テンミリオンベイビー

浅野新

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五度目もあっさり妊娠し、臨月を迎え、私は自宅マンションに様子見伺いに来た上司に今回の報酬金額を知らされた。
「やりましたね!先輩!」
私の見舞いに来ていて偶然その場に居合わせた後輩は目をきらきらさせて拍手した。
何かと私を慕ってくる彼女は二十歳と若い。実際二十という数字だけで出産経験もないのに既に夫側から何件もリクエストが入っている有望株だ。正直言って顔はブスだが先輩に憧れてるんですと濁りのない瞳で言われると悪い気はしない。
笑顔も一転、暗い表情になった彼女は私の大きなお腹を見て呟いた。
「私も先輩みたいになれるでしょうか」
「だあいじょうぶ。何とかなるわよ、私でもそうなんだから」
「そんな、先輩は特別ですよ」
不安そうな顔をした彼女の顔を見ながら、高卒後に働いていた会社の人々を思い浮かべた。
誰もが認める良い人だったのに乳癌で子供が持てないまま亡くなったセンパイ。子供好きで、切望していたと後で聞いた。
仕事第一だったのに予想外の妊娠で退職した同僚。「二人目が、できちゃって」と言った時の、笑ったような泣いたような表情が忘れられない。

無意識にお腹をさすった。
__そうして、
実の親から虐待を受けて いた、子供が大嫌いな私。
そのわたしが。

おかしくて哀しい。
哀しすぎておかしい。
運命が、人が、何もかもが。
おかしくて堪らず、思わず笑い出すとお腹の子も微笑んだ気がして目の端から涙が出た。ひとしきり笑った後、戸惑った様子の後輩に私は、大丈夫よ、と繰り返し笑って言った。
「神様って不平等だから」

 
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