人が消えた世界で

赤牙

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第一章

18話〜ガイルSide〜

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    ~ガイルSide~



「ハイル様は落ち着かれましたか…」

部屋のドアがそっと開くとゴードンが顔を覗かせる。

「あぁ…。疲れて眠ってしまったようだ」

私の腕の中で顔を涙で濡らし寝息を立てるハイルの顔は先程までとは違い穏やかだった。
部屋はハイルが投げつけてきた物で散乱し、引き抜かれた点滴が床を濡らす。

「服やシーツに血がついてしまいましたね…。後で綺麗にしておきますので」
「すまない。よろしく頼むよ」

ゴードンは散乱した部屋をテキパキと片付け始める。私は抱いていたハイルをそっとソファーへと寝かす。

『殺してくれ』

あの言葉はハイルの本心だ。
私達半獣人がこの子にしてきた罪の重さを感じる。

人が絶滅してからは二度とこのような事を繰り返さないように教えられてきた。
私もハイルと出会うまでは昔の事だからと同族が行った行為をどこか他人事のように思っていた。

確かに私はハイルのことを傷つけてはいない…。
だが、ハイルにしてみれば半獣人は皆同じに見えるのだろう…。

ソファーで眠るハイルに付き添っているとゴードンが声をかけてくる。

「ガイル様。服をお着替えになってはどうですか?」
「だが…」
「ハイル様が目覚めた時に、血に汚れた服では驚かれますよ。私が様子を見ておきますので」

改めて自分の服を見ると所々ハイルの血が付いていた。
確かにこんな状態ではハイルが驚いてしまうな…。

「そうだな…。着替えてくるよ…」

穏やかに眠るハイルの頭を撫でゴードンにハイルの事を頼み私はハイルの部屋を後にした。


✳︎


自室へと向かい着替えを済ませるとイザベラが部屋へ入ってくる。

「ハイルくんに話したのね…」
「あぁ…」
「辛い役目をあなたに任せてしまって…ごめんなさい…」
「いいんだよイザベラ。誰かがハイルに伝えないといけないのだから…」

苦悶の表情を浮かべるイザベラを大丈夫だと、そっと抱き寄せる。
抱き寄せた体は震え、鼻をすする音が聞こえる。

「私ったら…ダメね。一番辛いのはあの子なのに…。部屋の前であの子の言葉を聞いて…胸が張り裂けそうだった…。私達が、あの子の近くにいて本当にいいのかしら…」
「そうだね…。そのことについてはハイルが元気になってから一緒に考えよう。私もハイルの意思を尊重したい…」

イザベラは腕の中でコクコクと頷くと、「私が泣いてちゃダメね!」と、いつもの笑顔を見せてくれる。


そのまま二人でハイルの部屋へと向かうと、ゴードンにより部屋は綺麗にされ、ソファーに寝ていたハイルはベッドに戻っていた。
そして、マリオンが付き添いながらハイルの調子を見ている。

「マリオン。ハイルは大丈夫だろうか?とても興奮したいたから…それに血も…」
「うん。大丈夫よ。点滴が抜けた場所はすでに血は止まっているし、体調も大きな変化はないわ。今は疲れて眠っているだけよ」
「そうか…」
「今はそっとしてあげるのが一番ね…」
「そうだな」


それからしばらくしてハイルは目を覚ますが、誰とも目を合わせず食事も食べなくなってしまう。


そして次の日部屋を訪れると…そこにハイルの姿は無かった。



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