やさぐれモードの私はもふもふ旦那様を溺愛中

ろいず

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1章 

生活向上

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 イクシオンのお屋敷に来て四日目……イクシオン自体、死ぬつもりで色々放り投げて来たらしく、それの処理に追われて駆け回っている感じで、執事のアンゾロさんというインパラの獣人さんにクドクド文句を後ろから言われつつ、書類に判を押したり、サインをしたりしている。

「だから、オレの事はこのまま死んだことにしてくれたら、良いんだが……」
「そう思うなら、戻ってこなければよかったのですよ?」
「それはそうなんだが、色々と買い足したりしたくて……」
「イクシオン殿下は詰めが甘い!」

 ビシッとアンゾロさんに言われ、イクシオンが書類に埋もれている。
隊長さんも大変そうだなぁと、紅茶をまったり飲みつつ見ていた……だったら、良かったんだけど、私は私で忙しい。

 メイド服を借りて、朝はアヒル獣人のメイド長アーデルカさんに洗濯物のやり方と干し方を教わり、それが終わったら、コック長のウィリアムさんに料理の仕込みを教わり、お昼ご飯は自分の作った物をイクシオンに出しに行き、一緒に食べるまでがセット。
よくわからないけど、獣人はこういうものなんだそうです。
一番偉い人に食べさせて、次にその妻が食べてって事になるらしいんだけど、妻が居ないから婚約者の私が食べないと、他のお屋敷の人がお昼ご飯を食べれないんだとか……
うん、本当に私に獣人の常識を教えて欲しい。

 食事の後は、ゲッちゃんとデンちゃんと一緒に庭で、庭師の黒豹の獣人ビブロースさんに畑の作り方を教えて貰っている。
お屋敷の野菜はビブロースさんの畑で栽培しているとかで、私が森に帰る時に苗を貰えることになった。

「リト様は、お勉強熱心でいらっしゃいますね」
「そんなことないですよ! 覚えなきゃ生きていけませんし、自分の糧になるものは今は吸収していきたいんです」

 私のハングリー精神はまだ燃え尽きてはいない! これからまた、あのサバイバルな日々に戻るのだから、覚えれることは覚えて、自分の生活向上を目指す!
 
 ちなみに私が森へ帰ることは皆知っていて、私が十四歳で婚約者と言っても、結婚は出来ない年齢を考慮してくれている。
だからこそ、色々教えてくれていて、大変ありがたい。

 デンちゃんがジャンプしても壊れない様な丈夫なリヤカーを作って貰った。
木では無く鉄のリヤカーで、帰りはこれに物資を乗せて帰る予定。
もうゲッちゃんとデンちゃんが飽きているというか、自由に走り回れないデンちゃんが特にストレスが溜まっているから、予定を早めて明日帰ることになってる。

「リト様、お茶にしませんか?」
「はぁーい」

 庭の一角に白いガゼボという屋根付きの八角形の休憩所みたいなのがあって、そこでメイドの猫獣人のメイミーさんが紅茶を入れてくれて、一休みである。
メイミーさんはメインク―ンって大きな猫っぽい感じで、獣化してもらったけど、二本足で立たれると、私の身長と大差ない。

「リト様、本当に明日帰ってしまうんですか?」
「はい。デンちゃんが辛抱堪らないみたいなので、ストレスでハゲちゃう前に帰ります」
「イクシオン殿下、寂しがっちゃいますね……」
「仕方が無いですよ。お仕事もあるでしょうし、たまに遊びに来てくれるみたいなので、それだけで充分なんです」

 そう、イクシオンは夏前に討伐要請が出ている為に、ガリュウさんが今は隊長ではあるものの、イクシオンが生きている以上はそうもいかないみたいで、周りもイクシオンが私と一緒に森に帰るのを良しとしなかったのもあって、帰るのは私とゲッちゃんとデンちゃんだけなのだ。

 大人は大変だと、イクシオンを宥めるのが少し大変だった。
それに、私がこの街に居るのは得策ではないようで、人に知り渡られる前に森に帰った方が良いと、ガリュウさんにも言われた。
アイドルの恋人発覚!? みたいなスキャンダルになりかねないからかな?
うんうん。そういうのは私も避けたい。

 あとは私、色々買い込んでもらったので、森に帰ったら作りたいものもいっぱいある。
街の大工さんにも話を聞いて、設計図を書いてもらったりしたけど、これは少しその通りに作れるかは分からないので、失敗しつつも上達していけば良いかな? と思ってる。
見習いの大工さんの教本も貰ったしね。

「リト様、また遊びに来て下さいね?」
「はい。その時はぜひまた、お茶を一緒に飲んでくださいね」
「それは是非」

 メイミーさんとの交流もちゃんと出来たし、尻尾も触らせてもらったりしたし、ヴァンハロー領は中々の獣人パラダイスだった。
また、そのうち来よう。
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