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1章
プロローグ
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白い六角形の部屋には床に魔法陣が彫られていて、その周りには白いベールですっぽりと覆われた人々が銀色の錫杖を手に呪文を唱えていた。
床の魔法陣が光り輝き、白いベールで覆われた人々の中でもベールの上から金の輪を下げている者が口を開く。
「これより、五年後に神子がこの地に降り立つ事でしょう」
おおー……と、周りの白いベールの者達は言い、それを聞いていた王族とみられる正装に身を包んだ男女も頷いてみせた。
「五年後が、実に楽しみだ」
「ええ、神子はこの地に平安をもたらしてくれる事でしょう。歴代の神子達の様に」
「王太子には神子以外の女性を近付けぬようにせねばな」
ホホホと笑う声が部屋に響き渡った。
それと、ほぼ同時刻に「ひぎゃああああ!!」と叫んだ少女がいた。
ジャングルの森の中で、ジャージにリュックサック、そして手には草刈り鎌を持っていた。
「な、なんだここぉぉぉ~!!」
大声で叫ぶも、その問いに答えてくれる者はいない。
「確かに山にはいたよ? 居たけどさ……こんなジャングルじゃ無かったよね?」
少女はブツブツと自分の頭で考えていることを口に出して、周りを見渡し「先生ー! 誰か―! サバちゃーん!」と大きな声を出す。
やはり答えてくれる人は居ない。
水色のジャージには胸元に『鴨根』と名前が白い糸で刺繍してある。
鴨根李都十三歳。中学二年生。
校則を守った肩につくぐらいの黒髪に、まだ大人の前段階の少女らしい幼い顔立ち。
背丈は成長途中とあって百五十センチと若干低めで、胸も少し膨らんだだけのささやかさ。
成績は良くも悪くもなく、平凡な少女で、自慢できるものは特にない。
唯一自慢できるものがあるとしたら、元気の良さぐらいである。
そんな平凡な李都が山に居た理由は、学校の行事で二泊三日のキャンプ中だったからだ。
テントを張るグループとテントの周りでご飯を作る為に石を積み重ねる係り。
そして李都はテントの周りの鬱蒼とした草を刈り取って、そこに石を運ぶスペースを作る係りだったのだ。
なのに、気付けば先程とは明らかに違う森の中である。
近くにあったキャンプも無ければ、自分自身もキャンプのテントの近くから離れた覚えも無いのである。
足元が光ったと思ったら、気付いたらここに居たのだ。
「……草刈りに夢中で道を間違えた? いや、私はそんなに遠くに行ってないし、木が明らかに周りにあった木と違う」
そう、先程まで居た山奥の森には、こんなに蔓が垂れ下がっていなかったし、見るからにヤバそうな赤い色のキノコや根っこが盛り上がりまくっている木など存在はしていなかった。
なーんだこれぇー?
思い当たったのは『神隠しにあったのではないか』という事だ。
神隠しとは、目の前の人がいきなり消えて、数年後にヒョッコリ現れて帰って来るというもので、自分ももしかしたら、そんな状況に陥っているのかもしれない。
「でも、非現実的なことを言ってる場合じゃないよね……」
李都はとりあえず、人を探して歩き出したのだった。
床の魔法陣が光り輝き、白いベールで覆われた人々の中でもベールの上から金の輪を下げている者が口を開く。
「これより、五年後に神子がこの地に降り立つ事でしょう」
おおー……と、周りの白いベールの者達は言い、それを聞いていた王族とみられる正装に身を包んだ男女も頷いてみせた。
「五年後が、実に楽しみだ」
「ええ、神子はこの地に平安をもたらしてくれる事でしょう。歴代の神子達の様に」
「王太子には神子以外の女性を近付けぬようにせねばな」
ホホホと笑う声が部屋に響き渡った。
それと、ほぼ同時刻に「ひぎゃああああ!!」と叫んだ少女がいた。
ジャングルの森の中で、ジャージにリュックサック、そして手には草刈り鎌を持っていた。
「な、なんだここぉぉぉ~!!」
大声で叫ぶも、その問いに答えてくれる者はいない。
「確かに山にはいたよ? 居たけどさ……こんなジャングルじゃ無かったよね?」
少女はブツブツと自分の頭で考えていることを口に出して、周りを見渡し「先生ー! 誰か―! サバちゃーん!」と大きな声を出す。
やはり答えてくれる人は居ない。
水色のジャージには胸元に『鴨根』と名前が白い糸で刺繍してある。
鴨根李都十三歳。中学二年生。
校則を守った肩につくぐらいの黒髪に、まだ大人の前段階の少女らしい幼い顔立ち。
背丈は成長途中とあって百五十センチと若干低めで、胸も少し膨らんだだけのささやかさ。
成績は良くも悪くもなく、平凡な少女で、自慢できるものは特にない。
唯一自慢できるものがあるとしたら、元気の良さぐらいである。
そんな平凡な李都が山に居た理由は、学校の行事で二泊三日のキャンプ中だったからだ。
テントを張るグループとテントの周りでご飯を作る為に石を積み重ねる係り。
そして李都はテントの周りの鬱蒼とした草を刈り取って、そこに石を運ぶスペースを作る係りだったのだ。
なのに、気付けば先程とは明らかに違う森の中である。
近くにあったキャンプも無ければ、自分自身もキャンプのテントの近くから離れた覚えも無いのである。
足元が光ったと思ったら、気付いたらここに居たのだ。
「……草刈りに夢中で道を間違えた? いや、私はそんなに遠くに行ってないし、木が明らかに周りにあった木と違う」
そう、先程まで居た山奥の森には、こんなに蔓が垂れ下がっていなかったし、見るからにヤバそうな赤い色のキノコや根っこが盛り上がりまくっている木など存在はしていなかった。
なーんだこれぇー?
思い当たったのは『神隠しにあったのではないか』という事だ。
神隠しとは、目の前の人がいきなり消えて、数年後にヒョッコリ現れて帰って来るというもので、自分ももしかしたら、そんな状況に陥っているのかもしれない。
「でも、非現実的なことを言ってる場合じゃないよね……」
李都はとりあえず、人を探して歩き出したのだった。
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