悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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一章 悪役令嬢フェルミナ・ドロッセル

神童か聖者か

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 ルカリオンに手をギュッと握られて、心の中は『うわぁぁぁ! 俺の従者が、可愛いんだけど!?』と、姉のようなセリフが渦巻いていた。
 いかん、このままでは俺が姉化してしまう。
 それだけは駄目だ。腐男子は思いとどまるべきだ。

「えーと、ルカリオン。村が襲われて、ヤバい奴に拾われたんじゃ……?」
「それでしたら、坊ちゃんが救ってくれたじゃありませんか。村もわたしも」
「ほえ?」

 な・ん・で・す・と!?
 ルカリオンを瀕死の状態から助けてキスしたのは、ヒロインだよな? 確かゲームだとそうだったはずだ。
 しかし、ふわっとした優しい笑顔に、尻尾の揺れは俺に向けられているわけで、どういう事だ?

「今思い出しても、あの時は坊ちゃんが伝説の聖者のようで、胸が熱くなります。わたしの怪我を癒し、公爵家の力を使って村を救ってくださったのですから……!!」
「俺ぇぇぇ!」

 コクコクと上下に頷くルカリオンに、俺はちょっと白目むきそうだよ。
 今現在の俺は明日で四歳なわけだから、どう考えても神童か聖者じゃないか!?
 フェルミナって、父親が『男なら……』とか言わなきゃ、子供の頃から努力してたんだよなぁ……って、今は俺ってば男なのに、なんでフェルミナの父親は『女なら……』って言ったんだ?

「なぁ、ルカリオン。親父さんはさ、なんで俺に『女なら』って、言ったんだと思う?」

 ルカリオンは首を少しだけ傾げて、「父上とは、呼ばないのですね」と、いぶかし気な声を出す。
 バラしてもいいのか、いや、こいつ暗殺者キャラだしな……バラすのは不味いか。

「ち、父上なんて言っていたら、他のヤツに笑われるかもしれないだろ? 俺、明日には四歳なんだからな!」

 必死に子供らしい虚勢を張って、偉そうにしてみる。これで大人しく騙されてくれたら、良いかなー……なんて。

「そうですね。坊ちゃんも四歳ですからね」

 よっしゃぁぁぁ! 騙されてくれた! さすが恩のある従者!! 心の中で万歳三唱をして、ニッコリお互いに笑い合う。
 コホンッとルカリオンが咳ばらいをし、水を拭き溢した俺のシャツの着替えを手伝い始める。

「まず、旦那様の言いたい事としては、王家の御子息との縁談が持てない事ですね」
「あー、俺は男だしな」
「わたしは、坊ちゃんが女性であろうと男性であろうと、構いませんけどね」
「……ハハハハハ」

 今のは従者としての心得だと思って、スルー案件にしておこう。
 乙女ゲームであってBLゲームじゃないんだからな。うんうん。
 姉の好きな同人誌じゃないのだから、ノータッチだ。

「でもさ、俺が跡取りなわけじゃん? 女でも嫁に行かせるのは不味くね? 公爵家は誰が継ぐっていうんだ?」
「それは、アシュレイ様ではないでしょうか?」
「アシュレイ?」
「ええ。坊ちゃんの従兄弟にあたる方で、騎士団にいらっしゃいますよ」
「ああああっ!」

 思い出した! アシュレイ・ガモットって、確かフェルミナの悪行がバレた時に、ドロッセル家を乗っ取ったヤツだ! 従兄弟だったのかよ!
 あいつだけは跡継ぎにしちゃダメなヤツだ。
 でも、確か攻略対象に騎士団長にまで昇り詰める奴がいたな……これは是非とも、アシュレイを騎士団で再起不能にして、ドロッセル家に近寄らせちゃいけない。

「確か……ヒルクス・ステルダント」
「おや? 坊ちゃんはステルダント家の御嫡男とお知り合いなのですか?」
「え、いやまぁ、名前ぐらいはな」
「明日、坊ちゃんの誕生日会に来てくださいますよ。楽しみですね」
「そうなのか!」

 それなら交友を今のうちに深めておかねば! 打倒、アシュレイの為にも!

「そうそう。王家からも王子が二人お忍びで来るようですから、旦那様が坊ちゃんに『女なら』と、言った事の答えになるでしょうかね」
「二人……?」

 確かに、フェルミナの婚約者は第二王子だから、もう一人、第一王子が居るはずだが……その第一王子は亡くなっているはずだ。
 毒を盛られて、第二王子が心を病んでしまった原因になる事件……もしかして、まだ毒は盛られていない時期なのか?
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