悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

文字の大きさ
9 / 73
一章 悪役令嬢フェルミナ・ドロッセル

悪役は点数稼ぎをする

しおりを挟む
 笑顔で睨み合うラローシュとルカリオンに挟まれ、ついでにラローシュの後ろにしがみついているディオンにまで睨み上げられている状況。
 外見はともかく、中身が大人の俺がこの場をどうにかすべきか悩んでいたが、救いの手は別方向から差し伸べられた。

「うわぁーん。こいつがぶったー!」
「先にコイツが押してきたんだ!」
「まぁ! ケイディーエス侯爵のご子息だわ!」
「大変っ! 傷薬を持ってきて!」

 メイド達が青ざめて騒ぎのする方へ走っていく。どうやら子供同士の喧嘩でケガ人が出たようだ。
 ラローシュたちの睨み合いも気がそがれたようだし、見に行っておくかな。
 俺の後をルカリオンがついて歩くのはいつも通り、だが、王子二人はついてくるのは何故なのか。
 まったく、お子様共め。

「やれやれ。騒がしいですね」

 お菓子の積まれたテーブルに本を広げて、一人読書をしていた歩く蔵書ことベンガルがメガネをクイッと指で押し上げる。
 普通のお子様たちに比べると、「やれやれ、誕生日会なのに本の虫ですか?」なんて言われそうな感じだ。
 
「なんかあったみたいだぞ。面白そうじゃないか? なっ、セイン!」
「え、あ……えっと……」

 お菓子を口いっぱいに頬張り笑っているのは、未来の騎士団長ヒルクスで、おどおど天才魔導士のセインは、仲が良いのか隣同士で座っている。
 そういえば、公式でもセット扱いの二人だったから、幼馴染なのだろうか?
 ヒルクスが太陽なら、セインは暗闇に浮かぶ月という正反対さではあるけれど、ヒルクスの頬についた食べかすをハンカチで拭いてあげるくらいの仲の良さはあるようだ。

「おっ! 王子とヒヨコ王子も来てたのか!」
「やぁ。ヒルクスにセイン。二人も来ていたようだね」
「ヒルクスッ! ダメだよ、王族の方が先に話されるまでは、先にこっちから声を掛けるなんて」
「セイン。気にしなくてもいいよ。私とディオンはお忍びという事になっているからね」
「セインは気にしすぎだって」

 ラローシュの言葉にヒルクスは「なっ!」と、笑うが……そういえば、貴族って話すときは、階級が上の人間からとか、そういうのがあるんだっけ?
 まぁ、一応俺は公爵家だから王族以外は気にしなくて済みそうだけど。
 ゲームとリアルの違いは、早めに勉強しておかないと駄目だな。
 いつ悪役令嬢の断罪イベントがあるか分からないのだから、生き残るためには全力を尽くす!!

 悪役のエンディングは幾つかある。
 一番ヤバいのは……裏で回復術師としての腕を上げる為に、人を斬りつけて回復してを繰り返したレベル上げがバレた時の断罪イベント。
 この断罪イベントでどれだけ罪を暴かれるかで、死刑もあり得る……ルカリオンに殺される気はしないけど、ヒロイン次第では、裏切られて殺される事もあるだろう。

「さて、ケガをしたのは君たち二人かな?」

 俺は自分の為にも未来を見据えて、泣いている少年二人に優しく声を掛ける。
 点数稼ぎは、ここから始まっているのだ。
 俺は自分の指を唇に当て、ケガをした二人に投げキッスをする。
 ケガはスーッと消えてしまう。

「もう、大丈夫ですよ」
「え? えええ!」
「すごい……お前、すごいな!」
「当家にお祝いに来てくれたお客様を、ケガをさせたまま帰すわけには、いきませんからね」

 ニッコリと笑顔で締めくくる。
 これが、ちゃんとした悪役令嬢のフェルミナだったら、可愛い女の子の微笑みになっただろうけどな。少年たちは頬を染めるが、残念だけど悪役令息なんだ。少年たちよ、許してくれ。

「チッ」

 後ろー、従者が舌打ちをしないように。
 うちの従者は、とても心が狭い。
 
「それが回復魔術ですか」
「ええ。大きなケガでは無かったので、全体回復小で良かったですからね」
「全体!? フェルはその歳で全体回復が使えるのですか!?」
「ルカリオンのケガを治したりで、レベルが上がって全体の小は使えるのですよ」

 目を輝かせるラローシュに、何故かルカリオンがフフンッと偉そうな笑みをしているが、不敬罪とかが怖いので止めておけー。

「お前、うちの訓練所に来ないか!」
「はい?」

 興奮した顔でヒルクスが俺の手を握り、見えない犬の尻尾がパタパタしている気がする。
 そういえば、ヒルクスの家系は騎士家系な上、王宮の騎士団を育てる練習場を持っているんだよな……ふむ。
 レベルを上げるなら、訓練所で全体回復を繰り返せば、キス回避出来るのでは?
 そう。この回復魔術は全体回復は投げキッスで済むのだ。
 フフフッ、相当ヤバい傷ではない限り、キスをしなくていいわけなんだよな。
 本来なら、レベルが低くて一人ずつにキスして回らなければいけないところが、レベル三十五だから男にキスしなくていい!
 しかし、レベルの低い全体回復小では間に合わない時がある。
 これを使わない手はないのでは無いだろうか?
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...