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新たなるお兄さんを発見!? ②
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シュヴァルの駆けるスピードは驚異的で、僕は振り落とされないように必死にシュヴァルの首に抱きつく。
しばらくするとシュヴァルの走るスピードが落ち、目的地に辿り着いたのかシュヴァルは足を止める。
伏せていた顔を上げると、シュヴァルが寝床にしている森の奥深くまでやってきたようだ……。そして、シュヴァルの視線の先には人が横たわっていた。
「えっ!? だ、大丈夫ですか!?」
ぐったりと横たわる人を見つけ、慌ててシュヴァルの背中から滑り落ちるように降り駆け寄る。
横たわっている男性は全身血まみれで、息はしているから生きてはいるようだが顔色は酷く悪い。
騎士のような格好をしていて、甲冑はリアムさんが着ていた物とよく似ている……。
「あの……聞こえますか……?」
倒れている男性に声をかけると、薄らと目を開き綺麗な碧眼と目が合う。
「あ、あの! 今助けますからね! って、いってもどうしよう……。あの……体は動きますか?」
「少し……なら……」
男性はそう言うと体をゆっくりと起こそうとするが、体を動かすと痛みが酷くなるようで顔をしかめる。
「手伝いますね」
男性の大きな背中に手を回して支えるとなんとか体を起こすことができる。
男性の甲冑は至る所が傷つき壊れている。そして、右手はダラリと力なく垂れ手先は血の気を失い紫色に変色している。
「ありがとう……」
「いえ……。あの、水飲みますか? あ、それよりも手当てが先ですね……」
「傷は……大丈夫だ……。水を……もらえるかな……?」
「わ、わかりました!」
そう言われ鞄から水筒を取り出し渡すと、男性は喉を鳴らし水を飲み干す。
「足りましたか?」
「あぁ、助かったよ……。すまないが、ここの森はヴァントーラ公爵家の領地になるのだろうか……?」
「えっ……? いや……違うと思います。この場所はレノー様の領地よりも奥になるので……」
「そうか……。どうやら道を間違ったようだな……。だが、領地への侵入はしていないとなれば大丈夫か……」
男性はそう言うとゆっくりと立ち上がる。足を引きずりながら一歩ずつ一歩ずつまた森の奥へと歩き出す。
「えぇ!? そんな体でどこに行くんですか」
「……私は隣国の騎士だ。この『深淵の森』を超えヴァントーラ公爵領への侵入をしたとなれば争いの火種になりかねない……」
隣国の騎士と名乗る男性はそう言うと僕に背を向けまた森の方へ……。
あんな体で森の奥へと行くのは自殺行為だ。森の奥にはシュヴァルよりも強い魔獣がいると言っていたリアムさんの言葉を思い出し、男性を止めようとすると僕の横をシュバルが横切る。
ずっと大人しかったシュバルは鼻を鳴らし男性の方へ突進するように走り出す。
「シュヴァルッ!?」
シュヴァルは男性の前に割り込むと大きな体で通せんぼして足止めする。そして、僕を乗せた時のように男性の前にひざまづく。
「……これはどういうことなんだ?」
男性は驚き困った顔をして僕の方を振り向く。
きっとシュバルは、この男性を助けたくて僕を呼んだんだ……。
「シュヴァルはきっと貴方を助けたいんだと思います」
「私を……? しかし、何故……」
「理由は分かりませんが、僕もお兄さんが森の奥に行くのは反対です」
「だが……私はさっき言ったように……」
「大丈夫です! レノー様に理由を話せばきっと……大丈夫です!」
何が大丈夫なのか分からないけど、レノー様がこの場にいても傷ついた人を放っておく事なんてしないはずだ。
「僕はレノー様の従者をしているココです。レノー様のお屋敷まで案内しますのでシュバルの背中に乗って下さい」
僕の言葉にシュヴァルも同意するように鼻を鳴らす。男性は眉を下げ困った顔をするが、最後には諦めシュヴァルの背中に跨る。
「すまない……」
男性はそう言ってシュヴァルの首筋を優しく撫でる。
「お屋敷についたらレノー様に理由を話して、まずは怪我を治しましょう。えっとぉ……よければ、お名前を伺ってもいいですか?」
「あぁ、すまない。名乗っていなかったな。私の名前はイーゼルだ」
「イーゼル様ですね。よし、シュヴァル。イーゼル様は体に怪我を負っているから、ゆっくり走るんだよ」
シュヴァルは分かっているといいたげに顔をふいっと動かす。僕もシュヴァルの背中に跨ると、シュヴァルは立ち上がりゆっくりと走り出した。
しばらくするとシュヴァルの走るスピードが落ち、目的地に辿り着いたのかシュヴァルは足を止める。
伏せていた顔を上げると、シュヴァルが寝床にしている森の奥深くまでやってきたようだ……。そして、シュヴァルの視線の先には人が横たわっていた。
「えっ!? だ、大丈夫ですか!?」
ぐったりと横たわる人を見つけ、慌ててシュヴァルの背中から滑り落ちるように降り駆け寄る。
横たわっている男性は全身血まみれで、息はしているから生きてはいるようだが顔色は酷く悪い。
騎士のような格好をしていて、甲冑はリアムさんが着ていた物とよく似ている……。
「あの……聞こえますか……?」
倒れている男性に声をかけると、薄らと目を開き綺麗な碧眼と目が合う。
「あ、あの! 今助けますからね! って、いってもどうしよう……。あの……体は動きますか?」
「少し……なら……」
男性はそう言うと体をゆっくりと起こそうとするが、体を動かすと痛みが酷くなるようで顔をしかめる。
「手伝いますね」
男性の大きな背中に手を回して支えるとなんとか体を起こすことができる。
男性の甲冑は至る所が傷つき壊れている。そして、右手はダラリと力なく垂れ手先は血の気を失い紫色に変色している。
「ありがとう……」
「いえ……。あの、水飲みますか? あ、それよりも手当てが先ですね……」
「傷は……大丈夫だ……。水を……もらえるかな……?」
「わ、わかりました!」
そう言われ鞄から水筒を取り出し渡すと、男性は喉を鳴らし水を飲み干す。
「足りましたか?」
「あぁ、助かったよ……。すまないが、ここの森はヴァントーラ公爵家の領地になるのだろうか……?」
「えっ……? いや……違うと思います。この場所はレノー様の領地よりも奥になるので……」
「そうか……。どうやら道を間違ったようだな……。だが、領地への侵入はしていないとなれば大丈夫か……」
男性はそう言うとゆっくりと立ち上がる。足を引きずりながら一歩ずつ一歩ずつまた森の奥へと歩き出す。
「えぇ!? そんな体でどこに行くんですか」
「……私は隣国の騎士だ。この『深淵の森』を超えヴァントーラ公爵領への侵入をしたとなれば争いの火種になりかねない……」
隣国の騎士と名乗る男性はそう言うと僕に背を向けまた森の方へ……。
あんな体で森の奥へと行くのは自殺行為だ。森の奥にはシュヴァルよりも強い魔獣がいると言っていたリアムさんの言葉を思い出し、男性を止めようとすると僕の横をシュバルが横切る。
ずっと大人しかったシュバルは鼻を鳴らし男性の方へ突進するように走り出す。
「シュヴァルッ!?」
シュヴァルは男性の前に割り込むと大きな体で通せんぼして足止めする。そして、僕を乗せた時のように男性の前にひざまづく。
「……これはどういうことなんだ?」
男性は驚き困った顔をして僕の方を振り向く。
きっとシュバルは、この男性を助けたくて僕を呼んだんだ……。
「シュヴァルはきっと貴方を助けたいんだと思います」
「私を……? しかし、何故……」
「理由は分かりませんが、僕もお兄さんが森の奥に行くのは反対です」
「だが……私はさっき言ったように……」
「大丈夫です! レノー様に理由を話せばきっと……大丈夫です!」
何が大丈夫なのか分からないけど、レノー様がこの場にいても傷ついた人を放っておく事なんてしないはずだ。
「僕はレノー様の従者をしているココです。レノー様のお屋敷まで案内しますのでシュバルの背中に乗って下さい」
僕の言葉にシュヴァルも同意するように鼻を鳴らす。男性は眉を下げ困った顔をするが、最後には諦めシュヴァルの背中に跨る。
「すまない……」
男性はそう言ってシュヴァルの首筋を優しく撫でる。
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シュヴァルは分かっているといいたげに顔をふいっと動かす。僕もシュヴァルの背中に跨ると、シュヴァルは立ち上がりゆっくりと走り出した。
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