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夏休みの延長戦~自分にどう向き合うか~
毒の花
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兄さんが言っていたのはおそらくこのことだったんだろう。指示通り屋敷に戻って報告しに行こう。
にしても、まさかクロード侯爵家が関わっていたとは…どうりで兄さんが自ら動かないわけだ。高位貴族の屋敷に忍び込むなんて真似はできないだろうし。何かあることは分かっていてもそれが何かは分からなかったんだろう。でも予知眼の保持者が証言すれば捜査ぐらいはできる。シェナード王国での僕の立ち位置はそれほど大きい。
預けておいたレインを引き取りライズまで急ぐ。
兄さんの手紙には、すぐに屋敷に戻れという文言があった。何か嫌な予感がする。そう思って僕はレインを走らせできうる限りのスピードを出し、ライズへの道を進んだのだった。
♢
夜の山道を進むこと3時間。ルーンとも合流することができ、少し休憩をとることにした。
「ごめんね、ルーン、レイン。こんなことに巻き込んでしまって。」
ーだいジョうブ!
ーやクにたっタ?
「もちろん。君たちがいればなんだってできる気がするからね。」
「へぇ…そうなんだ。」
短剣をとっさに構えながら声のした方を向く。
直前まで気配を感じ取れなかった…いったい何者だ?
草影から出てきたのはシュガーさんだった。ピンク色の髪を揺らしながらこちらに歩いてくる様子はどこか不気味だった。
「シュガーさん?」
「あーそういう名前だったわね。」
そういう名前だった?偽名だったということか…
「シュガーの性格で戦った方がいいかな?うん、そうしよう!アークくん、君には今から気絶してもらいまーす!…黒魔法、毒花の舞!」
シュガーさんの体から植物が勢いよく出てくる。それは事故現場にあった植物と酷似していた。
「みんな、あれには毒がついてるから触っちゃいけない!」
『あれだ。あれだよ、邪鬼ってのは。なんで気づかなかったんだ、おまえ。』
いや、そんなこと言ってる場合じゃないだろ!どう考えても全員の命が危ない。
向かってくる植物は僕に絡みつこうとしているように見えた。
僕を拘束してどこかに連れていく気か?僕に火の適正があったらどんなによかったことか…
レインとルーンは敵から100m離れて追いかけてきて。二人は毒耐性がないから攻撃が当たれば毒で死ぬ可能性がある。周辺の魔物が僕らに気づいてやってくるかもしれないからそっちの対処は任せるよ。
「「わかっタ!」」
本当なら一緒に戦いたいし、戦えるだけの実力があるが、今回は違う。毒使い相手には分が悪い。
ツタのようにしなやかに動く植物を避けることだけに集中する。
「アークくーん、いや、カイくんって言った方がいいかなぁ?逃げるだけじゃ意味ないよー攻撃もしないと。」
僕がハルシャ家のものだと知っているのか!いつばれた?
『はじめからバレてたと思うぞ。半神が奴らを見つけることができるように奴らも神の気配を感じ取れる。しかも弱体化するからな。』
これで弱体化しているのか…やばいな…そういえばこの近くに湖があったはずだ。そこに移動しよう。ここでは植物が多すぎてどこから襲ってくるのか分かりずらいし、その上水魔法や氷魔法が使いやすい。
身体強化を足にかけて背後から僕を捕まえようとしてくる植物からすれすれで避けていく。
一度でもかすったら負け。なのに物凄く速いから何度も当たりそうになる。
「…っフローズン!」
ダメだ…凍らせようとしてもせいぜい2割ほどしか凍らない。しかも操っている植物は次から次へと増えていく。これはジリ貧だな。
足につけていた煙玉を3つ取り出し勢いよく地面に投げつけ、自分は煙の届かない空中へと跳ぶ。
「…植物に意志でもあるのかな?」
本体は煙の中にいるというのに攻撃の手が緩まない。視界を塞いでも無理なら他の感覚で僕を感知しているというのか?
『奴らを人間のものさしで量るな。』
そうは言っても、魔物でもないでしょうが…ていうかアレはどうやったら死ぬの?さすがに首を切れば死ぬんだよね?
『いや、奴らは首を切っても死なない。額についている核を壊す必要がある。』
核?そんなもの彼女にはついていなかったように思うけど。
『普段は見えない。ただ、黒魔法を使った時だけそれは現れる。』
そうなの?わか…ってそんなに悠長に会話してる場合じゃなかった。
短剣で襲い来る植物どもを薙ぎ払う。固くて切ることは叶わない。無理に切ろうとするとおそらく短剣が折れるだろう。僕がまだ未熟だから…
「君がいけないんだよ。知っちゃいけないことを知ってしまったんだから。」
やっぱりあの時、盗み聞きしてたのばれてたか…
「知っちゃいけないことを誰が聞いているかも分からない場所で言ったシュガーさん達がいけないと思うけどっと…」
ああ、やっと着いた。ここでなら対等に勝負ができる。
そう思って僕は湖に足を踏み入れた。
にしても、まさかクロード侯爵家が関わっていたとは…どうりで兄さんが自ら動かないわけだ。高位貴族の屋敷に忍び込むなんて真似はできないだろうし。何かあることは分かっていてもそれが何かは分からなかったんだろう。でも予知眼の保持者が証言すれば捜査ぐらいはできる。シェナード王国での僕の立ち位置はそれほど大きい。
預けておいたレインを引き取りライズまで急ぐ。
兄さんの手紙には、すぐに屋敷に戻れという文言があった。何か嫌な予感がする。そう思って僕はレインを走らせできうる限りのスピードを出し、ライズへの道を進んだのだった。
♢
夜の山道を進むこと3時間。ルーンとも合流することができ、少し休憩をとることにした。
「ごめんね、ルーン、レイン。こんなことに巻き込んでしまって。」
ーだいジョうブ!
ーやクにたっタ?
「もちろん。君たちがいればなんだってできる気がするからね。」
「へぇ…そうなんだ。」
短剣をとっさに構えながら声のした方を向く。
直前まで気配を感じ取れなかった…いったい何者だ?
草影から出てきたのはシュガーさんだった。ピンク色の髪を揺らしながらこちらに歩いてくる様子はどこか不気味だった。
「シュガーさん?」
「あーそういう名前だったわね。」
そういう名前だった?偽名だったということか…
「シュガーの性格で戦った方がいいかな?うん、そうしよう!アークくん、君には今から気絶してもらいまーす!…黒魔法、毒花の舞!」
シュガーさんの体から植物が勢いよく出てくる。それは事故現場にあった植物と酷似していた。
「みんな、あれには毒がついてるから触っちゃいけない!」
『あれだ。あれだよ、邪鬼ってのは。なんで気づかなかったんだ、おまえ。』
いや、そんなこと言ってる場合じゃないだろ!どう考えても全員の命が危ない。
向かってくる植物は僕に絡みつこうとしているように見えた。
僕を拘束してどこかに連れていく気か?僕に火の適正があったらどんなによかったことか…
レインとルーンは敵から100m離れて追いかけてきて。二人は毒耐性がないから攻撃が当たれば毒で死ぬ可能性がある。周辺の魔物が僕らに気づいてやってくるかもしれないからそっちの対処は任せるよ。
「「わかっタ!」」
本当なら一緒に戦いたいし、戦えるだけの実力があるが、今回は違う。毒使い相手には分が悪い。
ツタのようにしなやかに動く植物を避けることだけに集中する。
「アークくーん、いや、カイくんって言った方がいいかなぁ?逃げるだけじゃ意味ないよー攻撃もしないと。」
僕がハルシャ家のものだと知っているのか!いつばれた?
『はじめからバレてたと思うぞ。半神が奴らを見つけることができるように奴らも神の気配を感じ取れる。しかも弱体化するからな。』
これで弱体化しているのか…やばいな…そういえばこの近くに湖があったはずだ。そこに移動しよう。ここでは植物が多すぎてどこから襲ってくるのか分かりずらいし、その上水魔法や氷魔法が使いやすい。
身体強化を足にかけて背後から僕を捕まえようとしてくる植物からすれすれで避けていく。
一度でもかすったら負け。なのに物凄く速いから何度も当たりそうになる。
「…っフローズン!」
ダメだ…凍らせようとしてもせいぜい2割ほどしか凍らない。しかも操っている植物は次から次へと増えていく。これはジリ貧だな。
足につけていた煙玉を3つ取り出し勢いよく地面に投げつけ、自分は煙の届かない空中へと跳ぶ。
「…植物に意志でもあるのかな?」
本体は煙の中にいるというのに攻撃の手が緩まない。視界を塞いでも無理なら他の感覚で僕を感知しているというのか?
『奴らを人間のものさしで量るな。』
そうは言っても、魔物でもないでしょうが…ていうかアレはどうやったら死ぬの?さすがに首を切れば死ぬんだよね?
『いや、奴らは首を切っても死なない。額についている核を壊す必要がある。』
核?そんなもの彼女にはついていなかったように思うけど。
『普段は見えない。ただ、黒魔法を使った時だけそれは現れる。』
そうなの?わか…ってそんなに悠長に会話してる場合じゃなかった。
短剣で襲い来る植物どもを薙ぎ払う。固くて切ることは叶わない。無理に切ろうとするとおそらく短剣が折れるだろう。僕がまだ未熟だから…
「君がいけないんだよ。知っちゃいけないことを知ってしまったんだから。」
やっぱりあの時、盗み聞きしてたのばれてたか…
「知っちゃいけないことを誰が聞いているかも分からない場所で言ったシュガーさん達がいけないと思うけどっと…」
ああ、やっと着いた。ここでなら対等に勝負ができる。
そう思って僕は湖に足を踏み入れた。
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