異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明

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最後の夏休み~揺れる心~

死の薬

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次の日
「着いたよ。二人とも降りて。二人のご両親に事情を説明する必要があるから家まで案内してくれる?」

「あっ、僕たち孤児院で過ごしているんです。だから親はいません。」

「…そう。僕らと一緒だね。孤児院までの道のりは分かるから行こうか。」

孤児院につくとうろたえている大人がたくさんいた。とりあえず近くの女性に話しかける。

「すみませーん!院長先生はいらっしゃいますか?」

「すいません、今取り込んでて…ってアンタたち!!どこいってたのよ!!皆寝ずに二人のことを探してたんだからね!!」

「ごっ、ごめんなさい。フェル姉さんの病気を治す薬草を森で探してたんだ。」

「森?なんでそんな危ないことを!アルバイドに頼めば薬草ぐらい取ってくれるわよ。」

アルバイド?確か依頼を受ける前にギルドで助けてくれたBランク冒険者の名前と一致するな…

「兄さんはフェル姉さんの病気のことでたくさん迷惑をかけてるんだ。今使ってる鎮痛薬だって兄さんの貯金から出してくれているんだよ。もう、迷惑かけれないよ…」

「シュウ、僕は迷惑だなんて思ってないよ。」

後ろを振り返るとやはりあの時の冒険者がいた。

「でも、あのお金は兄さんがいつか世界中を旅するために一生懸命貯めていたお金じゃん!」

「フェルが病に苦しむこととお金を守ることは同じ天秤にはのらないよ。それに、お金なんてまた貯めればいいじゃないか。そんなことのために家族を見捨てたりはしない。さあ、シュウたちは早く中の子たちに戻ってきたことを伝えに行っておいで。皆首を長くして待っていたんだから。」

「…ぐすん…分かった。カイさま、コウさん、エレンさん、イリアスさん、ユウリさん、助けてくれてありがとうございました。」

そう言って妹の手を握り孤児院の中へと入っていく。
それを見届けた後、アルバイドは僕に向かって跪いた。

「弟妹がご迷惑をおかけしました。…なにか粗相などはいたしませんでしたでしょうか?」

「顔を上げて。確かに領外だと不敬罪は適応される。だけど、あんな小さな子どもにまで礼儀を求めるほど僕は子どもじゃない。僕の衣服や体に許可なく触れたこと、僕より先に話したこと、、まあ挙げればきりがなくなるけど、今回は全部不問にする。ただ、他の貴族に同じ振る舞いをしないよう教えておくように。」

「かしこまりました。」

「それで、フェルという人は何の病なの?もしかしたらイリアスが治せるかも。」

「カイ、ヒーラーは傷しか癒せないぞ。」

「知ってるよ。でも聞いてみないと分からないでしょ?」

「症状が今までに見たことがないものでして、病かどうかも分からないのです。人には感染しないので感染症の類ではないと思われますが…」

「病室にお邪魔してもいいかな?」

「もちろんです。案内いたします。」

部屋には16歳ぐらいの少女が寝ていて少女の左手から首にかけて紫のあざ、が出ていた。
この症状…まさか…

『お前が思っているであっている。それは違法薬物の副作用だ。』

やっぱり…でも症状が少し違う。あれは体全体に症状がでる。しかも一晩のうちに。その上、体に症状が出た次の日には死ぬのがこの副作用の特徴だ。シュウに出会う前にこの症状が出ていたのだとしたら、もうとっくに死んでいるはず。…ていうかそもそも片腕だけしかでないのはおかしい。

「うーん、この症状は僕も見たことがないな。」

まあイリアスが知らないのも無理はない。それぐらい厳しく取り締まっているのだ、死薬モルスというものは。

『それなのになぜおまえは知っているんだ?』

…知ってて聞くなよな。死薬モルスの製造元は故郷フィレンじゃないか。つまり僕の父親が作ってたってこと。使用人にも一定数出回ってた時期もあったんだよ。

『…アホじゃないか、お前の父親は。』

…それは僕も思っているよ。

「イリアス、左手付近に解毒魔法かけてあげて。」

「えっ、これ毒なのか?」

「まあまあ、とりあえずやってみて。」

「分かった。…解毒ポイズンキュア

イリアスの魔法はそこら辺の神父やヒーラーよりもはるかに効く。案の定少女の左手は元の色に戻った。

「えっ、なんで…」

「もしかして、この人左利きだったりしない?」

「ええ、そうです。よくわかりましたね。」

左手でモルスを触ったということか?そうでないと説明がつかない。

「なあカイ、そろそろ説明してくれへんか?なんでイリアスの解毒魔法で治ったのか。」

「推測で申し訳ないんだけど、おそらくモルスの急性中毒だ。」

「モルスってたしか体内に入れ過ぎたら死ぬやつだよな?」

「さすがだね、イリアス。モルスというのは、帝国の出身、特に大きな街出身の人なら知ってる薬物のことだよ。体の許容量を超えて摂取すると体中が一晩で紫色に変色したのちに死亡する。変色してからはおよそ12時間以内に死ぬことも分かっている。」

「しかし、フェルがこの状態になったのはおよそ1週間前です。カイさまのおっしゃることとは合いません。」

「うん。だって摂取の仕方が違うんだもん。モルスは通常火であぶって毒素をだいぶ落としてから使用する。でも、彼女はそうしなかった。なぜなら落ちていたモルスを拾っただけだから。」

そう言って僕は少女の方を見た。
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