悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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一章 悪役令嬢フェルミナ・ドロッセル

隠し攻略対象ルカリオン・グラッセ

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「それはさておき、整頓しなきゃな」

 俺は気絶から目を覚まし、ベッドの上で考える。
 『野バラのkissで貴方を癒す』という乙女ゲームの悪役令嬢……と、いうより、ライバルとして出てくるのが、公爵令嬢フェルミナ・ドロッセルなのである。
 薄いラベンダー色の髪に緑色に輝くエメラルドのような目。
 体つきは十八歳にしてはボンキュッボンのセクシーな悪役美女で、性格も品よく笑いながらヒロインを陥れる陰険タイプ。
 回復魔法は貴族の一部にしか現れない高位魔法。
 ごくたまに現れるヒロインタイプの平民は、教会に保護され後に、爵位のある者へと引き取られていくのだが、『野ギス』では回復魔法が使えるのは、フェルミナにヒロインの二人だけ。

「ヒロインの名前……入力タイプだったからな。外見だけは分かるんだけど」

 セミショートの髪型で、色は桜色に目はオレンジ色に黄色がかったグラデーション。
 多分、見ればすぐにヒロインだと分かるだろう。
 性格はプレイヤーとして動かしていただけなので、どういうタイプかは不明。
 ただ、リアルにいたら……かなり鬱陶しい世話焼きタイプだと思う。

「普通に闇落ち王子の悩みを聞いたり、魔法は天才でも性格が根暗なヤツに声をかけたりしないだろ……」

 俺が攻略対象側なら、放っておいてくれと思うタイプだ。
 ああ、攻略対象も問題ありだよな……色々クセがありすぎるんだよ『野ギス』の攻略対象は。
 うーんと、唸っていると、横からスッとクリスタルグラスに水が注がれて、気が利くなぁと思いつつ飲んだ後で、俺は盛大に吹き出した。

「ブッバハァッ!!!!」
「……坊ちゃん。汚いですよ」

 俺の口周りを胸ポケットから出したハンカチーフで拭き、ヤレヤレ仕方がないですねぇ……と微笑む。
 黒髪に金色の目をした十歳くらいのお仕着せの少年従者。
 しかも獣耳と尻尾付き……はい。攻略対象!! それも聞いて驚け、隠し攻略対象の黒狼族というオオカミ獣人キャラクターな上に、暗殺者ぁぁぁぁ!!
 ルカリオン・グラッセ。
 子供の頃に自分の村を襲われ、瀕死になりながらも人族の街に助けを求めたが、誰も助けてくれず暗殺ギルドに拾われた血も涙もない奴で、悪役フェルミナがヒロインを暗殺するために雇うはず……
 しかもだ。子供の時の助けを求めた際に、回復のキスをしてやったのがヒロインで、それに気づきフェルミナを裏切って、殺すというヤバい奴ぅぅぅ!!

「な、なんで、おまっ、貴方様が、こんな所にいらっしゃるのですかぁぁぁ!!」

 思わず敬語になってしまったけれど、確かこのキャラは後半のエンディング近くでしか現れないはずだ。
 なんで居るの? おかしくね?
 ビビり散らかす俺を、首を傾げて「熱でもあるのでは?」とか言いながら額に手を当ててくる。
 あ、意外と優しいし、本気で心配している顔だ。

 あの姉が『推し』としていたキャラクターで、隠しキャラだけあって、こういった心配している表情はレアだし、なんといってもガチャも普通の攻略対象より出にくい……でも、出れば確実に戦闘が楽になるんだよなぁ。
 『野ギス』は乙女ゲーなのだが、学園生活の中で恋を上げろ! というところはほぼスルー、多少あるにはあるが、ゲームはカードゲームで戦闘シーン中心なんだよな。

 そのURカードが目の前に……きっと姉が居たら『きゃあああ!ルカリオン様ぁぁぁ!』と黄色い声をあげて、俺の首を絞め上げていただろう。理不尽な行動だろう。それが姉なんだ。
 姉のせいで、俺までルカリオン様呼びが定着したせいで、丁寧語になっている。

 あ、ちなみにカードは、Rカードが攻略対象の好物アイテムに、戦闘用の罠に武器というランダムカード。
 SRカードは人物キャラ半分、好物、武器、罠、という少し性能の良いカード半分。
 SSRは攻略対象キャラのカードにボイス付き。あとは武器と防具とアクセサリー。
 URカードは、超レアカードで、ボイスとアニメーションに大人のエッチなシーンもある……そう、野ギスは年齢十八歳以下お断りのゲーム。
 もちろん、URカードの買えない年齢設定を初めにしておけば、普通の乙女ゲームとして十八歳以下でも遊べる。
 年齢設定はインストールする時のタイトル画面前でやるのだが、この世界はどっちだ!!

「むしろ、俺がフェルミナな時点で、ゲーム崩壊してるだろ……あああ」

 打ちひしがれている俺に、ルカリオンは耳と眉を下げて鼻を小さくクゥーンと鳴らす。
 なんか、幼気なケモ耳少年を悲しませている気がするのは、俺の気のせいか? 俺は姉のせいでゲームを無理やりやらされていたのであって、決してキャラクターに萌えたりはしていない!! んだけど、一番部屋の中で囲まれまくっていたのは、こいつなんだよなぁ……
 少しだけ、こいつが可愛く見えてきたかも。
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