悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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一章 悪役令嬢フェルミナ・ドロッセル

モテ期かな?

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 左からヒルクスが俺を引っ張り、右からはラローシュが引っ張り、背後からはルカリオンが二人の手を叩きと、なかなかのカオスっぷりに、周りのメイドも警備の騎士も手を出せずにいる。
 そりゃそうだよね。
 国の王子を無理やり引きはがすわけにもいかないし、遊んでいるのか本気なのかもイマイチ判断しにくいだろう。
 
「フェルは王家の騎士団の方で、お預かりします!」
「ラローシュ! 先にフェルを訓練場に誘ったのは、オレなんだからな!」
「うちの坊ちゃんは、どちらに行くとも言っていないでしょう! 放してあげて下さい!」

 これが、モテ期……いや、絶対違うと思う。
 俺の知っているモテ期は、もっと甘酸っぱくて可愛げのあるものだから。フェルミナが令嬢だったなら、きっとこれは、ボーナスステージだよ。ヒロインが現れるまで、唯一の回復魔術師で男の子たちにモテてたら、高慢な性格になってしまったのも頷ける。
 でも、俺は令息だからなー。男にモテても嬉しくも無いんだが? 中身が大人なものだから、お子様はお呼びじゃない。女版フェルミナの色香漂う大人なお姉さんが良いです。

「ヒルクス、ダメだよ」
「セインには関係ないだろ?」

 ガクガクと揺さぶられながら、ヒルクスを止めにセインがくっついて言い争いが始まり、ここぞとばかりにディオンがラローシュにくっつく。

「兄さま、そんな奴どうでもいいじゃないですかぁー」
「ディオン。フェルは、王家にとって必要な人物だと、教えたでしょう」

 それって、回復魔術師をお抱えにしたいだけなのでは? と、胡乱うろんな目で王子二人を見てしまう。
 王子とはいえ子供だから、言葉で人を信用させて手中に収めようとまでは、頭が回っていないらしい。
 きっと王宮の人間たちに「ドロッセル家の嫡男と仲良くしてこい」とでも言われているのだろう。
 
「俺の人生、モテ期なんて縁が無いわー……」
「坊ちゃんの良いところは、わたしが全部知っていますし、独り占めしますから! 安心してください!」
「何を安心しろというのか……ハァー……」

 ルカリオンは安定の俺至上で、姉が見たら鼻血ものの笑顔を振りまいてくれていた。
 賑やかな庭園に、途中で大人も混じり始め、ようやく落ち着いたころには誕生会はお開きになり、それぞれの屋敷へと馬車で帰って行った。
 
「疲れたー」
「賑やかでしたからね。お疲れ様です」

 自分の部屋にあるバスタブでぐったりと手足を伸ばしていると、ルカリオンが湯船に白いバラを浮かべてくる。
 ルカリオンなりの誕生日プレゼントというところなのだ。
 毎日せっせと世話をしたバラで、ルカリオンの唯一の趣味というべきものだったりする。
 URカードでも、アニメーションに白いバラが飛び散ってたなぁ……まぁ、その白い花びらを真っ赤に染めてしまう暗殺シーンではあるのだが……暗殺されたのは誰かって? 俺です。
 俺というか、令嬢側のフェルミナなんだけどね。
 
「明日は、礼状書きかー……」
「はい。お礼はしっかり書いて、後腐れの無いようにしなければいけませんね」
「ルカリオン、言い方が物騒だからな?」
「高価なプレゼント一つで、公爵家との縁続きを過剰に期待されては、困るじゃないですか?」

 うーん。笑顔が怖いぞ、この従者。
 でもまぁ、確かにルカリオンの言う通りでもある。
 四歳の子供の誕生日には過ぎた代物が幾つか紛れているようだし、お礼状一つで済ませておいた方が良いだろう。 
 
「それはそうと、ルカリオンは俺を、獣人国に連れて帰りたいわけ?」

 ラローシュの言った言葉を鵜呑うのみにするわけでは無いけれど、獣人国に回復魔術師が必要で、俺をほだして連れ帰ろうと思っているなら、線引きと対策を講じなくてはいけない。 
 将来、悪役令息に俺がなるのかは不明だけど、ゲーム上はこいつは暗殺者なのだから。

「そうですねぇ……わたしは坊ちゃんと一緒なら、どこでも良いですと、お伝えしましたし、気持ちは……この白いバラでしょうか?」

 まだ花びらを千切っていない一輪の白いバラを、俺の耳に飾ってルカリオンは目を細める。
 白いバラ、花言葉は複数あるのは知っているけど、代表的なのは『純潔』だろうか? でも、そういう意味ではなさそうだし、あとで本で調べてみればいいか。
 今、ルカリオンに聞くのは藪蛇やぶへびになりそうで怖いしな。

「花の百科事典を、テーブルに置いておきますね」

 俺の行動を先読み出来る従者である。
 お風呂上りにテーブルを見れば、百科事典がちゃんと置いてあり、白バラの花びらで作ったしおりが挟みこまれていた。
 白いバラの花言葉「私はあなたに相応ふさわしい」つぼみのままなら「恋をするには若すぎる」だ。
 うちの従者は、なかなかにロマンチストのようである。 
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