女神さまの代理人 ~暗黒企業から女神の下僕に出世しました~

六倍酢

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第三章

ふたり旅

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 九人の男たちを川べりに転がした。
 無傷の者は一人だけで、あとは骨が折れて呻いている。
 
 ダンジョンの壁からは地下水が吹き出し、それが池になってから地下の川を作る。
 この川の水を飲んで倒れた子供がいたことを思い出す。
 かなり綺麗な水で、毒があるようにも見えないが……。

 流石に<<水質検査>>のスキルはない。
 探索能力をフルに活かして、池全体を調べてみると、底の方に大きな丸い反応があった。

「おい、池に住む丸い生き物で、毒をだすようなのがいるか?」
 無傷の冒険者に聞いてみた――この世界の冒険者は奴隷も狩る。

 そいつは首を横に振ったが、別の奴が知っていた。
 おずおずと手をあげて、砕けた膝を抱えながら喋った。

「たぶんドクマルトカゲです。水の中で毒を吐いて、倒れた獲物をゆっくり食うとか。空腹にならないと毒を出さないんで、なかなか見つからないんです……痛っ……」

 変わった生き物もいるものだが、教えてくれた褒美をやることにした。
 そいつの膝を治してやる。
 子供らはイヤな顔するが、こいつらは今からこき使う予定だ、五体満足でな。

「分かったと思うが、逆らうだけ無駄だ。今から全員治してやるが、逃げても無駄だ。指示の通りにすれば助けてやるが、出来なければ魔物の餌にする」

 それだけ告げて、全員を治療した。

「まずは、池底のドクマルトカゲとやらを捕まえる。縄でもかけてこい、俺が釣り上げるから」

 9人の冒険者は、それなりに手慣れた動きで池に浮いたり潜ったりしながら、トカゲとやらの足に縄を結んだ。

「せーのっ」と綱引きをしようとすると、子供らが寄ってくる。
 どうやら手伝ってくれるみたいだ。
 みんなで声を合わせ、よいしょよいしょと引き上げる

「カメじゃねーか……」
 ドクマルトカゲは、紫の甲羅を持った全長3メートルのほどの大亀だった。

「うまそう」
「食えそう!」
「美味しそう!」

 子供らが騒ぎ出すが、ほんとにたくましいな、毒があるって聞いてたろ?

「食えますよ、こいつ。喉の下の毒袋、それを傷つけずに頭を落とすんです」
 また冒険者の一人が教えてくれた。
 てめーら、知識もある冒険者なら、子供狩りなんてやってるんじゃないよ。

 可哀相だが、カメには子供らの食料になってもらった。
 解体した肉や骨、甲羅を冒険者どもに運ばせる。
 内蔵と毒袋のついた頭は、かなり遠くへ運んで埋めさせた。

「じゃ、自分らはこれで!」
 一仕事終わったな顔をして冒険者が去ろうとするが、こんなもので済むはずない。

「まだだ」
「旦那! もう金輪際ガキども、いやお子様方に手は出しません! 真面目に冒険者やるので許してくだせえ」

「お前らが前に連れてった少年少女がいるだろ」
「うっ……もうとっくに売っちまいました……」

 だろうな、だが取り返してきてもらう。

「お前らに制約をかける。7日以内に5人を買い戻して、ここまで連れてこい」

 女神さまの力を使い、契約と罰を付与した。

「ぴったり7日後だ。それまでここに来ても死ぬし、戻らなくても死ぬ。言っておくが、神の契約だ。人の魔法なんかでは絶対に解除不可能だぞ」

 9人は泣きそうになるが、まあそれもそうだろう。
 金欠になったから”ここ”に来たに決まっている。

「金は俺が出してやる。渋る買い主がいたら、力づくでも奪ってこい。さもなくば俺がお前らを殺す」

 5、6個の宝石を投げて渡した。
 相場は分からないが、足りないってこともないだろう、宝石を見たこいつらの顔からして。

「早くに買い戻しても、7日後まで来るなよ。死ぬからな。それから子供らには、ちゃんとした飯を食わせろよ」

 しっかり念を押すと、冒険者らは全力で走って行った。
 ま、仲間を呼んでくるなんて可能性もあるが、それなら人手が増えるだけだ。
 売った子供らを連れて戻るまで、何度でもだ。

「さてと。シース、みんなを呼んできてくれるかな?」
 大量のカメ肉を、塩漬けにしたり燻製にしたりと大忙しの子供たちを一度集めた。

「えーでは、この家の入口にバリアを張ります!」
「バリア?」と子供たちが復唱する。

「結界みたいなものかな。みんなだけ通れるようにするから、順番に手を出して」
 子供たち以外は通れないバリアを張る。
 ついでに、近くの大木を数本選んでトレントと化した。

「何かあれば子供たちに力を貸すように」と命じておく。
 これで安心だろう、あとは……。

「ちょっと下まで行ってくるから、待っててね。7日以内に戻るよ」
 それだけ伝えて走りだそうとすると、腰のあたりに何かくっついた。
 がっつりと、シースがしがみついていた。

「シース……急いで戻ってくるから、待ってて?」
「やだ」
「みんなの面倒見るんだろ?」
「だって、ボクが案内するって言った!」

 そりゃそうだが、一番のお姉さんを連れてはいけない。
 説得しようとする俺に、他の年長組の子たちが口々にいう。

「これだけ食い物があれば平気だよ」
「そうそう、優雅に寝て待ってるから!」
「少しは手伝いさせてよ」
「シースが一番食べるから!」

 最後の子をぽかっと殴ったシースが、俺に訴える。

「24層までは行ったことあるの! 階段の位置も危険な魔物の住処も全部わかるの、だから案内させて!」

 ま、それは助かる。
 実際このダンジョンは結構広い、能力フル稼働で走り回るより早いかもしれない。

「なら、お願いしようかな?」
 お願いの返事は満開の笑顔だった。
 
 子供たちに見送られて出発した俺とシースは、一日で第十九層まで降りた。
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