悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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一章 悪役令嬢フェルミナ・ドロッセル

地下ダンジョン

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 少しだけジメッとした書籍の棚は一番奥にあり、その一角で脚立きゃたつを使って薬草の書かれた図鑑をベンガルがルカリオンに放り投げる。
 おいおい。本は大事に扱え―……とは思うけど、子供には大きすぎるサイズの本なので、これも仕方がない。
 A3サイズ程の分厚い本を抱え、他にも幾つかの本を積み上げてテーブルに並べる。

「確か、魔物除けに効果がある植物がー……あった。コレ」
「マンドラゴラのピンク吐息、高麗こうらいニンジンの涙、ドリアードの根っこ……ああ、そういえばこういうアイテムあったよなぁ」

 確かこの街の地下ダンジョンで手に入れられたはずだ。初期のアイテムだから、俺のレベルが三十六だから行けるだろうけど、ルカリオンのレベルや戦闘スタイルも未知数だし、ベンガル……は、無理だろうなぁ。
 さて、どうしたものか?
 期待した目でベンガルが見ているのもあるし、ルカリオンは薬草図鑑を食い入るように見ている。

「お前、手に入れられるのか?」
「んー、入手は出来ると思う。ただ、戦った事がない」

 ベンガルの目が丸くなると、「ハァ!?」と大きい声を出され、ルカリオンも首をかしげて眉間にしわを寄せている。おかしい事を言っただろうか?

「お前、公爵家の人間だろ? なんで自分で行くって選択肢が出るんだよ!」
「いや、まぁ……手に入らなくはないかなーって……」
「坊ちゃん。こういう時こそ、わたしの出番でしょう?」
「えー……ルカリオン、俺も一緒に行くし。回復役は大事だろ?」
「いやいや! お前等、なんで行くことになってるのさ!」

 一番奥の書棚で騒いでいた俺たちの元へ、図書館の管理人が来て「お・し・ず・か・に!」と一言ずつ区切って注意をして去って行った。
 口を押えて三人で声を抑えながら笑って、何事も挑戦かな? と話をまとめ、ベンガルが地下ダンジョンの地図をメモに書きうつして、少しだけ地下ダンジョンに行くという事になった。

「わたしは、坊ちゃんがダンジョンのような場所に行くのは、反対なのですが……」
「俺はあくまでサポート。補助の回復役なんだから、戦うのはルカリオンに任せた。頼りにしてるんだからな」
「僕も、居る事を忘れないでください」
「お二人は、わたしの前には絶対に出ないで下さいね?」
「分かってるって。俺は回復だけしているから、安心してケガしてくれていいぞ」
「ケガはしないように、頑張ろうよ」

 この街の地下ダンジョンへ行くには、前にヒロインを探して歩いたインハース通りの地下水道から侵入する。
 ベンガルは置いていこうと思ったけど、すでに母親が父親に愛想を尽かして資産を持ち逃げした後らしく、父親と一緒に魔物退治の経験があるそうだ。
 レベルは八と低いけれど、地下ダンジョンでは適正レベルだ。
 ちなみにルカリオンのレベルは十九だから、この中では俺が一番高い。
 まぁ、回復役だから戦えないんだけどな。

「入口ですでに、鼻が曲がりそうなのですが……」
「獣人だから、仕方がない」
「鼻にミントの葉でも塗るか?」

 手作りと思われるミントの軟膏なんこうを俺は有り難く鼻に下へ塗りつけて、匂いを我慢した。ルカリオンは、鼻は獣人の生命線だから塗らないの一点張りで、ハンカチを鼻から下に巻き付けてマスク代わりにして進み始める。

「僕は君がお金を出して、アイテムを揃えてくれるのかと思っていたよ」
「ああ! その手があった!」
「……坊ちゃんは、行動的ですからね」
「行動的という話でも無いと、僕は思うけどね」

 そうは言われても、ゲームでは買うという選択肢は無かったのだから仕方がない。 
 バトルして素材を集めてというものだったし、魔物除けのアイテムはそんなに使わなかったから、記憶にも薄かったのだ。
 
『あちゃらぱっぱー!』
『みっはぁー!?』
「「「!?」」」

 子供のような甲高い声に立ち止まると、枯れた棒切れのようなニンジンがヘッドバンキングを繰り返し、大騒ぎしている。
 
「高麗ニンジンだよ!」
「捕まえます! 坊ちゃんたちはそこに居て下さい!」
「わっ、ルカリオン!」

 ルカリオンが駆け出して、俺の支援魔法まだ掛けていないんだけどなーと、思いつつも、防御や速度上げの支援魔法は体のどこかしらにキスしなきゃいけないから、ちょっと恥ずかしいのもあった。
 先走ったルカリオンが悪い。うん、そういう事にしておこう。

『ぴやぁぁん!』
「ニンジン捕まえました!」
「素早い。じゃあ、高麗ニンジンを泣かせるので、こっちに持ってきてー」
「あ、涙って、やっぱり泣かせるんだ……」

 ゲームアイテムとしての高麗ニンジンの涙は見たことがある……んだけど、まさか逆さに吊り下げて小瓶に涙が溜まるまで、高麗ニンジンの根っこのような脛毛すねげを抜くとはね……これ、乙女ゲームだったよね?
 ちょっと、乙女ゲームの概念がいねんに疑問を抱いてしまった俺だったりする。
 
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