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過去 ②
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少年の護衛が終わってから一週間後……。
呼び出しをくらい団長室を訪れた俺に『解雇』が突きつけられる。
理由は少年の誘拐に俺が関わっている疑惑が浮上した為だ。
団長から話を聞けば、俺が人間側の護衛を殴り気絶させ人攫いの獣人グループに少年を売ろうとしていたという。
あまりにも酷い作り話に団長に抗議するが……団長から絶望的な葉を聞かされる。
「私もダンテがそんな事をするとは信じ難いのだが……被害にあった公爵家の子息がそう言っているそうだ。獣人の護衛に拘束され……暴力を受けたと……」
「なっ……!?」
あの少年が何故そんな事を言ってくるのか分からずに呆然としていると、団長の隣にいた公爵家の弁護人と名乗る男が俺にかけられた罪状を読み上げる。
護衛に襲いかかり傷を負わせた傷害罪や少年に対する拉致・監禁未遂など、身に覚えのない罪に弁護人に牙を剥き出し睨みつける。
「俺は……そんな事やっていない……」
「そう言われましても……。私達も事を荒立てないように今回の件は内密にしています。獣人と人が共存しようと手を取り合っている今、騎士である貴方が公爵家の子息を傷つけようとした噂話が流れれば……また争いの火種になるかもしれないのですよ?」
「そんなこと知るかっ!!」
「ダンテッ! ……少し黙っていろ」
団長の言葉に開きかけた口を閉じはするが、拳を握りしめ収まり切らない怒りをどうにか留めておく。
団長は弁護人へと小さく頭を下げる。
「部下が申し訳ありません……。アブソレル公爵家は今回の件に関して何を要求されているのですか?」
「まぁ……無事に子息も戻ってきているので、そこの獣人を騎士団から排除するという事で今回の件は目を瞑るというのが公爵家の答えです。これから騎士団の方達とは長い付き合いになると考えておりますので……」
「そうですか……。寛容な対応をありがとうございます……」
「違う! 俺はそんな事をやっていない! あの少年を助けたのだって俺なんだ! 団長……信じて下さい……」
俺の叫びは結局団長には届かず、俺は表面上は今回起きた事件の責任を取るという形で騎士団を解雇された。
それからの日々は最悪だった。
誇りを持っていた仕事を失ってしまった喪失感に、少年や人間達に裏切られたことに対する憤懣……。
現実を見たくなくて酒に溺れ、俺に対する周りからの視線も冷えていくのが分かった……。
何とも思っていなかった人間への憎悪も増し、『人』と聞くだけで騎士団を辞めさせられた日のことを思い出してしまう。大嫌いになった人間と関わらないように過ごすが、俺の気持ちとは反対に獣人の領地にも人が増え始めて行く。
チッ……と、心の中で舌打ちしながら俺はその日暮らしの生活を10年も続けてきた。騎士団を解雇された噂が付いてまわりまともな職には付けず、安い金で馬車の護衛をしたり、それでも仕事がなければ御用聞きのような仕事もした。
どうにか生活を送り、このままどうしようもない日々を過ごしていくと思っていたのだが……さらにドン底に突き落とす出来事が待っているなど誰が想像できただろうか……。
自分の運の無さにハァァ……と、深いため息を吐けばエンジュが心配そうに覗き込んでくる。
「ダンテさん……?」
「ん……あぁ、すまない。ちょっと考え事をしていたんだ……」
心配するなと笑顔を作ればエンジュも安心したように微笑んでくる。
理由もなく拐われ奴隷としての道を歩むかもしれない俺達はこれからどうなるのだろうか……。
考えても考えても不安は募るばかりだった……。
呼び出しをくらい団長室を訪れた俺に『解雇』が突きつけられる。
理由は少年の誘拐に俺が関わっている疑惑が浮上した為だ。
団長から話を聞けば、俺が人間側の護衛を殴り気絶させ人攫いの獣人グループに少年を売ろうとしていたという。
あまりにも酷い作り話に団長に抗議するが……団長から絶望的な葉を聞かされる。
「私もダンテがそんな事をするとは信じ難いのだが……被害にあった公爵家の子息がそう言っているそうだ。獣人の護衛に拘束され……暴力を受けたと……」
「なっ……!?」
あの少年が何故そんな事を言ってくるのか分からずに呆然としていると、団長の隣にいた公爵家の弁護人と名乗る男が俺にかけられた罪状を読み上げる。
護衛に襲いかかり傷を負わせた傷害罪や少年に対する拉致・監禁未遂など、身に覚えのない罪に弁護人に牙を剥き出し睨みつける。
「俺は……そんな事やっていない……」
「そう言われましても……。私達も事を荒立てないように今回の件は内密にしています。獣人と人が共存しようと手を取り合っている今、騎士である貴方が公爵家の子息を傷つけようとした噂話が流れれば……また争いの火種になるかもしれないのですよ?」
「そんなこと知るかっ!!」
「ダンテッ! ……少し黙っていろ」
団長の言葉に開きかけた口を閉じはするが、拳を握りしめ収まり切らない怒りをどうにか留めておく。
団長は弁護人へと小さく頭を下げる。
「部下が申し訳ありません……。アブソレル公爵家は今回の件に関して何を要求されているのですか?」
「まぁ……無事に子息も戻ってきているので、そこの獣人を騎士団から排除するという事で今回の件は目を瞑るというのが公爵家の答えです。これから騎士団の方達とは長い付き合いになると考えておりますので……」
「そうですか……。寛容な対応をありがとうございます……」
「違う! 俺はそんな事をやっていない! あの少年を助けたのだって俺なんだ! 団長……信じて下さい……」
俺の叫びは結局団長には届かず、俺は表面上は今回起きた事件の責任を取るという形で騎士団を解雇された。
それからの日々は最悪だった。
誇りを持っていた仕事を失ってしまった喪失感に、少年や人間達に裏切られたことに対する憤懣……。
現実を見たくなくて酒に溺れ、俺に対する周りからの視線も冷えていくのが分かった……。
何とも思っていなかった人間への憎悪も増し、『人』と聞くだけで騎士団を辞めさせられた日のことを思い出してしまう。大嫌いになった人間と関わらないように過ごすが、俺の気持ちとは反対に獣人の領地にも人が増え始めて行く。
チッ……と、心の中で舌打ちしながら俺はその日暮らしの生活を10年も続けてきた。騎士団を解雇された噂が付いてまわりまともな職には付けず、安い金で馬車の護衛をしたり、それでも仕事がなければ御用聞きのような仕事もした。
どうにか生活を送り、このままどうしようもない日々を過ごしていくと思っていたのだが……さらにドン底に突き落とす出来事が待っているなど誰が想像できただろうか……。
自分の運の無さにハァァ……と、深いため息を吐けばエンジュが心配そうに覗き込んでくる。
「ダンテさん……?」
「ん……あぁ、すまない。ちょっと考え事をしていたんだ……」
心配するなと笑顔を作ればエンジュも安心したように微笑んでくる。
理由もなく拐われ奴隷としての道を歩むかもしれない俺達はこれからどうなるのだろうか……。
考えても考えても不安は募るばかりだった……。
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