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奇械探掘1
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探掘坑内は、すべて自己責任だ。
巨大昇降機で地下へ降りたムジカは、ぞろぞろとエーテル結晶が多く採掘できるエリアへ向かう採掘夫達を横目に、閑散とした細い通路を選んで入っていく。
遺跡内は広大で、未だに全容を把握し切れておらず、ほかの探掘坑にどこからどうつながっているのかもわかっていない。
だがそれでも安全な場所、うまみの多い地区というのはある程度絞られていて、逆に探掘屋達がざまざまな理由で忌避する場所も多くあった。
ムジカが今回選んだのは、そんな普通の探掘屋達が避ける地区にある狩り場だった。
円形状のホールになっているが、上方に回廊があるため待ち伏せができる上、一階部と二階部ではつながる場所が違うため逃走も容易。さらに、一階部に不定期にだが確実に奇械が巡回してくるため一人で狙うには格好の場所なのだ。
それなりにうまみがあるがもろもろの事情で常に閑散としているため、安全に稼ぎたいときにムジカは時折利用していた。
ムジカが一人で狩るときは、奇械に探知されにくい極細のひもをホール入り口に仕掛ける。足止めした後に奇械に応じて閃光弾や音響弾を使い過負荷をかけて沈黙させる。後は素早く姿勢制御系統をつなぐケーブルを断ち切って無力化し、解体するのだ。
必ず1体で来るわけではないため、1週間同じポイントで粘ってようやく1体仕留められる、ということもざらにある。
それでも十分に採算は取れるため、ムジカは今回もその覚悟で来ていたのだが。
「戦闘行動、開始します」
告げた瞬間、銀色の流れが虚空を飛ぶ。
エーテルで形作られた2翼で飛翔したラスは、ホール内に侵入した重作業型奇械へと迫る。
鉄馬車並みの巨体に、昆虫に似た六足の奇械は、その足をラスに振りかぶった。
だがラスのほうが早い。
交錯する前に、銀の兵器は腕に内蔵されていたブレードで足を切り飛ばし、指令伝達系統につながる部分へ無造作にブレードを突き立てた。
肌へと迫るはずだった作業アームは銀の髪をゆらしただけにとどまり、重作業型は痙攣のように機体を震わせた後沈黙する。
ブレードを抜いたラスはすぐに離れた。
胴体に頭部と複数の腕を持った警備型が、スタンガン付警棒を振りかぶっていた。
ラスは銀の髪を揺らして危なげなくよけると、ブレードを一閃。
切り落とされた頭部が地面へ転がる音が、ホール内を反響した。
その鮮やかな手際を安全な2階部分から眺めていたムジカは、呆然とつぶやいた。
「3ヶ月分の稼ぎがあっという間にできちまった……」
これだけ損傷が少なければ、装甲やケーブル類も取り出せるだろう。
その後、幸運にももう一体やってきた奇械はブレードなし、エーテルの翼もなしという無理難題をふっかけてみたが、ラスは問題なく制圧した。
驚き冷めやらないが、とにもかくにも解体だ、と携帯工具を取り出したムジカが作業を始めようとすれば、傍らにラスが立った。
「ムジカ、解体の仕方を教えてください」
「あーいいけど。気持ち悪くないか? 一応お前の同胞だろ?」
一応確認してみれば、ラスは首をかしげた。
巨大昇降機で地下へ降りたムジカは、ぞろぞろとエーテル結晶が多く採掘できるエリアへ向かう採掘夫達を横目に、閑散とした細い通路を選んで入っていく。
遺跡内は広大で、未だに全容を把握し切れておらず、ほかの探掘坑にどこからどうつながっているのかもわかっていない。
だがそれでも安全な場所、うまみの多い地区というのはある程度絞られていて、逆に探掘屋達がざまざまな理由で忌避する場所も多くあった。
ムジカが今回選んだのは、そんな普通の探掘屋達が避ける地区にある狩り場だった。
円形状のホールになっているが、上方に回廊があるため待ち伏せができる上、一階部と二階部ではつながる場所が違うため逃走も容易。さらに、一階部に不定期にだが確実に奇械が巡回してくるため一人で狙うには格好の場所なのだ。
それなりにうまみがあるがもろもろの事情で常に閑散としているため、安全に稼ぎたいときにムジカは時折利用していた。
ムジカが一人で狩るときは、奇械に探知されにくい極細のひもをホール入り口に仕掛ける。足止めした後に奇械に応じて閃光弾や音響弾を使い過負荷をかけて沈黙させる。後は素早く姿勢制御系統をつなぐケーブルを断ち切って無力化し、解体するのだ。
必ず1体で来るわけではないため、1週間同じポイントで粘ってようやく1体仕留められる、ということもざらにある。
それでも十分に採算は取れるため、ムジカは今回もその覚悟で来ていたのだが。
「戦闘行動、開始します」
告げた瞬間、銀色の流れが虚空を飛ぶ。
エーテルで形作られた2翼で飛翔したラスは、ホール内に侵入した重作業型奇械へと迫る。
鉄馬車並みの巨体に、昆虫に似た六足の奇械は、その足をラスに振りかぶった。
だがラスのほうが早い。
交錯する前に、銀の兵器は腕に内蔵されていたブレードで足を切り飛ばし、指令伝達系統につながる部分へ無造作にブレードを突き立てた。
肌へと迫るはずだった作業アームは銀の髪をゆらしただけにとどまり、重作業型は痙攣のように機体を震わせた後沈黙する。
ブレードを抜いたラスはすぐに離れた。
胴体に頭部と複数の腕を持った警備型が、スタンガン付警棒を振りかぶっていた。
ラスは銀の髪を揺らして危なげなくよけると、ブレードを一閃。
切り落とされた頭部が地面へ転がる音が、ホール内を反響した。
その鮮やかな手際を安全な2階部分から眺めていたムジカは、呆然とつぶやいた。
「3ヶ月分の稼ぎがあっという間にできちまった……」
これだけ損傷が少なければ、装甲やケーブル類も取り出せるだろう。
その後、幸運にももう一体やってきた奇械はブレードなし、エーテルの翼もなしという無理難題をふっかけてみたが、ラスは問題なく制圧した。
驚き冷めやらないが、とにもかくにも解体だ、と携帯工具を取り出したムジカが作業を始めようとすれば、傍らにラスが立った。
「ムジカ、解体の仕方を教えてください」
「あーいいけど。気持ち悪くないか? 一応お前の同胞だろ?」
一応確認してみれば、ラスは首をかしげた。
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