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第一章
星を砕くもの
しおりを挟む統合宇宙艦隊の攻撃まで1週間あった。
それまで間、俺と女神さまは未来の都市を楽しんでいた。
ゲーセンとか普通にあるし、ちゃんと営業している。
日常を続けないと、心の均衡を保てないんだろうなあ。
しかし、スナック菓子をバリバリ食って、ゲーセンで遊び回る女神とはこれいかに。
目立つ容貌をしてらっしゃるので、グラサンと帽子で隠したが、逆にお忍びのアイドルみたいになった。
「おい! ゆうた、ゆーた! 見ろ、一位になったぞ!」
遂に女神さまは、アーケードゲームのランキングトップにまで登りつめた。
「お見事でございます」
俺がそう言うと、周りからも拍手が起きる。
滅亡が迫る中、無邪気にゲームに熱中する女神さまは、ゲーセンのアイドルになっていた。
「あのー、お名前張り出しますが、よろしいですか?」
店員が聞いてきた。
車が空を飛んでも、ゲーセンのランキングボードは手書きだ。
「おお、良いぞ! <<○△&#%>>だ!」
「……は?」
店員は困惑する。
そりゃそうだ、一番下僕の俺でさえ何度聞いても理解できない。
なんでも、一音あたりの情報が凄く多いとかなんとか。
あの長さで、辞書3冊分くらいの意味が詰まっている。
「あのー、『めがみ』って書いておいてください」
「めがみ、ですね。ばっちり張り出しますよ!」
滅びの直前に活気が出たお店を切り盛りする店員は、良い笑顔でそういった。
「めがみ、めがみかー。いい響きだな」
女神さまにも意外と刺さったようだ。
てか、今まで何と伝わってたのだろう?
女神さまは完全自動翻訳持ちで、俺の言葉がそのまま聞こえてるとは限らない。
「おい、ゆうた。めがみって呼んでみて?」
跳ねて来た女神さまが、下から見上げる。
反則っすね。
「女神さま?」
「ちがーう。めがみ!」
「めがみさま?」
「敬称付けんな! わたしの呼び名!」
「ええー……そんな恐れ多い」
良いから言え! と、女神さまに蹴られた。
幸せな職場だなあ。
「めがみ?」
「もう一回! けど少しかわいく」
「めがみん!」
うんうんと、めがみんが頷く。
気に入ったようだが、良いのかなゆるキャラみたいだけど。
「さて、そろそろ行くかなー。お前たちも、死ぬまで生きるが良いぞ」
女神さまが、ゲーセンを見渡しながら言った。
今は意味が分からんだろうな。
デートの時間は終わり、これからはお仕事。
大きな背荷物を担ぎ、女神さまと店を出る。
「しっかり掴まれ。そうそう、腰に手を回してもいいぞ」
後ろからぎゅっと抱きしめる。
腰細いっすね、俺の半分くらいだ。
傍から見れば、最後の時を過ごす恋人のように映ったかもしれないが、これからこの星を救って来ます。
何の予備動作もなく、女神さまは飛んだ。
加速のGすらかからない。
大気圏を飛び出し、衛星を通り過ぎてから更に速度をあげる。
時折、何らかの元素がぶつかっては光る。
地球に居ては一生見れないスペクタルな旅をして、ほんの数時間で第七惑星の軌道まできた。
ここまで来ると、はっきり見える。
星系内に飛び込んだ浮遊惑星と、それに向けて一直線に進む宇宙船の群れが。
「近くで見ようか」
俺たちは、手近な戦闘艦に潜り込んだ。
「誰も居ないっすね。全部無人すか」
「違うね、半分くらいは有人だな。全部でうーん、八千隻に30万人くらいかなあ」
こっちこっちと、女神さまが手招きする。
行った先は格納庫で、大量のコンテナが積まれている。
「これ、ひょっとして?」
「そう、爆薬だな」
「無人宇宙船爆弾か。切羽詰まってるなあ」
「ちょっと違うぞ。ここに集まった船と人、全てが突っ込む覚悟だ。凄まじい悲愴と決意が伝わってくるわ……」
一次攻撃が核融合兵器、これが通用する可能性はほぼ無い。
地殻を削るのが精一杯だが、空けた穴に向けて、加速しきった八千の宇宙船の特攻。
これが、この世界の人類の最終手段。
「あれを止めねば、どうせ帰るとこもないしな」
艦橋のモニターに映る巨大な迷子星。
最後の希望を託された30万の志願兵が、母星に帰ることは絶対にない。
始まったようだ。
この戦艦からも大きな誘導弾が撃ち出されて、艦体が揺れる。
数時間後には着弾するが、この宇宙艦隊は速度を緩めずに真っ直ぐ突き進む。
「さーて、奇跡を起こしてやるか!」
女神さまが手を差し出し、俺がその手を取った瞬間、宇宙空間に移動した。
あっという間に浮遊惑星に近づく。
十数万発の核融合弾の攻撃を受けた地表は、窯に入れたチーズみたいになっていたが、球形はまったく崩れてない。
あと何時間かすれば特攻が始まるが、女神さまがその前にケリを付けてくれるはずだ。
「潜るぞ。ちょっと力を別けてやる、しっかり荷物を守れよ」
俺と女神さまは、マグマの海に飛び込んだ。
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