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1章
結婚(仮)
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部屋の中を見渡して、イクシオンが「随分変わった」と頷いてみせる。
そうでしょう、そうでしょう。私は一ヶ月頑張りましたよ!
リビングも調味料棚を作ったり、収納棚を作りまわったよ!
デンちゃんの体のサイズが大きくなってきたから、物がぶつからない様に収納して回った!
後はまぁ……壁にやたらと物騒な斧や剣が飾られまくってるくらいだ。
「イクスの荷物があれば、寝室がイクスの部屋なので置いてね」
「いや、オレはリビングで構わないぞ?」
「ふっふーっ、実は武器の置いてあった部屋を片付けて、私の部屋にしたから、寝室はイクスの部屋だよ!」
イクシオンの手を引っ張って、元武器の部屋であり、現私の部屋に案内する。
机の上にはヴァンハローの人達に貰った小物や、一番初めにイクシオンがくれた手鏡とかキャンディー缶があるぐらいだけど、ベッドは無事に2週間以上かけて徹夜とかで仕上げた。
これはもう意地で作った。
一度、デンちゃんがベッドに乗ってミシッとヤバい音がして、補強したりもしたけどね。
あれはヤバかった。ヒビが入ってて……
フレームのクローゼットも服をハンガーに掛けているし、他の服は木箱を利用したラックを作って収納した。私、めっちゃ頑張った!
「私の部屋だよ~」
「ああ、随分見違えたよ。これならオレが泊っても、ベッドを譲り合う事もないな」
「でしょ? あっ、今日は泊まっていくの?」
「リトが良いなら、泊めてくれるか?」
「どうぞ! イクスに色々話したい事あったんだよ。会ったら何を話そうかっていうのが、分かんなくなっちゃったけど、いっぱい話そうね!」
人と話すことが無いから、独り言とかゲッちゃんやデンちゃんに話し掛けるばかりだったからね。元々お喋り好きな私としては、喋れる人が居るのは嬉しい。
ふっふっふっ、逃がさないぞー!
イクシオンの手を握って、ニコニコしていると、フワッとした笑顔を向けられて「子犬みたいだ」と頭を撫でられ、髪に編み込んでいた銀と群青色のリボンを触られる。
「婚約紐を付けてくれてるのか」
「あ、うん。一応ね? お屋敷の人達がくれたリボンとか髪飾りが全部、銀と群青色の物だからね」
「オレも兄の前以外では、ずっと付けてた」
「うーん。でも、イクスに好きな人とか出来たり、番とかいうのがまた現れたら、私に遠慮なく婚約紐は外していいからね?」
私はココから出ることはほとんどないから良いけど、イクシオンは色んな所に行くんだから、出会いもあるだろうし、婚約紐なんかあったら、好きになった人とかが出来たら、誤解されて関係がこじれちゃいそうだ。
「イクスの部屋も案内すー……」
イクシオンの顔が近すぎというか、顔が真剣で怖いのだけど……?
「リト……」
「はい? なんでしょう?」
「番は一人に一人だ。リトに出会った以上、オレはリト以外を好きになる事は無いッ!」
「えーと、そうなんだ……?」
番ってそういうものなんだ? 鳥の番とか『おしどり夫婦』のオシドリは毎年パートナーを替えるし、そういう感じかなー? って私は思ってたんだけど……
あっ、でもそうしたら、もしかして……イクシオンは一生、私の事を好きでいるんだろうか?
小さく首を傾げると、おでこにキスをされてギュッと抱きしめられた。
「オレには一生、リトしか居ないんだ。頼むから、オレを突き離さないでくれ……」
「あわわわ……あの、私、こういうのは、疎いというか、番とか、よく分かんないし、あの、その……はひぃ」
頭がパニックだ~っ!!
今、何がどうなってるのか……ううっ、というか、デコちゅーされた!
うわぁぁぁ~っ!!
心臓の音がドクンドクンで、中学生に恋愛はここまでの熱愛は早すぎる―っ!!
「イクシオン・エディウス・セラ・ヴィンダム、復唱して」
「え、イクシオン・エディウス・セラ・ヴインダム?」
「オレの愛は永遠に、リトの物だから」
私の手を取って、手の甲にイクシオンがキスを落とすと、イクシオンの手の甲が光って『鴨』の字が黒く浮かび上がる。
十円ぐらいの大きさで、でもハッキリと読める。
刺青? でも、鴨って、私の苗字の鴨根だったりする?
我が家にだって家紋があるよー! なんか桔梗の花みたいなのだったと思うけど……あんまり自信はない! 家紋なんて早々見るものじゃないし、お祖父ちゃんの家の玄関に飾ってあるのを見たぐらいだしね。
「イクス、その手のは……?」
「リトがオレのフルネームを口にしたから、オレはリトの物になったという証明だ」
「えっと、私の手にも何か出るの?」
「それは結婚式の時に、オレがリトのフルネームを口にして、リトがキスした場所に現れる」
「えーと、それは消せるの?」
「消せない」
マジですかー……じゃあ、かなり目立たない場所にキスしないといけないんだろうけど……結婚式で、花婿を裸にひん剥く花嫁とか怖い。
だから無難に、手の甲かなぁ……?
って、私、受け入れて良いの? 良いのかなぁ……うーん、でも、ここまで真剣なんだし、私がいつまでもはぐらかしてちゃ、駄目だよね……?
「この世界の人は、結婚も特殊なんだね?」
「一度きりしか出来ないものだからな」
「そんな一度きりを、勢いで今して良かったの? イクスはもう少し考えた方が良いよ?」
「一度きりだからこそだ。リトはもう少し、オレの愛を信じるべきだ」
「十四歳の女子に、そういうのは難しいよ! 十八まで待って!」
「ああ、だから、リトのフルネームは言わなかっただろ?」
そういう問題だろうか? なんというか、不意打ち過ぎて、脳内処理が追い付かなくなってきたーっ!!
まぁ、でも……もう、自分に素直になろう。私はイクシオンの事、嫌いじゃないよ?
うん、好きだと思う。
ここまでしたイクシオンが私を揶揄って、こんな事をしたってことは無いだろうから、十八歳になってもこの気持ちが変わらなかったら、手の甲にだろうが、おでこにだろうがキスしてやろうじゃない。
とりあえず、今は結婚(仮)状態の婚約中でいいかな?
そうでしょう、そうでしょう。私は一ヶ月頑張りましたよ!
リビングも調味料棚を作ったり、収納棚を作りまわったよ!
デンちゃんの体のサイズが大きくなってきたから、物がぶつからない様に収納して回った!
後はまぁ……壁にやたらと物騒な斧や剣が飾られまくってるくらいだ。
「イクスの荷物があれば、寝室がイクスの部屋なので置いてね」
「いや、オレはリビングで構わないぞ?」
「ふっふーっ、実は武器の置いてあった部屋を片付けて、私の部屋にしたから、寝室はイクスの部屋だよ!」
イクシオンの手を引っ張って、元武器の部屋であり、現私の部屋に案内する。
机の上にはヴァンハローの人達に貰った小物や、一番初めにイクシオンがくれた手鏡とかキャンディー缶があるぐらいだけど、ベッドは無事に2週間以上かけて徹夜とかで仕上げた。
これはもう意地で作った。
一度、デンちゃんがベッドに乗ってミシッとヤバい音がして、補強したりもしたけどね。
あれはヤバかった。ヒビが入ってて……
フレームのクローゼットも服をハンガーに掛けているし、他の服は木箱を利用したラックを作って収納した。私、めっちゃ頑張った!
「私の部屋だよ~」
「ああ、随分見違えたよ。これならオレが泊っても、ベッドを譲り合う事もないな」
「でしょ? あっ、今日は泊まっていくの?」
「リトが良いなら、泊めてくれるか?」
「どうぞ! イクスに色々話したい事あったんだよ。会ったら何を話そうかっていうのが、分かんなくなっちゃったけど、いっぱい話そうね!」
人と話すことが無いから、独り言とかゲッちゃんやデンちゃんに話し掛けるばかりだったからね。元々お喋り好きな私としては、喋れる人が居るのは嬉しい。
ふっふっふっ、逃がさないぞー!
イクシオンの手を握って、ニコニコしていると、フワッとした笑顔を向けられて「子犬みたいだ」と頭を撫でられ、髪に編み込んでいた銀と群青色のリボンを触られる。
「婚約紐を付けてくれてるのか」
「あ、うん。一応ね? お屋敷の人達がくれたリボンとか髪飾りが全部、銀と群青色の物だからね」
「オレも兄の前以外では、ずっと付けてた」
「うーん。でも、イクスに好きな人とか出来たり、番とかいうのがまた現れたら、私に遠慮なく婚約紐は外していいからね?」
私はココから出ることはほとんどないから良いけど、イクシオンは色んな所に行くんだから、出会いもあるだろうし、婚約紐なんかあったら、好きになった人とかが出来たら、誤解されて関係がこじれちゃいそうだ。
「イクスの部屋も案内すー……」
イクシオンの顔が近すぎというか、顔が真剣で怖いのだけど……?
「リト……」
「はい? なんでしょう?」
「番は一人に一人だ。リトに出会った以上、オレはリト以外を好きになる事は無いッ!」
「えーと、そうなんだ……?」
番ってそういうものなんだ? 鳥の番とか『おしどり夫婦』のオシドリは毎年パートナーを替えるし、そういう感じかなー? って私は思ってたんだけど……
あっ、でもそうしたら、もしかして……イクシオンは一生、私の事を好きでいるんだろうか?
小さく首を傾げると、おでこにキスをされてギュッと抱きしめられた。
「オレには一生、リトしか居ないんだ。頼むから、オレを突き離さないでくれ……」
「あわわわ……あの、私、こういうのは、疎いというか、番とか、よく分かんないし、あの、その……はひぃ」
頭がパニックだ~っ!!
今、何がどうなってるのか……ううっ、というか、デコちゅーされた!
うわぁぁぁ~っ!!
心臓の音がドクンドクンで、中学生に恋愛はここまでの熱愛は早すぎる―っ!!
「イクシオン・エディウス・セラ・ヴィンダム、復唱して」
「え、イクシオン・エディウス・セラ・ヴインダム?」
「オレの愛は永遠に、リトの物だから」
私の手を取って、手の甲にイクシオンがキスを落とすと、イクシオンの手の甲が光って『鴨』の字が黒く浮かび上がる。
十円ぐらいの大きさで、でもハッキリと読める。
刺青? でも、鴨って、私の苗字の鴨根だったりする?
我が家にだって家紋があるよー! なんか桔梗の花みたいなのだったと思うけど……あんまり自信はない! 家紋なんて早々見るものじゃないし、お祖父ちゃんの家の玄関に飾ってあるのを見たぐらいだしね。
「イクス、その手のは……?」
「リトがオレのフルネームを口にしたから、オレはリトの物になったという証明だ」
「えっと、私の手にも何か出るの?」
「それは結婚式の時に、オレがリトのフルネームを口にして、リトがキスした場所に現れる」
「えーと、それは消せるの?」
「消せない」
マジですかー……じゃあ、かなり目立たない場所にキスしないといけないんだろうけど……結婚式で、花婿を裸にひん剥く花嫁とか怖い。
だから無難に、手の甲かなぁ……?
って、私、受け入れて良いの? 良いのかなぁ……うーん、でも、ここまで真剣なんだし、私がいつまでもはぐらかしてちゃ、駄目だよね……?
「この世界の人は、結婚も特殊なんだね?」
「一度きりしか出来ないものだからな」
「そんな一度きりを、勢いで今して良かったの? イクスはもう少し考えた方が良いよ?」
「一度きりだからこそだ。リトはもう少し、オレの愛を信じるべきだ」
「十四歳の女子に、そういうのは難しいよ! 十八まで待って!」
「ああ、だから、リトのフルネームは言わなかっただろ?」
そういう問題だろうか? なんというか、不意打ち過ぎて、脳内処理が追い付かなくなってきたーっ!!
まぁ、でも……もう、自分に素直になろう。私はイクシオンの事、嫌いじゃないよ?
うん、好きだと思う。
ここまでしたイクシオンが私を揶揄って、こんな事をしたってことは無いだろうから、十八歳になってもこの気持ちが変わらなかったら、手の甲にだろうが、おでこにだろうがキスしてやろうじゃない。
とりあえず、今は結婚(仮)状態の婚約中でいいかな?
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