女神さまの代理人 ~暗黒企業から女神の下僕に出世しました~

六倍酢

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第一章

新たなる関係

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 女神さまに手を引かれながら、星の内部へ。
 直系で地球の4倍近い巨大な岩石惑星に潜る。

 幾ら勇者でも、こんな経験するやつは少ないだろう。
 並の最強クラスなら耐えられぬ、十数万度と十数万気圧の中を泳いで惑星の核へ辿り着いた。

「ここらでいいな」と女神様が止まり、近くに俺も立つ。
 かなりの量の力を貰った俺は何とか耐えれる。
 それと同時に、女神さまの力も良く分かるようになった。

 ここまで飛んで、俺に分け与えたせいで、ほとんど空っぽじゃないですか!
 俺の心配が伝わったのか、振り返った女神さまがにこっと笑う。
 本当におかわいい。

 大丈夫かと聞くのも失礼かと思ったが、一応尋ねた。
「平気ですか? 結構大きい星ですけど……」
「ふっふっふ、心配するな! ちょっと本気を出すぞ、離れててくれる?」

 女神さまは、本気を出す前に浮遊惑星に語りかけた。
「暗く長い一人旅を続けたようだな。だがすまぬ。そなたの力は、他の者どもの災厄になるのじゃ。小さく分かたれ、いずれはここの星々と同化し再生するであろう。そなたも協力してたもれ……」

 少し待つと、星が応えたようだ。
「……そうか、感謝する。では、いくぞ。 執行ディバイン神モードディバインエクスキュージョンへ移行する」

 女神さまの力を貰った俺には分かる。
 これまでと桁違いどころか、次元が違う力が存在した。

 何時も着ているひらひらの衣装とは違い、赤熱に輝く甲冑と兜をまとった。
 激変する重力と漏れ出すエネルギーで、周囲の空間が歪む。
 そして手には身長の倍以上ある神槍。

「我が名――聞き取れない!――において命じる。砕けよ!」
 
 ゲームをする時以外は、ほとんどアクションを起こさずに何でも出来る女神さまが、初めて大きく叫んだ。

 両手でかかげた槍を、星の核へ突き刺す。

 かつて貯め込んだ熱の総量に匹敵する力を注ぎこまれ、中心核は大きく震え、それから爆縮を始めた。

 大地の固まりが崩れだす。
 中心核が暴走して、いずれ失うこの星は、何十億もの破片になるだろう。

「よし、終わった。次へ行こうか!」
 戦闘形態になった女神さまは、少し背が伸びて大人っぽくなり、武装がよく似合う。

 女神さまに敵う存在なんて絶対いない! と確信する。

 あとは、この世界の人たちが勝手に解釈するはずだ。
 表面を溶かした核融合攻撃が、不安定な中心核に作用したとか。

「自らの力で乗り切ったと思うほうが良いのよ。奇跡は待つものでなく、起こすものだから」
 次の世界へ飛びながら、女神さまはそう言った。

 まあ、これもう何が相手でも余裕でしょ。
 竜でも巨人でもかかってこい!
 星も貫くうちの女神さまが相手してやんぞ、こら!

 その前に……。
「ちょっとボロボロになったんですけど、治して貰えませんか? 出来れば年齢も若くつややかに」

 熱にも圧力にも耐えたが、女神さまの上限解放の余波で、俺の肉体が滅茶苦茶だ。
 貰った力で何とか即死と、荷物だけは守ったが。

「まあ良いけど、わたしはハゲてても気にしないぞ?」
 天使な台詞ですが、俺は決してハゲてません!
 返事を聞く前に、女神さまは指先一つで体を再生してくれた。

 それにしても、女神さまがこれほどに強力無比だとは。
 俺の気分は助さん、ユニコが角さんだなぁ

 だがしかし、次の世界で俺の立場は、西遊記の孫悟空になる。


 着いた先は、普通の剣と魔法の世界。
 世界樹の苗木のところへ降り立った女神さまが、首をかしげる。

「あれー? おかしいな、力が出ないぞ??」
「またまた。ご冗談を」

 通常モードに戻った少女姿の女神さまが、手足を振り回す。

「やっぱり出ないや。ゆうた、どうしよう?」
 そんなの俺に聞かれても困りますってば!

 モードを戻してないとか、前回使いすぎてブレーカーが落ちたとか、何処かに忘れたとか、何か原因があるでしょ?

「うーん、これまでは考えなくても、感じれば出来たから……」
 天才ヒロインみたいなことをおっしゃる。

「まあいい。その内なんとかなるでしょ」と、今度は無能上司みたいなことを言い出した。

 ユニコに乗せ――歩くと疲れるのだそうだ――しばらく進む。
 せめて人里に出たいなあ。
 周りに何もないし、こういう世界にはいるでしょモンスターが。
 ほら、ユニコが鼻をひくひくし始めた……。

「おい見ろ、そこの地面が膨らんでる!」
 馬上では、無邪気な声で女神さまが地面を指差す。

 それって、もしかしなくても。
「出たー!」と叫んで、ユニコを引いて走り出す。
 ワーム系の巨大モンスター。

 ちらりと女神さまを見ると、暴れる背中にしがみつくのが精一杯のご様子。
 まぢか、あの程度の魔物、見るだけで追い払えるはずなのに!

 ただの少女になった女神さまと、戦闘能力も戦闘経験もゼロの俺。
 一番頼りになりそうなのは、ユニコーン。

 女神さまの荷物持ちの俺が、この世界では頑張るしかないのか……?

 ようやく逃げ切った俺たち――体を若くして貰ってて良かった!――は、一息つく。
 女神さまは、ユニコの背に伏せた顔を上げてやっと喋った。

「おいユニコ、揺れ過ぎだぞ。舌を噛んじゃった……」
 今回の世界では青系の髪色で、無力になった女神さまに良く似合う。
 ぺろっと舌先を出す様子も、とてもおかわいい。

 女神さまがお力を取り戻すまで、この 下僕しもべが全身全霊をあげてお守りしますと、密かに忠誠を誓う。


 ところで、一つ提案なんですが。
「女神さま、この世界では”めがみん”って呼んでいいですか?」
「もちろん良いぞ!」
 少しだけ距離が縮まった気がした。
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