異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

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夏休みの延長戦~自分にどう向き合うか~

弱点

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「カイくんはたしか水と氷属性が得意なんだよね?湖に移動した程度で勝った気になるなんてちょっと自信過剰じゃないかな。どうせカイくんは負けるんだよ。私の黒魔法は強いから。余計なことしないで大人しく捕まってよ。」

「僕がいつ、君に勝つと言った?僕にはなぜ勝利と敗北の二つしか用意されてない?そして、どうしてそれを君が決める?戦わずして勝とうとするなんて僕と戦うのがよっぽど怖いみたいだね。そうでなければ、相手が受けるはずもない提案をわざわざ口にするなんてあまりにも浅はかだ。」

そう言った途端ツタの切っ先が僕の首をめがけて飛んでくる。

「やっぱり私、君が嫌いだな。あーあ…なんかしらけちゃった。殺さなければどんな状態でもいいって言ってたし四肢をもいでからあの方の元へ連れていってあげる。黒魔法、睡蓮の鎮魂曲レクイエム

湖一面に睡蓮の花が咲き誇る。その瞬間脳を揺さぶられるような大きな衝撃が僕を襲った。

これはいったい…動けない…どうしたらいい?脳に直接響いているのか?だとしたら防ぎようがない。

「辛いよねぇ?だって私のお花ちゃんは全部毒をもっているんだもん。当たり前だけれど、君に同情するわ。ハルシャ家に生まれなかったらこんな屈辱、受けずにすんだのにねぇ」

甘ったるい声でそう言って少しずつこちらに近づいてくる。

『あの女、喋り方が気持ち悪いな。カイ、とりあえず耳を塞げ。睡蓮から出る音に黒魔法がこもっている。長く聞けば命に関わるぞ。』

耳を塞げって言ったて、剣を手放すわけにはいかないし…ていうか耳を塞いだとしても完全には防げないでしょ…
かといって鼓膜を破るわけにはいかないし…

『この黒魔法はおそらく上にしかいかない。なら、どうすればいいか、もう分かるよな?』

気づけば湖に飛び込んでいた。

さっきまで頭に響いていた音がなくなったのはいいけど、これじゃあ近接戦は無理だ。服が濡れて気持ち悪いし、さっさと終わらせて帰りたい。

「水の中に隠れても無駄だよ。私の魔法を欺けない。」

その言葉通り、ツタは寸分違わぬ動きで僕を捕まえる動作を繰り返す。

水中にもぐれば動きは多少遅くなるようだけど、僕の動きも遅くなるから意味ないか…

1対1だとやっぱり分が悪い。相手の方が格上なのだから当たり前ではあるが。何とかしてこの状況を第三者に伝えることができればいいけど、ここからバルセまで馬で3時間かかる。助けが来るまでは待てない。ならどうすればいいのか。答えは簡単だ。倒すか全速力で逃るか、もしくは相手に撤退させるか。倒すという選択肢はひとまず捨てよう。ちっぽけなプライドのために命をかけたくない。…また、逃げる選択肢は有効のように思うかもしれないが、それは違う。レインたちを巻き込まずに逃げるということは走るということ。身体強化を使えば速度はこちらが優位になるが、逃げきる前に魔力が尽きる。だとすると残るはやはり相手に撤退させる、か。

どうやったら撤退してくれるのだろうか…
僕が彼女の立場なら絶対撤退なんかしないんだけど…

そう思って僕はため息をついた。


第三者視点

「ため息なんかついてどうしたの?やっぱり降参する?」

「ちょっと考え事をしていただけ。」

「いつまで余裕ぶれるのか楽しみだなぁ。あっ、そうだ、いいことを教えてあげる。さっきこの湖に毒を大量に流し込んだの。そろそろ効いてくるんじゃないかな。」

「あっそ。それが?毒耐性を持ってるから僕には効かないよ。それに、僕も気づいたことがあるんだ。君は水の中に入れないだろ?半神の近くにいれば弱体化するのなら半神の入っている水の中に入るなんて言語道断。そこの睡蓮も少し萎れてきているし、何より水面に当たったツタが先端から腐ってきてる。それなのに本体が水の中に入ったら、なんて火を見るよりも明らかだよ。」

そう言ってカイは水の中深くに潜り込んだ。

「くそっ!逃がさない!!黒魔法、百花繚乱!」

今にも枯れてしまいそうな睡蓮の間に色とりどりの花が咲き乱れる。花は空中に毒を撒き、その根っこはカイの元へ向かう。

カイは水をところどころ氷に変えることでなんとかそれらを防ぎながら泳いでいく。水中では詠唱のいる魔法は使えないためカイにとっても不利なのである。

生死をかけた鬼ごっこは数分続きカイも肺の空気が尽き欠けていることに顔を歪めた。その時だった。カイの意識がほんの一瞬逸れた瞬間に、カイの足にツタが絡みついてカイを水の外へと引っ張り上げた。

酸素が口に入ることで溺死することは免れたものの、湖の真上の空気は毒で汚染されていた。

カイは肺に入ってきた毒により思いきりせき込み吐血する。

「やーっと捕まえたわ。」

そう言って人ならざる化け物がにんまりと笑った。
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