298 / 327
絶望に咲く彼岸花
絶望の淵に沈んだ希望
しおりを挟む
アイリス視点
『アイリス、きみは…君は神の愛し子なんだね。』
そう言われたとき、心臓が少しドキッとした。問いかけではなく断定の口調で言ってきたということは、確信しているんだろう。
意を決してカイくんの方を向き、困ったように笑った。
『…そっか。僕らはつくづく神に縁があるね。』
そう言ってカイくんは少し考えるような仕草をした。
そして一瞬目を見開いて顔をあげたと思えば、ゾンビを思いきり殴りつけた。
カイくんに殴られたゾンビは殴られた部分から徐々に体がなくなっていき、消滅した。
「やっぱりね。奴ら、黒魔法で作られている。前に黒魔法を使うヤツと戦ったんだけど、僕が浸かった湖に入ることすら嫌がったんだ。」
そう淡々と私に告げるカイくんの表情からは一切の感情が消えていた。それは、初めて会った時のライくんにとてもよく似ていた。表情がないのに、全身から怒りを表していて、気迫だけで人を殺せそうなオーラが出ていた。
『カイくん、大丈夫ですか?』
私がそう聞くとカイくんは一瞬驚いたような顔をした。
『ごめんね、アイリス。おそらく僕のせいで君は今ここにいる。』
そうか…カイくんは勘違いをしてるんだ。私が今ここにいるのはカイくんのせいじゃない。
『いいえ、違いますよ。どうしてカイくんのせいになるんですか?あなたを助けたいと思って、それを行動に移したのは私の判断です。そこには何の強制力もありません。それに、ここで起こる全てのことは誘拐犯のせいです。カイくんが気に病むことはありません。【宿命】だとか【運命】なんて言葉は案外壊れやすくて脆いものです。私達の選択次第で簡単に変えることができるんですよ。』
遠い遠い昔に言われた言葉。誰に言われたかもあまり覚えていないけど、今この状況で言わなければならないと思った。
「…そうだね、君言う通りかもしれない。それでも僕は許せないんだ。」
そう言ってカイくんは何かに対する怒りを発散するように、片っ端からゾンビ達を殴りだした。
『カイくん、ゾンビを倒すすべが見つかったんですから、玄関から出る方がいいんじゃないですか?』
『たしかに、相手が転移系の魔道具があることを知っていたらまずいしね。じゃあ僕が君を抱えるから君は魔法で向かってくるゾンビ達の相手を頼める?』
『ええ、分かりました。』
私がそう言うとカイくんは私を抱えて二階から一階に飛び降りた。
ゾンビ達の頭や肩を足で踏みつけてジャンプしながら玄関まで近づくその最中に私が玄関付近に詰まっているゾンビを広範囲魔法を使い蹂躙する。
『ありがとう、助かった。』
玄関前のゾンビがいなくなったのを確認し、カイくんが扉を越えたその瞬間、瞬きの間に場所が変わった。
「ここは一体…」
そこは森の中だった。カイくんの顔を見ると少し青ざめているのが分かった。
「思い出した。」
そう一言だけ呟いてカイくんは、私を突き飛ばした。
♢
「玄関から出た場合を考えておいて正解でした。魔道具を使って脱出後、実はその魔道具は罠だと分かって絶望する顔が見たかったので残念ではありますが。…それに、夢の内容を記憶できないように操作したにも関わらず、覚醒に近づいていくとは思いもしませんでした。褒めてさしあげます。」
リグナの前には痛みに苦悶の表情を表したカイがいた。
「これはただの挨拶です。そこのお嬢さんの腕を取るつもりで動いたのですが、まさか私の動きに反応できるとは思ってもみませんでした。そのおかげであなたの腕が取れましたが。」
リグナはカイのちぎれた右腕を掴んで握りつぶした。
「痛いでしょう?苦しいでしょう?あなたがそこのお嬢さんを差し出したら治してあげましょう。どうです?悪くない話だと思うのですが。」
「…アイリス、逃げるんだ。今すぐに!」
カイがそう言った瞬間、リグナは面白くなさそうな顔をしてアイリスに素早く近づき鋭い切っ先でアイリスの体を引き裂いた。
大量の血が飛び散りアイリスの体を真っ赤に染め上げた。誰がどう見ても致命傷と言わざるを得ない傷を負ったアイリスは意識を手放しパタリとその場に倒れてしまった。
「…神の愛し子は我々の好物だったのですが残念です。今回の目的はあなたのみ。愛し子はまた数年待てば出てくるでしょう。…さて、残るはあなただけになりましたよ。」
「…っ!」
カイは残った力を振り絞り、左腕でアイリスを抱え上げ全速力でその場を離れた。
「まだそんな力が残っていたとは、、まあいいでしょう。時間はまだたっぷり残っていますし。より深い絶望を与えれば私の力も強くなる。それに、屋敷にいたのはただの駄作、私が見せたかったものはまだあるんですよ。」
そう言ってリグナはカイが走っていった方を見つめてうっすらと笑みを浮かべたのだった。
『アイリス、きみは…君は神の愛し子なんだね。』
そう言われたとき、心臓が少しドキッとした。問いかけではなく断定の口調で言ってきたということは、確信しているんだろう。
意を決してカイくんの方を向き、困ったように笑った。
『…そっか。僕らはつくづく神に縁があるね。』
そう言ってカイくんは少し考えるような仕草をした。
そして一瞬目を見開いて顔をあげたと思えば、ゾンビを思いきり殴りつけた。
カイくんに殴られたゾンビは殴られた部分から徐々に体がなくなっていき、消滅した。
「やっぱりね。奴ら、黒魔法で作られている。前に黒魔法を使うヤツと戦ったんだけど、僕が浸かった湖に入ることすら嫌がったんだ。」
そう淡々と私に告げるカイくんの表情からは一切の感情が消えていた。それは、初めて会った時のライくんにとてもよく似ていた。表情がないのに、全身から怒りを表していて、気迫だけで人を殺せそうなオーラが出ていた。
『カイくん、大丈夫ですか?』
私がそう聞くとカイくんは一瞬驚いたような顔をした。
『ごめんね、アイリス。おそらく僕のせいで君は今ここにいる。』
そうか…カイくんは勘違いをしてるんだ。私が今ここにいるのはカイくんのせいじゃない。
『いいえ、違いますよ。どうしてカイくんのせいになるんですか?あなたを助けたいと思って、それを行動に移したのは私の判断です。そこには何の強制力もありません。それに、ここで起こる全てのことは誘拐犯のせいです。カイくんが気に病むことはありません。【宿命】だとか【運命】なんて言葉は案外壊れやすくて脆いものです。私達の選択次第で簡単に変えることができるんですよ。』
遠い遠い昔に言われた言葉。誰に言われたかもあまり覚えていないけど、今この状況で言わなければならないと思った。
「…そうだね、君言う通りかもしれない。それでも僕は許せないんだ。」
そう言ってカイくんは何かに対する怒りを発散するように、片っ端からゾンビ達を殴りだした。
『カイくん、ゾンビを倒すすべが見つかったんですから、玄関から出る方がいいんじゃないですか?』
『たしかに、相手が転移系の魔道具があることを知っていたらまずいしね。じゃあ僕が君を抱えるから君は魔法で向かってくるゾンビ達の相手を頼める?』
『ええ、分かりました。』
私がそう言うとカイくんは私を抱えて二階から一階に飛び降りた。
ゾンビ達の頭や肩を足で踏みつけてジャンプしながら玄関まで近づくその最中に私が玄関付近に詰まっているゾンビを広範囲魔法を使い蹂躙する。
『ありがとう、助かった。』
玄関前のゾンビがいなくなったのを確認し、カイくんが扉を越えたその瞬間、瞬きの間に場所が変わった。
「ここは一体…」
そこは森の中だった。カイくんの顔を見ると少し青ざめているのが分かった。
「思い出した。」
そう一言だけ呟いてカイくんは、私を突き飛ばした。
♢
「玄関から出た場合を考えておいて正解でした。魔道具を使って脱出後、実はその魔道具は罠だと分かって絶望する顔が見たかったので残念ではありますが。…それに、夢の内容を記憶できないように操作したにも関わらず、覚醒に近づいていくとは思いもしませんでした。褒めてさしあげます。」
リグナの前には痛みに苦悶の表情を表したカイがいた。
「これはただの挨拶です。そこのお嬢さんの腕を取るつもりで動いたのですが、まさか私の動きに反応できるとは思ってもみませんでした。そのおかげであなたの腕が取れましたが。」
リグナはカイのちぎれた右腕を掴んで握りつぶした。
「痛いでしょう?苦しいでしょう?あなたがそこのお嬢さんを差し出したら治してあげましょう。どうです?悪くない話だと思うのですが。」
「…アイリス、逃げるんだ。今すぐに!」
カイがそう言った瞬間、リグナは面白くなさそうな顔をしてアイリスに素早く近づき鋭い切っ先でアイリスの体を引き裂いた。
大量の血が飛び散りアイリスの体を真っ赤に染め上げた。誰がどう見ても致命傷と言わざるを得ない傷を負ったアイリスは意識を手放しパタリとその場に倒れてしまった。
「…神の愛し子は我々の好物だったのですが残念です。今回の目的はあなたのみ。愛し子はまた数年待てば出てくるでしょう。…さて、残るはあなただけになりましたよ。」
「…っ!」
カイは残った力を振り絞り、左腕でアイリスを抱え上げ全速力でその場を離れた。
「まだそんな力が残っていたとは、、まあいいでしょう。時間はまだたっぷり残っていますし。より深い絶望を与えれば私の力も強くなる。それに、屋敷にいたのはただの駄作、私が見せたかったものはまだあるんですよ。」
そう言ってリグナはカイが走っていった方を見つめてうっすらと笑みを浮かべたのだった。
2
あなたにおすすめの小説
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜
夜夢
ファンタジー
主人公【相田理人(そうた りひと)】は帰宅後、自宅の扉を開いた瞬間視界が白く染まるほど眩い光に包まれた。
次に目を開いた時には全く見知らぬ場所で、目の前にはまるで映画のセットのような王の間が。
これは異世界召喚かと期待したのも束の間、理人にはジョブの表示がなく、他にも何人かいた召喚者達に笑われながら用無しと城から追放された。
しかし理人にだけは職業が見えていた。理人は自分の職業を秘匿したまま追放を受け入れ野に下った。
これより理人ののんびり異世界冒険活劇が始まる。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる