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2章
懲りない王子とリト
秋に入り、イクシオンに今年も贈ってもらったイクシオンのファー付きケープを羽織り、長期遠征に行くイクシオンの見送りに軍部に行くと、軍部の施設では長期遠征に行く旦那さんや、息子さん、夫や恋人と別れを惜しむ家族が訓練場の広場に集まっていた。
「リト。来てくれたのか」
「うん。長い間会えなくなっちゃうから……朝、見送ったけど、やっぱりもう一度ね」
「オレも行く前にもう一度屋敷に戻って、リトの顔を見てから行こうと思っていた」
寂しそうな顔で見つめられて、私も寂しいからイクシオンの腰に抱きつくと、抱きしめ返された。
見上げると、おでこにキスをしてから唇にも重ね合わせる。
軽いキスをしていたはずなのに、いつの間にか舌が入り込んできて、流石にこんな人目の多い場所は恥ずかしいから、腰に回した手で背中をポスポス叩くと、唾液が少し滴り落ちながら離れていった。
「ふぅ、もぅ、こんな所で駄目だよ……それに、朝もしたでしょ?」
なにを? ナニをしてました。ええ、遠征の日にちが近付いて来てからは、毎日のようにたっぷり濃厚な官能の世界で、危うくイクシオンが遠征に持って行く服や持ち物に、刺繍を入れ忘れる所だった。
奥さんのお仕事を忘れてはいけない。こうして、イクシオンの荷物を準備してビブロースさんに持ってもらいながら届けにきたのである。
こう見えて、ちゃんと奥さんらしく頑張ろうと、日々努力はしているのだ。
まぁ、公爵夫人がしなきゃいけない本来のお屋敷の仕事や、財務管理みたいなのはしてないんだけどね。
いつもアンゾロさん達に任せてしまっているので、そのうち覚えていきたいところです。
「やっぱり行きたくない……リト……」
「そんな顔しないで? お祖父ちゃんが『賢者』として仕事をするって言ってたから、魔獣も来年からは減るみたいだよ? 今年だけ頑張ろう?」
「ああ、エイゾウ様には期待している」
お祖父ちゃんは、お父さんに魔法を契約させるついでに、魔獣の湧き出る森とかを鎮めて回るみたいで、『賢者』の能力がそれなんだそうだ。
『賢者』は魔獣を鎮める事が、この世界の役割なんだとか。
お祖父ちゃんにそんなこと出来るのかなぁ? とは思うけど、実際昔やっていたみたいだし、まぁ大丈夫かな?
イクシオンが私のおでこに頬をすり寄せて、「行きたくない」と耳を下げて、周りの部下さんが生暖かい目で見ているのだけど!?
「イクス、イクス~ッ、落ち着いてー! 隊長の威厳を保ってー!」
「そんな物は魔獣にでも食わせておけばいい。むぅ……、リトを荷物に入れて持って行ってしまおうか……」
「いやいや、イクス、駄目だからね?」
真剣な目で見つめながら、変な事を真剣に考えないで欲しい。
あと、さっきからケープに隠れて見えないのを良いことに、お尻を触りまくっているんだけど? まぁ、私もイクシオンの尻尾をサワサワと触りまくりだけど。
「おい。イクシオン、王族馬車がこっちに来てるぞ。リトから離れろ」
ガリュウさんがイクシオンの肩を叩き、イクシオンの手が名残惜しそうに私から離れていく。
「リト様、ケープを隠しておきましょう」
「あ、うん。そうだね……」
思いっきり、ビブロースさんの前でイチャついてましたよ……
まぁ、我が公爵家ではいつもの事だから、気にはしてないかも? うーん。むしろ気にしないで欲しいというか。
ケープを脱いで、ビブロースさんがケープを荷物の箱に入れてしまう。
この荷物の箱はイクシオンの遠征用の服とか荷物の入った箱で、私がイクシオンが出掛けた後、必死に最後の仕上げに靴下とかに刺繍をしまわった物なんだよね。
エッチを夜中までやってたから、……実は少し眠い。
軍部の施設に白塗りの馬車が入ってきて、少しざわついて人がサァッと脇に避けた。
やはりというか、出てきたのはエルファーレン王太子である。
こうして見ると、ガリュウさんに少し似てるかも? ガリュウさんの方が全体的にガッシリしてるけど、髪の色や目の色は親戚なんだなぁって感じ。
エルファーレン王太子って、全体的にまだ体が出来てない感じで細いんだよね。
まぁ、私の周りは軍部の人達や、イクシオンにお祖父ちゃんの筋肉持ちの人達ばかりだから、余計に細く見えるのかもしれないけどね。
一応、お父さんも筋肉あるんだよ。
お父さんの場合は、本を何冊でも抱えられる為の腕の筋肉と、遺跡発掘なんかもたまに行くから、体力が無きゃいけないらしくて、鍛えてる感じの、戦う筋肉ではなく、スタミナ用筋肉である。
にこやかな笑顔で、エルファーレン王太子がこっちにズンズン近付いてきて、私はビブロースさんの後ろにピュッと隠れる。
少しだけイクシオンが残念そうな顔をしたけど、一介のメイドが公爵様に庇ってもらうっておかしな図だからね?
まだ、王家には私達の事は秘密なのだから、ビブロースさんに悔しそうな目を向けないの!!
「イクシオン叔父上、ガリュウ叔父さん、お久しぶりです。今日ご出立だと聞きまして、挨拶に立ち寄りました」
「ここにお前が来ることは国王は知ってるのか? また国王に騒がれたらたまったもんじゃないんだぞ?」
ガリュウさんがエルファーレン王太子の頭をガシガシ撫でているけど、護衛の騎士は文句をつけないから、多分、こういうことをしても許される親戚関係なんだろうな。
「エルファーレン、今まで見送りに等、来たことは無かったはずだが?」
「ええまぁ、そこら辺は私も都合がつかなくて申し訳なく思っています」
イクシオンが少し眉間にしわを寄せて、腕を組みながらエルファーレン王太子を威嚇する様な目で見ると、エルファーレン王太子は真っ直ぐ私の方を見てきた。
ゾワッとして、私は自分の体を自分の腕で抱きしめた。
「リト。来てくれたのか」
「うん。長い間会えなくなっちゃうから……朝、見送ったけど、やっぱりもう一度ね」
「オレも行く前にもう一度屋敷に戻って、リトの顔を見てから行こうと思っていた」
寂しそうな顔で見つめられて、私も寂しいからイクシオンの腰に抱きつくと、抱きしめ返された。
見上げると、おでこにキスをしてから唇にも重ね合わせる。
軽いキスをしていたはずなのに、いつの間にか舌が入り込んできて、流石にこんな人目の多い場所は恥ずかしいから、腰に回した手で背中をポスポス叩くと、唾液が少し滴り落ちながら離れていった。
「ふぅ、もぅ、こんな所で駄目だよ……それに、朝もしたでしょ?」
なにを? ナニをしてました。ええ、遠征の日にちが近付いて来てからは、毎日のようにたっぷり濃厚な官能の世界で、危うくイクシオンが遠征に持って行く服や持ち物に、刺繍を入れ忘れる所だった。
奥さんのお仕事を忘れてはいけない。こうして、イクシオンの荷物を準備してビブロースさんに持ってもらいながら届けにきたのである。
こう見えて、ちゃんと奥さんらしく頑張ろうと、日々努力はしているのだ。
まぁ、公爵夫人がしなきゃいけない本来のお屋敷の仕事や、財務管理みたいなのはしてないんだけどね。
いつもアンゾロさん達に任せてしまっているので、そのうち覚えていきたいところです。
「やっぱり行きたくない……リト……」
「そんな顔しないで? お祖父ちゃんが『賢者』として仕事をするって言ってたから、魔獣も来年からは減るみたいだよ? 今年だけ頑張ろう?」
「ああ、エイゾウ様には期待している」
お祖父ちゃんは、お父さんに魔法を契約させるついでに、魔獣の湧き出る森とかを鎮めて回るみたいで、『賢者』の能力がそれなんだそうだ。
『賢者』は魔獣を鎮める事が、この世界の役割なんだとか。
お祖父ちゃんにそんなこと出来るのかなぁ? とは思うけど、実際昔やっていたみたいだし、まぁ大丈夫かな?
イクシオンが私のおでこに頬をすり寄せて、「行きたくない」と耳を下げて、周りの部下さんが生暖かい目で見ているのだけど!?
「イクス、イクス~ッ、落ち着いてー! 隊長の威厳を保ってー!」
「そんな物は魔獣にでも食わせておけばいい。むぅ……、リトを荷物に入れて持って行ってしまおうか……」
「いやいや、イクス、駄目だからね?」
真剣な目で見つめながら、変な事を真剣に考えないで欲しい。
あと、さっきからケープに隠れて見えないのを良いことに、お尻を触りまくっているんだけど? まぁ、私もイクシオンの尻尾をサワサワと触りまくりだけど。
「おい。イクシオン、王族馬車がこっちに来てるぞ。リトから離れろ」
ガリュウさんがイクシオンの肩を叩き、イクシオンの手が名残惜しそうに私から離れていく。
「リト様、ケープを隠しておきましょう」
「あ、うん。そうだね……」
思いっきり、ビブロースさんの前でイチャついてましたよ……
まぁ、我が公爵家ではいつもの事だから、気にはしてないかも? うーん。むしろ気にしないで欲しいというか。
ケープを脱いで、ビブロースさんがケープを荷物の箱に入れてしまう。
この荷物の箱はイクシオンの遠征用の服とか荷物の入った箱で、私がイクシオンが出掛けた後、必死に最後の仕上げに靴下とかに刺繍をしまわった物なんだよね。
エッチを夜中までやってたから、……実は少し眠い。
軍部の施設に白塗りの馬車が入ってきて、少しざわついて人がサァッと脇に避けた。
やはりというか、出てきたのはエルファーレン王太子である。
こうして見ると、ガリュウさんに少し似てるかも? ガリュウさんの方が全体的にガッシリしてるけど、髪の色や目の色は親戚なんだなぁって感じ。
エルファーレン王太子って、全体的にまだ体が出来てない感じで細いんだよね。
まぁ、私の周りは軍部の人達や、イクシオンにお祖父ちゃんの筋肉持ちの人達ばかりだから、余計に細く見えるのかもしれないけどね。
一応、お父さんも筋肉あるんだよ。
お父さんの場合は、本を何冊でも抱えられる為の腕の筋肉と、遺跡発掘なんかもたまに行くから、体力が無きゃいけないらしくて、鍛えてる感じの、戦う筋肉ではなく、スタミナ用筋肉である。
にこやかな笑顔で、エルファーレン王太子がこっちにズンズン近付いてきて、私はビブロースさんの後ろにピュッと隠れる。
少しだけイクシオンが残念そうな顔をしたけど、一介のメイドが公爵様に庇ってもらうっておかしな図だからね?
まだ、王家には私達の事は秘密なのだから、ビブロースさんに悔しそうな目を向けないの!!
「イクシオン叔父上、ガリュウ叔父さん、お久しぶりです。今日ご出立だと聞きまして、挨拶に立ち寄りました」
「ここにお前が来ることは国王は知ってるのか? また国王に騒がれたらたまったもんじゃないんだぞ?」
ガリュウさんがエルファーレン王太子の頭をガシガシ撫でているけど、護衛の騎士は文句をつけないから、多分、こういうことをしても許される親戚関係なんだろうな。
「エルファーレン、今まで見送りに等、来たことは無かったはずだが?」
「ええまぁ、そこら辺は私も都合がつかなくて申し訳なく思っています」
イクシオンが少し眉間にしわを寄せて、腕を組みながらエルファーレン王太子を威嚇する様な目で見ると、エルファーレン王太子は真っ直ぐ私の方を見てきた。
ゾワッとして、私は自分の体を自分の腕で抱きしめた。
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