異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

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アルバード王立高等学院~這い寄る魔の手~

通じるもの

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数日後
訓練場を貸し切って僕らは話し合っていた。
「…えっ、魔法の多重使用に成功した?!」

「しっ!声を落として。」

「すっ、すいません…でもどうやって?」

「夏休みに自分よりも格上の相手と戦った時に成功したんだ。その後、ステータスを確認したら『並列思考』というスキルが新たに増えていた。」

「並列思考って物事を二つ以上平行して考えることですよね?音楽を聴きながら食事をとるとか…。カイくんが言いたいこととは少し違うような…」

「誰がこんなスキルを作ったのかは知らないけど、間違いないはずだよ。だってその後から同時に違うことを考えられるようになったんだ。」

「脳が二つ存在しているような…そんな感じでしょうか?」

「うん。だから魔法を二つ同時に使えたんだと思う。」

「カイくんがその歳でそのスキルを取れたのなら他の人も取れるのではないでしょうか?もしそうなら魔法の多重使用なんて魔法に長けた者ならばできるはず。少なくとも何百年も生きている学院長先生や、半神として名高いルークス様ならばできている可能性が高いですが、現在そのような話は聞かされていない。やはり…うーん…」

「あの時、頭の血管が焼き切れそうになってとてつもなく痛かったんだ。このスキルを手に入れる過程で死ぬ人が続出したとか、魔法の多重使用を悪人に教えないためとか、そういった理由で言っていないのかもしれないよ。」

実際、お祖父様は多分使えると思う…勘だけど…

「…なら、私にもできるでしょうか?どのみちそのスキルの取得方法を卒論に書かなければいけませんし…」

「あー方法ならなんとなく分かるよ。頭を普段の二倍の速さで動かすだけだと思う。単純だけど結構難しいんだよね、これ。」

「…それ、結構難しいのレベルをこえてますよね?」

「今やってみる?鬼ごっこをしようよ。僕が鬼で君が逃げる方。10秒数えるから逃げてね。いーち…」

「えっ、もう始めるんですか?!」

そう言ってアイリスが僕から離れていく。

「きゅーう、じゅう。魔法もありのルールだから本気だしてね。僕も本気出すからっ!」

そう言って僕は地面を蹴った。

いや、蹴ろうとした。地面からなぜか巨大な氷のとげがでてきたおかげで後ろに跳ぶはめになったが。

地面にある水分で作ったのだろうか?一体いつそんな高等技術を……あぁ、そういえば彼女の二つ名は氷の天使だったな。

確実に僕の行く手を阻むように狙ってきてる。だけど、僕の力を見誤ってるな。

身体強化を使いアイリスの方に向かって高く跳ぶ。

着地点にある氷に向かって草魔法で出したツタを巻き付け氷と接触している部分のみ氷魔法を使い滑らないよう接着する。

アイリスから10mほど離れたところに着地すると、次は上空から無数の氷の刃がものすごい勢いで振り落ちてくる。それを剣でいなしながらアイリスに向かって僕も同じことをした。

すると、僕に向かっていた氷が全て消えた。攻撃しながら防御するには魔法の多重使用が必須だからしかたがないけど。

身体能力は圧倒的に僕の方が上だからアイリスは僕を近づけさせないという選択肢しかない。だけど今それは壊れてしまった。その瞬間、僕の勝ちが確定する。

「はい、僕の勝ち。」

そう言ってアイリスの肩に手を置いた。

「…なんとなく分かったかもしれません。ただ、この程度の練習じゃあダメなんだと思います。自分の命が危うい時じゃないと真の力は発揮できないといいますし…」

「…そんな時来ない方がいいと思うけどね。」

「それはそうですね。卒論にはなんて書きましょうか…」

「戦闘シーンを事細かに書いておくよ。それに、これはただのついでじゃん。書かなければいけないわけじゃない。僕らの本命は魔法の謎を論理的に解説すること。その文章はもう出来上がっているんだから本来は提出できるんだよ。どうせ僕も君も宮仕えするわけじゃないんだし、卒論なんてテキトウにやって出せばいいと思うんだけどね。いやーそう思ってたんだけど、まさか叔父様に法を犯した罰として卒論は真面目にやれって言われるとは。」

「カイ君がそれを真面目に聞くとは思いませんでしたよ。」

「だって叔父様が怒ると怖いんだもん。お祖父様とは違う怖さがある。あの人は怒らせてはいけない人だってこの前分かったよ。」

そう言ってぼんやりと青い空を見上げた。

「…ねぇ、アイリス。君は何か感じないかな?」

「抽象的ですね。もう少し具体的にお願いします」

「僕らの受ける卒業試験、何かある気がするんだ。とてつもなく禍々しい黒い何かがこっちを見ている気がする。」

「…奇遇ですね。カイ君とは少し感じ方が違いますが、何か恐ろしいものが近づいてきている感じがします。それに、、どこか恐ろしく懐かしい感じもするんです。以前にどこかで会っているような、そんな感じが。」

そう言ったアイリスの顔はどこか苦し気に歪んでいた。
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