女神さまの代理人 ~暗黒企業から女神の下僕に出世しました~

六倍酢

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第一章

SFな女神

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 うーん、今度は都会だなあ。

「お前の故郷と、同じくらいの技術があるだろ」
 女神さまは笑顔で言ったが、いやこれもっと進んでますって!
 だって、車が空飛んでるし。

 教会でも御神木でもなく、今度は湖の中に降り立った。
 なんつーか、神性のあるとこでないと難しいらしい。

「いやー、良かった間に合ったな。この星の者共は、ここ五千年くらい祈ったりしてないから、手遅れになるとこだった」

 女神さまは、全知ではない。
 だから、誰も祈らなければ世界の危険にも気付かない。

 ずぶ濡れの服を、振り回して乾かす。
 女神さまの不思議な服は、猫の様に体を振ると綺麗に乾いたようだ。
 ひらっとめくれる裾が悩ましい。
 太ももの上の方まで見えても、まったく気にしないんすね、さすが神さま。

「髪の色は何でもよかろう。どうせ、それどころではないし」
 意味深な事を言った女神さまと共に歩き出す。

 ユニコーンのユニコ――命名俺――は、不可視の術をかけられて湖の近くに残す。
 のんびり草でも食っててくれ。

 車が飛んでる方角、人家が在る方へ進むと、一台の車が降りてきた。

「ひょー見ろ! べっぴんだぜ!」
「うお、ウルトラレアじゃん!」
「このおっさん、殴ってもいいかな?」

 そういや、俺の姿は三十がらみの冴えないおっさんのままだ。
 女神さまがまったく気にしないので、凡庸な黒髪黒目の若者に変えてもらっていない。
 今度、頼んでみよう。

 車から降りてきた若者達の目的は明白。
 どんな世界のどの時代にも、こういうのは居るんだなぁとは思うが、いささか荒んでませんかね?
 これだけ技術が発展してるのに。

 四人の若者の目は、三人が性欲にまみれ、残りの一人は武器を取り出し、凶暴性に溢れている。
 世紀末かよ、マジで。

 だが女神さまは、何時もの愛らしい笑顔を浮かべる。
『逆効果ですってば!』
 まあ指先一つ触れれるとも思えないけどさ。

「祈りは届いたぞ。案ずるな、そなたらは助かる」
 それじゃただの怪しい人ですってば。

 あ、またなんか渡された。
 説得? 交渉とか説伏系のスキルだな。
 これを使ってこいつらを納得させろってことですね、一発殴ってしまえば早いのに。

 15分後、若者達は泣いて許しを乞うた。
『すげー。この能力があったら、何処でも宗教の開祖になれるわ』

 四人の若者が、何事もなかったように車に乗せてくれる。
 二人などは、後ろの荷物入れに押し込まれてるし。

「先ほどはすいませんでした。もうこの世の終わりだと、やけになっちゃって……。駄目ですよね、おれたち最後の時まで清く正しく生きます!」
 そんな悪いやつらでもなかった。

 つーか、助けを求めたのは彼らではない。
 正確には彼らも含まれるが、この星に住む全ての生き物。

 巨大な浮遊惑星が、彼らの恒星系に侵入したのだ。
 質量はこの星の17倍。
 衝突の可能性も高いが、例え当たらなくても、その重力でこの星は星系の外に弾き出されるか、減速して恒星に飲み込まれる。

 確実な全滅がやってくる。

 都市部に着いたので、彼らに頼み事をする。
「これ、換金してきてくれない?」と、巨大な金塊を渡す。

 俺の服もボロだし、女神さまは目立つ。
 ついでに宿代もない。

 若者は、ダッシュで行って帰ってきた。
 麻雀の点棒のような形の通貨をもってくる。

「これで、どれくらいになるの?」
「そうっすね。この街の一番いい宿で、1ヶ月は余裕っす! 危機が始まってから、金の値段上がったんすよ。笑っちゃいますよね」

 そんなに要らないので、半分彼らにやった。

 とりあえず、適当に服を買う。
 未来チックでちょっとカッコ良い。
 女神さまには、体のラインが出る服を勧めた。
 これくらいの役得はあってもいいだろう。

 宿は、ガラガラだった。
 もう1年足らずで滅亡するのに、都会の宿に泊まる者もいねーか。

 二人一緒のセミスイート、女神さまは神さまだけに気にしない。
 落ち着いてから、テレビの様な物を点けた。

 おー、やってるわ。
 当たり前だが、ニュースは浮遊惑星一色だ。
 暴動のニュースも多いが、今は激減したとキャスターが伝える。

 この星の最後の希望、統合宇宙艦隊が浮遊惑星に向かってるそうだ。
「ま、無理だけどな」と、女神さまがいう。

 テレビの中の解説者も、『我々の持てる全ての兵器を使っても、進路をそらせる確率は50%くらいです! 皆さん、かつて忘れた我らの習慣を思い出し、神に祈りましょう』と絶叫していた。

「ほんとに50%もあるんすか?」と聞いてみた。
「99.89%無理ね。この星の者が持つ核融合弾では、薄皮一枚剥がして終わりよ」

「女神さまなら?」
「そりゃもう任せておけ! ただあと3ヶ月も遅れるとやばかった。例え粉砕しても、この星の公転軌道に影響が出たわね」

 つまり、この解説者が『祈れ!』と言ったことで救われたのか。
 誰も気付かないけど。
 それにしても、神さまって核融合とか知ってるんすねえ……。

「ゆうた、メシにいこう! 最近は食事が楽しみになってきたのよ!」
「はい、お供します!」

 貸切状態のホテルで、二人だけの豪華な食事をとる。
 この状況でちゃんと営業してるってのが凄い、まるで生まれた国のようだなと思った……。
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