異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

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絶望に咲く彼岸花

絶望の淵に沈んだ希望

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アイリス視点

『アイリス、きみは…君は神の愛し子なんだね。』

そう言われたとき、心臓が少しドキッとした。問いかけではなく断定の口調で言ってきたということは、確信しているんだろう。

意を決してカイくんの方を向き、困ったように笑った。

『…そっか。僕らはつくづく神に縁があるね。』

そう言ってカイくんは少し考えるような仕草をした。

そして一瞬目を見開いて顔をあげたと思えば、ゾンビを思いきり殴りつけた。

カイくんに殴られたゾンビは殴られた部分から徐々に体がなくなっていき、消滅した。

「やっぱりね。奴ら、黒魔法で作られている。前に黒魔法を使うヤツと戦ったんだけど、僕が浸かった湖に入ることすら嫌がったんだ。」

そう淡々と私に告げるカイくんの表情からは一切の感情が消えていた。それは、初めて会った時のライくんにとてもよく似ていた。表情がないのに、全身から怒りを表していて、気迫だけで人を殺せそうなオーラが出ていた。

『カイくん、大丈夫ですか?』

私がそう聞くとカイくんは一瞬驚いたような顔をした。

『ごめんね、アイリス。おそらく僕のせいで君は今ここにいる。』

そうか…カイくんは勘違いをしてるんだ。私が今ここにいるのはカイくんのせいじゃない。

『いいえ、違いますよ。どうしてカイくんのせいになるんですか?あなたを助けたいと思って、それを行動に移したのは私の判断です。そこには何の強制力もありません。それに、ここで起こる全てのことは誘拐犯のせいです。カイくんが気に病むことはありません。【宿命】だとか【運命】なんて言葉は案外壊れやすくて脆いものです。私達の選択次第で簡単に変えることができるんですよ。』

遠い遠い昔に言われた言葉。誰に言われたかもあまり覚えていないけど、今この状況で言わなければならないと思った。

「…そうだね、君言う通りかもしれない。それでも僕は許せないんだ。」

そう言ってカイくんは何かに対する怒りを発散するように、片っ端からゾンビ達を殴りだした。

『カイくん、ゾンビを倒すすべが見つかったんですから、玄関から出る方がいいんじゃないですか?』


『たしかに、相手が転移系の魔道具があることを知っていたらまずいしね。じゃあ僕が君を抱えるから君は魔法で向かってくるゾンビ達の相手を頼める?』

『ええ、分かりました。』

私がそう言うとカイくんは私を抱えて二階から一階に飛び降りた。

ゾンビ達の頭や肩を足で踏みつけてジャンプしながら玄関まで近づくその最中に私が玄関付近に詰まっているゾンビを広範囲魔法を使い蹂躙する。

『ありがとう、助かった。』

玄関前のゾンビがいなくなったのを確認し、カイくんが扉を越えたその瞬間、瞬きの間に場所が変わった。

「ここは一体…」

そこは森の中だった。カイくんの顔を見ると少し青ざめているのが分かった。

「思い出した。」

そう一言だけ呟いてカイくんは、私を突き飛ばした。


「玄関から出た場合を考えておいて正解でした。魔道具を使って脱出後、実はその魔道具は罠だと分かって絶望する顔が見たかったので残念ではありますが。…それに、夢の内容を記憶できないように操作したにも関わらず、覚醒に近づいていくとは思いもしませんでした。褒めてさしあげます。」

リグナの前には痛みに苦悶の表情を表したカイがいた。

「これはただの挨拶です。そこのお嬢さんの腕を取るつもりで動いたのですが、まさか私の動きに反応できるとは思ってもみませんでした。そのおかげであなたの腕が取れましたが。」

リグナはカイのちぎれた右腕を掴んで握りつぶした。

「痛いでしょう?苦しいでしょう?あなたがそこのお嬢さんを差し出したら治してあげましょう。どうです?悪くない話だと思うのですが。」

「…アイリス、逃げるんだ。今すぐに!」

カイがそう言った瞬間、リグナは面白くなさそうな顔をしてアイリスに素早く近づき鋭い切っ先でアイリスの体を引き裂いた。

大量の血が飛び散りアイリスの体を真っ赤に染め上げた。誰がどう見ても致命傷と言わざるを得ない傷を負ったアイリスは意識を手放しパタリとその場に倒れてしまった。

「…神の愛し子は我々の好物だったのですが残念です。今回の目的はあなたのみ。愛し子はまた数年待てば出てくるでしょう。…さて、残るはあなただけになりましたよ。」

「…っ!」

カイは残った力を振り絞り、左腕でアイリスを抱え上げ全速力でその場を離れた。

「まだそんな力が残っていたとは、、まあいいでしょう。時間はまだたっぷり残っていますし。より深い絶望を与えれば私の力も強くなる。それに、屋敷にいたのはただの駄作、私が見せたかったものはまだあるんですよ。」

そう言ってリグナはカイが走っていった方を見つめてうっすらと笑みを浮かべたのだった。
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