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0章 転生編
プロローグ 俺と提出課題
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夜が明けて、カーテンの隙間から光が漏れ出す。
朝を知らせるようにセミの鳴き声が部屋の中にまで響き、目覚ましの音を圧倒している。
外は夏なのにも関わらず田舎特有の妙な肌寒さと湿っぽさに包まれていて、山の影から朝日が少しだけ顔を覗かせていた。
セミと目覚ましの喧騒の中、時計に手を伸ばす影が一つ。音が止み、他に誰もいない部屋で呻くような声がした。
「……あと五分だけ寝させてくれ。……ってかセミうるさっ!おかげで最近寝坊も無いけども!」
今日は月曜日。休み明けで誰もが憂鬱になるその日、学生である海音もやはり例外ではなかった。
彼の名前は冷泉海音17歳。そこそこの田舎から学職高校に通う高校二年生で、こんな名前だけど一応男だ。
彼は布団から跳ね起きると傍らに置いてあるアニメキャラのフィギュアを手に取り、おもむろに話始めた。
「あ~、り○ごちゃん♪おはよう!今日も相変わらず可愛いね!……え?そんなこと無い?大げさだって?何言ってるのさ!俺は世界一可愛い君を一生幸せにしてみせるからね!」
……そう、彼はオタクというヤツなのである。
でも他の人にはオタクであることを隠しているので、いわゆる隠れオタクだ。
それほど重度なオタクでは無いので普段はこんなこと絶対にしないのだが、そんな隠れオタクな彼が朝からこんなにテンションが高い理由は、目の前にあるフィギュアがようやく昨日家に届いたからだろう。
実はこれまでもグッズ等が死ぬほど欲しかったのだが、田舎に住んでるせいで手が届かなかった。しかし最近はネットのフリーマーケットでいろんなものが手に入るご時世になったので、少ない小遣いを全てつぎ込んで思い切ってずっと欲しかったフィギュアを買ったのである。
「……はっ、これ以上喋っていては遅刻しちまう。すまないが俺が帰るまで待っていてくれ。」
しばらくして我に返った?海音は涙目になりながら部屋を出た。
彼は棚から出してきた食パンにジャムだけ塗って軽めの朝食を取った。親は基本的に都会のほうで寝泊まりして、休日にしか帰ってこないからいつも朝は一人だ。
パンを食べ終えると、かなり酷い寝癖をさっさと直してから身支度を進め、靴を履き家を出たところで、さっきまでの明るい表情が曇り、無意識のうちにため息をついていた。
「はぁ……なんで昨日家に上げちゃったんだろうな……。」
そんなことを呟く彼の足取りは自然と重く、昨日あったことを思い返していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あー!明日数学の演習プリント提出じゃねーか!やべぇ!完っ全に忘れてた!」
今日の授業が終わり、放課後に明日の宿題をしている時にそんな声が響いた。
「しかも全然わからんし……。あー、マジかよぉ~。」
このバカ丸出しな声の主は俺の隣の席の牧野だ。
結構背が高くて、茶髪にピアスのちょっとチャラい系のヤツ。
二年になって名前の順で席が隣になった時から、席替えの度に何故か席が近くになるのだ。
席が近いといっても特別仲が良いわけじゃなくて、たまにちょっと世間話をする程度。そんなに悪いやつじゃないと思うけど、隠れオタクな俺には声がでかくてうるさいので少し苦手だったりする。
さっきから俺の横で一人でゲームをしてたから
(さっさと帰らないかな~)
とか思ってた矢先、いきなり叫び出したのだ。
できれば奇妙な行動は今すぐ止めて早急にお帰りいただきたい。
「しかももうみんな帰っちゃってて写させて貰えねー……ん?」
うわっ、なんかこっち見てきた。勘弁してくださいよも~。
「……なに?」
「いや、悪いんだけどさ。数学のプリント見せてくれない?ちょっと今日夜に外せない用事があってさ、今からだと間に合わねーんだわ。」
まあそう来るとは思っていた。それでプリントを見せることも別に構わないのだが…、今日はり○ごちゃんフィギュアが届く日。さっさと宿題を終わらせて帰りたいのだ。しかもフィギュアを買ったなんて知られたら俺の学生生活が狂ってしまう。…だから適当にあしらうことにする。
「ごめん、プリント家にあるから別のヤツに頼んでくれない?」
これは別に嘘ではない。
今日数学の授業が無かったから、ファイル共々家に置いてきたのだ。
牧野は友達も多いし、簡単に引き下がってくれると思ったのだが……そうはいかないみたいだ。
「いや、帰る方向一緒だし降りる駅も近いしでお前に頼むのが一番なんだよな。」
俺とコイツは帰る方向が一緒らしい。俺も今初めて知ったよ。
俺の家は結構遠いから近くから通ってる生徒もあんまりいないしな。それにフィギュアが届くのは夜だし、夕方のうちに帰せば問題ないか。
「そうだったんだ。なら俺に頼むのも納得だな!それじゃ、今から俺んち来て写してくか?」
「おう!ありがとな!助かったぜ!」
「言っとくけどあんまり長居はするなよ?」
「了解了解。」
(何気に家に人来るのとか数年ぶりだな。)
こうして俺は牧野と共に帰宅した。
朝を知らせるようにセミの鳴き声が部屋の中にまで響き、目覚ましの音を圧倒している。
外は夏なのにも関わらず田舎特有の妙な肌寒さと湿っぽさに包まれていて、山の影から朝日が少しだけ顔を覗かせていた。
セミと目覚ましの喧騒の中、時計に手を伸ばす影が一つ。音が止み、他に誰もいない部屋で呻くような声がした。
「……あと五分だけ寝させてくれ。……ってかセミうるさっ!おかげで最近寝坊も無いけども!」
今日は月曜日。休み明けで誰もが憂鬱になるその日、学生である海音もやはり例外ではなかった。
彼の名前は冷泉海音17歳。そこそこの田舎から学職高校に通う高校二年生で、こんな名前だけど一応男だ。
彼は布団から跳ね起きると傍らに置いてあるアニメキャラのフィギュアを手に取り、おもむろに話始めた。
「あ~、り○ごちゃん♪おはよう!今日も相変わらず可愛いね!……え?そんなこと無い?大げさだって?何言ってるのさ!俺は世界一可愛い君を一生幸せにしてみせるからね!」
……そう、彼はオタクというヤツなのである。
でも他の人にはオタクであることを隠しているので、いわゆる隠れオタクだ。
それほど重度なオタクでは無いので普段はこんなこと絶対にしないのだが、そんな隠れオタクな彼が朝からこんなにテンションが高い理由は、目の前にあるフィギュアがようやく昨日家に届いたからだろう。
実はこれまでもグッズ等が死ぬほど欲しかったのだが、田舎に住んでるせいで手が届かなかった。しかし最近はネットのフリーマーケットでいろんなものが手に入るご時世になったので、少ない小遣いを全てつぎ込んで思い切ってずっと欲しかったフィギュアを買ったのである。
「……はっ、これ以上喋っていては遅刻しちまう。すまないが俺が帰るまで待っていてくれ。」
しばらくして我に返った?海音は涙目になりながら部屋を出た。
彼は棚から出してきた食パンにジャムだけ塗って軽めの朝食を取った。親は基本的に都会のほうで寝泊まりして、休日にしか帰ってこないからいつも朝は一人だ。
パンを食べ終えると、かなり酷い寝癖をさっさと直してから身支度を進め、靴を履き家を出たところで、さっきまでの明るい表情が曇り、無意識のうちにため息をついていた。
「はぁ……なんで昨日家に上げちゃったんだろうな……。」
そんなことを呟く彼の足取りは自然と重く、昨日あったことを思い返していた。
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「あー!明日数学の演習プリント提出じゃねーか!やべぇ!完っ全に忘れてた!」
今日の授業が終わり、放課後に明日の宿題をしている時にそんな声が響いた。
「しかも全然わからんし……。あー、マジかよぉ~。」
このバカ丸出しな声の主は俺の隣の席の牧野だ。
結構背が高くて、茶髪にピアスのちょっとチャラい系のヤツ。
二年になって名前の順で席が隣になった時から、席替えの度に何故か席が近くになるのだ。
席が近いといっても特別仲が良いわけじゃなくて、たまにちょっと世間話をする程度。そんなに悪いやつじゃないと思うけど、隠れオタクな俺には声がでかくてうるさいので少し苦手だったりする。
さっきから俺の横で一人でゲームをしてたから
(さっさと帰らないかな~)
とか思ってた矢先、いきなり叫び出したのだ。
できれば奇妙な行動は今すぐ止めて早急にお帰りいただきたい。
「しかももうみんな帰っちゃってて写させて貰えねー……ん?」
うわっ、なんかこっち見てきた。勘弁してくださいよも~。
「……なに?」
「いや、悪いんだけどさ。数学のプリント見せてくれない?ちょっと今日夜に外せない用事があってさ、今からだと間に合わねーんだわ。」
まあそう来るとは思っていた。それでプリントを見せることも別に構わないのだが…、今日はり○ごちゃんフィギュアが届く日。さっさと宿題を終わらせて帰りたいのだ。しかもフィギュアを買ったなんて知られたら俺の学生生活が狂ってしまう。…だから適当にあしらうことにする。
「ごめん、プリント家にあるから別のヤツに頼んでくれない?」
これは別に嘘ではない。
今日数学の授業が無かったから、ファイル共々家に置いてきたのだ。
牧野は友達も多いし、簡単に引き下がってくれると思ったのだが……そうはいかないみたいだ。
「いや、帰る方向一緒だし降りる駅も近いしでお前に頼むのが一番なんだよな。」
俺とコイツは帰る方向が一緒らしい。俺も今初めて知ったよ。
俺の家は結構遠いから近くから通ってる生徒もあんまりいないしな。それにフィギュアが届くのは夜だし、夕方のうちに帰せば問題ないか。
「そうだったんだ。なら俺に頼むのも納得だな!それじゃ、今から俺んち来て写してくか?」
「おう!ありがとな!助かったぜ!」
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