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アルバード王立高等学院~新しい風~
学院長
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パッと眼を開けると真っ白な部屋にいた。
ズキズキと痛む頭を押さえてベッドから出る。
パーテーションを開け一歩を踏み出そうとしたその時、眩暈に襲われふらついてしまった。
そんな僕を誰かが支える。
「…こらっ…安静にしておかないとダメよ。」
チラッと顔を見るとそれはそれは美しい顔をしたエルフの女性だった。
その恐ろしいほどの美しさよりも気配に気づけなかった自分にゾッとした。
この人はいったい…うん?なんか見覚えが…
「…もしかして学院長ですか?」
彼女は軽々と僕を抱き上げベッドにおろす。
「ええそうよ。カイくん、君は自分が何をしたか分かってる?」
何をしたか?えっ、何かやらかしたっけ??
心当たりがなく首を傾げていると上からタメ息が降ってきた。
「魔力枯渇状態のときに無理やり身体強化魔法を使おうとしたでしょう?」
「あの時がむしゃらに戦っていたんで気を失う前後のことをあまりよく覚えていないんです。」
「…そうなのね。まあいいわ。魔力枯渇状態で魔法を無理に使おうとすると心臓が破裂する可能性があるから今後はやらないように。」
…心臓が破裂…いやな言葉だ
「分かりました。」
「あら、君は意外と素直なのね。ルークス、君のお祖父様ね、彼なんかは頑固で素直じゃなかったから苦労したのよ。まっ、それでなくともハルシャ家の者には毎度毎度頭を悩まされてきたんだけど。」
なんかすみません…
「君は1週間も眠っていたの。後遺症もなく五体満足で目を覚ましたんだからこれからは自分をもっと大切になさい。どんな過去があろうと今の君には怪我をしたら心配してくれる人達がいるんだから。」
「…はい。」
僕がそう返事すると彼女は僕の頭をぐしゃっと撫でた。
「前に進もうと頑張っている君はとても偉いわ。でもね、ちょっと焦りすぎよ。まだカイくんは12歳なのよ。私は昔から優秀で皆から頼りにされていた君のお母さんや聖女様もよく知っているけれど、12の時なんてお転婆な普通の女の子だったわよ。もう二度とこのような事が起こらないようにまずは感情の制御が出来るよう訓練した方がいいわ。」
「…感情の制御ですか?」
「ええ。暇があったら院長室に来てくれる?一緒に訓練しましょ。」
「…どうしてそこまでしてくれるんです?」
ただより高いものはない、、はずである
「君じゃなくても私はこの提案をしたよ。…まあ言い方はもっと違っていたと思うけど。」
「…?」
「ルークスが君を叱る時に声を荒げたり怒った顔をしたらフラッシュバックを起こして過去のトラウマを引きずり出してしまうかもしれないから止めてくれと言ってきてね。」
「…自分に向けられていなかったら大きい声や怒声はなんとか克服することができたんですけどね。」
「それだけでも大きな進歩よ。それじゃあ私はそろそろ行くわね。…あっ、言い忘れていたけど遅刻や無断欠席、宿題忘れはほどほどにしなさいよ。」
「…ダメだとは言わないんですね。」
「…残酷なことに世の中結果が全てなのよ。前の試験で1位を取った人には何も言えないわ。」
そう言って彼女は手をヒラヒラさせて出ていった。
◇
「学院長、彼の容態はどうでした?」
「私がいなかったらと思うとゾッとしたぐらいには最悪だったわ。」
「どうしてあんな無茶をしたんでしょうかね。魔力枯渇状態で魔法を無理に使おうとすると四肢が吹っ飛んだり最悪心臓が破裂するなんて子どもでも知ってることでしょうに。」
直前にカイくんのとは違う別の誰かの魔力が見えたのよね
という言葉はぐっと飲み込んだ。
なぜなら魔力が見える能力のことは国家機密だからだ。
知っているのは国王と4人の公爵家当主のみである。
「カイくんは知らなかったんじゃないかしら」
「…ルークス・ハルシャがそんな基礎を教えてないとは思えませんが…」
「あれは物心がついた歳ぐらいに親が教えるものよ。基礎すぎて魔法書にも書いてないぐらいだから知らないのも無理ないでしょう。」
カイくんの母親はカイくんが生まれてすぐに亡くなったと聞いている。あのルークスもまさか父親がそんな大事なことを教えてないとは思ってもいなかったんだろう
孤児でさえも浮浪者から教わるのだ。
「そうだ、マルファ先生に言伝てを頼みたいんだけどいいかしら?」
「いいですよ。なんですか?」
「ルシアン・ハルシャへの停学措置は今日をもって終了すると伝えておしいの。」
「…もういいんですか?」
「ええ、まあ。今回は他者への不要な扇動や焚き付け程度だったからね。本来ならそもそも停学にはならないんだけど日頃の行いが悪いからね、彼。」
「停学はこれで7回目でしたっけ?」
「停学はね。学院長からの厳重注意っていうワンランク下のやつは二桁を優に超えているわよ。」
「…さすがですね。分かりました、伝えておきます。」
そう言ってお辞儀をする。
自分の右腕が出ていったことを確認して私は深いタメ息をついた。
ここ数ヶ月で教員と生徒の中から怪しい者は粗方選別できた。
後は王家の真実眼で犯人を当てるだけ。なのにどうしてこんなに胸騒ぎがするのかしら。まるで何か重要なものを見逃しているみたいに感じる。
カイくんの中に一瞬現れた謎の魔力と何か関係があるのだろうか?
あの魔力には特に悪い感じはしなかったけど…ただなぜか酷い悲しみを感じたのよね。
酷い死にかたをした亡霊のと少し似ている奇妙な魔力。
一応彼に報告しておきましょうか…
そう思って机の中にしまっていた羊皮紙を取り出したのだった。
ズキズキと痛む頭を押さえてベッドから出る。
パーテーションを開け一歩を踏み出そうとしたその時、眩暈に襲われふらついてしまった。
そんな僕を誰かが支える。
「…こらっ…安静にしておかないとダメよ。」
チラッと顔を見るとそれはそれは美しい顔をしたエルフの女性だった。
その恐ろしいほどの美しさよりも気配に気づけなかった自分にゾッとした。
この人はいったい…うん?なんか見覚えが…
「…もしかして学院長ですか?」
彼女は軽々と僕を抱き上げベッドにおろす。
「ええそうよ。カイくん、君は自分が何をしたか分かってる?」
何をしたか?えっ、何かやらかしたっけ??
心当たりがなく首を傾げていると上からタメ息が降ってきた。
「魔力枯渇状態のときに無理やり身体強化魔法を使おうとしたでしょう?」
「あの時がむしゃらに戦っていたんで気を失う前後のことをあまりよく覚えていないんです。」
「…そうなのね。まあいいわ。魔力枯渇状態で魔法を無理に使おうとすると心臓が破裂する可能性があるから今後はやらないように。」
…心臓が破裂…いやな言葉だ
「分かりました。」
「あら、君は意外と素直なのね。ルークス、君のお祖父様ね、彼なんかは頑固で素直じゃなかったから苦労したのよ。まっ、それでなくともハルシャ家の者には毎度毎度頭を悩まされてきたんだけど。」
なんかすみません…
「君は1週間も眠っていたの。後遺症もなく五体満足で目を覚ましたんだからこれからは自分をもっと大切になさい。どんな過去があろうと今の君には怪我をしたら心配してくれる人達がいるんだから。」
「…はい。」
僕がそう返事すると彼女は僕の頭をぐしゃっと撫でた。
「前に進もうと頑張っている君はとても偉いわ。でもね、ちょっと焦りすぎよ。まだカイくんは12歳なのよ。私は昔から優秀で皆から頼りにされていた君のお母さんや聖女様もよく知っているけれど、12の時なんてお転婆な普通の女の子だったわよ。もう二度とこのような事が起こらないようにまずは感情の制御が出来るよう訓練した方がいいわ。」
「…感情の制御ですか?」
「ええ。暇があったら院長室に来てくれる?一緒に訓練しましょ。」
「…どうしてそこまでしてくれるんです?」
ただより高いものはない、、はずである
「君じゃなくても私はこの提案をしたよ。…まあ言い方はもっと違っていたと思うけど。」
「…?」
「ルークスが君を叱る時に声を荒げたり怒った顔をしたらフラッシュバックを起こして過去のトラウマを引きずり出してしまうかもしれないから止めてくれと言ってきてね。」
「…自分に向けられていなかったら大きい声や怒声はなんとか克服することができたんですけどね。」
「それだけでも大きな進歩よ。それじゃあ私はそろそろ行くわね。…あっ、言い忘れていたけど遅刻や無断欠席、宿題忘れはほどほどにしなさいよ。」
「…ダメだとは言わないんですね。」
「…残酷なことに世の中結果が全てなのよ。前の試験で1位を取った人には何も言えないわ。」
そう言って彼女は手をヒラヒラさせて出ていった。
◇
「学院長、彼の容態はどうでした?」
「私がいなかったらと思うとゾッとしたぐらいには最悪だったわ。」
「どうしてあんな無茶をしたんでしょうかね。魔力枯渇状態で魔法を無理に使おうとすると四肢が吹っ飛んだり最悪心臓が破裂するなんて子どもでも知ってることでしょうに。」
直前にカイくんのとは違う別の誰かの魔力が見えたのよね
という言葉はぐっと飲み込んだ。
なぜなら魔力が見える能力のことは国家機密だからだ。
知っているのは国王と4人の公爵家当主のみである。
「カイくんは知らなかったんじゃないかしら」
「…ルークス・ハルシャがそんな基礎を教えてないとは思えませんが…」
「あれは物心がついた歳ぐらいに親が教えるものよ。基礎すぎて魔法書にも書いてないぐらいだから知らないのも無理ないでしょう。」
カイくんの母親はカイくんが生まれてすぐに亡くなったと聞いている。あのルークスもまさか父親がそんな大事なことを教えてないとは思ってもいなかったんだろう
孤児でさえも浮浪者から教わるのだ。
「そうだ、マルファ先生に言伝てを頼みたいんだけどいいかしら?」
「いいですよ。なんですか?」
「ルシアン・ハルシャへの停学措置は今日をもって終了すると伝えておしいの。」
「…もういいんですか?」
「ええ、まあ。今回は他者への不要な扇動や焚き付け程度だったからね。本来ならそもそも停学にはならないんだけど日頃の行いが悪いからね、彼。」
「停学はこれで7回目でしたっけ?」
「停学はね。学院長からの厳重注意っていうワンランク下のやつは二桁を優に超えているわよ。」
「…さすがですね。分かりました、伝えておきます。」
そう言ってお辞儀をする。
自分の右腕が出ていったことを確認して私は深いタメ息をついた。
ここ数ヶ月で教員と生徒の中から怪しい者は粗方選別できた。
後は王家の真実眼で犯人を当てるだけ。なのにどうしてこんなに胸騒ぎがするのかしら。まるで何か重要なものを見逃しているみたいに感じる。
カイくんの中に一瞬現れた謎の魔力と何か関係があるのだろうか?
あの魔力には特に悪い感じはしなかったけど…ただなぜか酷い悲しみを感じたのよね。
酷い死にかたをした亡霊のと少し似ている奇妙な魔力。
一応彼に報告しておきましょうか…
そう思って机の中にしまっていた羊皮紙を取り出したのだった。
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