然わかったんだがね。それである日友人に思い切って打ち明けたら何と彼もそういった気を感じると言う。それで我々は悩んだ挙句仲間を集め、気、サインだね、を発する物を盗み出し、元の所に返す〝赤の怪盗団〟を結成したんだ。大抵元の持ち主は亡くなっている事が多いからその遺族や子孫にこっそり、ね。大変喜んでいるようだよ。大方本人と一緒に埋葬するらしいが。いや、本当は真相を話して今の持ち主が元に戻すのが一番なんだが、利益のみを求める人達は不吉な雰囲気を何となく感じ取っているにも関わらず、そのサインがどこから発せられているか全く分からないのだよ。だから相手にしてもらえない。それで不本意だが、怪盗をやっているわけなんだ」
「赤の男爵と言う派手な怪盗をしているのはね、目立つ事で逆に我々が盗み出す物に着目して欲しいからなんだ。詳しく調べれば、我々が標的にしている物は全て、元の持ち主が特別に大事にしていた物だと分かる。そうすれば自ずと物のサインに気付くだろうからね」
「しかし最近は物を見境なく買い集める人が増えてね。利益のみを求め、アンティークに限らずただ貴重な物、珍しい物を買い集めれれば良いと思っている。その物の背景を理解せずにね。結果、赤の男爵の活動も増え、警察の動きも厳しくなってきた。男爵一人で盗み出し、警察の手から逃げるのが難しくなってきたんだ。それで、だ」
学長はここで一息つき、僕をまっすぐに見つめた。
「君に赤の男爵の影となって欲しい。つまりパートナーだね。メイン、盗みは赤の男爵がするんだが、君も現場に行って彼の逃亡の手助けをしたり、他様々なサポートをしてもらいたいんだ」
「それで、どうかな、藤堂君。優れた身体能力や真面目な性格、それに何と言っても男爵を慕ってくれている。君以外に適任者は見つからないんだ。やって・・・くれるかな? 」
学長が僕を見た。北島先生も、他の先生も
一斉に、僕を。
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